ウクライナ市民の避難ルート「人道回廊」。設置時刻を過ぎたが、実際に人々が避難できるかどうか不透明な状況だ。これに先立ち、ロシア軍は核の研究施設をロケット弾で攻撃するなど、核に対するテロが激しさを増している。

市民364人が死亡 避難の最中も攻撃

3月6日、ウクライナの首都キエフの隣に位置する北部の町イルピンでは、避難する市民が攻撃された。現地からの映像では、避難する男性が「ひどかった。民間人の遺体をたくさん搬送していた」と前日の状況について話した直後、ロシア軍による攻撃があり、けが人の元に人々が駆けつける様子が確認できた。

イルピンでは、住宅などへのロシア軍による無差別攻撃が続いている。

この記事の画像(14枚)

住宅から炎が立ち上り、逃げる報道記者たち。雪が舞う中を避難していると、あたりに爆発音が鳴り響いた。

国連は、これまでに市民364人の死亡が確認されたとしている。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「イルピンでひとつの家族が殺されました。夫婦と子供2人が道端で倒れて死んでいました。同じような悲劇は至るところで起きています」と訴えた。

核の研究施設を攻撃 ”2番目の原発”にも進軍か

さらに7日、ロシア軍が核物質を扱う施設を新たに攻撃していたことが明らかになった。ウクライナ内務省は、攻撃を受けた瞬間として映像を公開。警報のような音の後、攻撃によるとみられる爆発が起きた。

すでにロシア軍は、ヨーロッパ最大規模の核施設「ザポリージャ原発」を制圧。

これに続きロシア軍が6日、第2の都市ハリコフにある核の研究施設「物理技術研究所」をロケット弾で攻撃したと、ウクライナの治安当局が発表した。「ロシアがまた核に対するテロを行った」と強く非難している。

この施設には37本の核燃料が保管されている。詳しい被害はわかっていないが、ウクライナ当局は大惨事につながる可能性があったとしている。

核をめぐる脅威は新たな段階に入りつつある。ゼレンスキー大統領は、ロシア軍がさらに別の原発に向かっているとの見方を示した。国内2番目の規模である南ウクライナの原子力発電所にロシア軍が迫っているとして、警戒を強めている。

空港も破壊 ウクライナ海軍の拠点都市が警戒

ロシア軍の攻勢はウクライナの西部にまで拡大している。

炎が燃えさかり、黒煙が空高く立ち上る現場。ここは、モルドバとの国境に近い西部ビンニツィアにある民間空港だ。ゼレンスキー大統領は「ロシア軍が発射した8発のロケット弾により、完全に破壊された」と明らかにした。

ロシア軍が間近に迫る首都キエフでは、市民がコンクリートのバリケードを設置。バリケードにはウクライナ語で「地獄へようこそ」と書かれていた。

ウクライナ南部も緊迫した状況だ。ロシア軍がウクライナ海軍の拠点となるオデッサへの進軍を進めていると、ゼレンスキー大統領が明らかにした。

大統領は「オデッサに来るロシア人を温かく迎えてきたのに。今やオデッサを爆撃したり砲撃したり、ミサイル攻撃したりするというのか。戦争犯罪が行われようとしている。歴史に残る犯罪になる」と強く非難した。

「人道回廊」時刻過ぎる 失われる命…実現は

多くの市民が危険にさらされる中、3回目の停戦交渉は早ければ日本時間の7日にも行われるとの情報もある。

2回目の交渉では、市民の避難ルート「人道回廊」を設けることで合意。しかし、2回とも失敗に終わった。ゼレンスキー大統領は「ロシア側は避難経路を確約したが、今も確保できていない。彼らに何ができるのか。避難経路の代わりに血まみれの経路しか作れない」と述べ、ロシア側の責任だとしている。

そして7日、人道回廊をめぐり新たな動きがあった。日本時間午後4時から、改めて人道回廊を設けるとロシア国防省が発表したのだ。

首都キエフをはじめ、ハリコフ、マリウポリ、スムイの4都市からロシアなどに向かう5つのルート。ただし周辺地域では戦闘がやまず、順調に実現するかは不透明だ。

1万3000人を拘束 反戦デモの取り締まり強化

ロシア国内に目を向けると、各地で反戦デモが相次いでいる。

第2の都市、サンクトペテルブルクの凍った川に「戦争反対」と大きな字で書かれているのを撮影した写真が、SNSに投稿された。しかしこの後、何者かによって消されたとされている。

警察はデモの参加者を徹底的に取り締まっている。エカテリンブルクでは6日、1人の市民を警察官が数人がかりで抑え込み、激しく暴行。さらに撮影を続けていると、こうした動画の拡散を恐れているのか警察官が撮影をやめるよう詰め寄る場面もあった。

人権団体によると、6日に首都モスクワを含む少なくとも69の都市で、約5000人が身柄を拘束されたという。軍事侵攻が始まって以降、拘束された人数は1万3000人を超えた。

“偽情報”に最高15年の刑 テレビ局放送中止も

ロシアに対する反発は、世界の企業に広がっている。動画配信大手の「Netflix」や中国の動画共有アプリ「TikTok」はロシアでのサービスを停止した。

批判の高まりを警戒し、ロシア政府はデモの取り締まりだけでなく、国内での情報発信についても統制を強めている。

ロシア下院議会:
私たちの軍隊の信用を傷つける発言をした人々に、非常に重大な罰を科すことを意味する。

軍事行動に関する“偽の情報”を広めたメディアに、最高15年の禁錮刑を科すという法案が可決された。

圧力はロシア国内のメディアにも及んでいる。ロシアの独立系テレビ局「ドーシチ」は、プーチン政権に批判的な報道をして放送停止に追い込まれた。

放送停止に追い込まれたロシア独立系テレビ局「ドーシチ」
近いうちに放送できることを期待しています。でも、どんな形でどこで放送できるのか、まだ分かりません。

ロシア独立系テレビ局「ドーシチ」の出演者:
視聴者の皆さん、関心を持ってくれた人、みんな愛しています。皆さん、ありがとうございます。

このテレビ局は放送を続けられなくなったとして、生放送の最中にスタッフが退室。放送を中止した。

(「イット!」3月7日放送分より)