競合による「協業」

日本郵便と宅配便大手の佐川急便は、業務の効率化や脱炭素化に向けてトラックの共同運行を始めた。

本来は競合関係の日本郵便と佐川急便は業務の提携を進めていて、すでに小型の荷物や国際荷物を連携して届けている。

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その取り組みの1つとして、1日から東京と福島・郡山市の間の共同輸送を開始した。使うトラックを減らすことで毎月およそ1.8トンのCO2削減につながるという。

また、4月からは、届け先が不在で受け取れなかった佐川急便の荷物を、近くの郵便局で受け取れるように、東京の複数の住宅地で実証実験を始める。

専門家に聞く「協業の可能性」

渡辺広明 マーケティングアナリスト:

新型コロナの感染拡大でネット通販市場は伸張しています。2020年度時点で、前年度比11.9%増、年間約48億個の荷物が運ばれていて、今後ますます伸びていくとも予想されます。

そんな中、宅配業者はCO2削減という「地球への優しさ」と、人出不足解消という「働く人への優しさ」が同時に求められています。こうした課題に対して互いの強みを活かす協業は今とれる最善の一手。

-協業のメリットは?

大手2社が地域の特性や状況に応じて巨大な集配センターや効率的な宅配インフラを互いに活用できると人手不足の対策にもなり、顧客へのサービスレベルの維持にもつながると思います。

トップシェアのヤマト運輸に対して、2位の佐川急便と3位の日本郵便が組むことで業務の効率化が実現できると、業界に与えるインパクトもものすごく大きい。

-宅配業界にはドローンや自動運転などの期待も高まっているが?

かつてはインフラやドライバーなど、なんでも自前でやる環境でしたが、今は宅配業者自体でも業界全体で考える必要があります。とりわけドライバー不足への対応は待ったなしで、2024年4月から時間外労働の上限規制がトラックのドライバーにも適用されるようになるため、働き方改革への対応が急がれています。単独での取り組みには限度があるので、今回の大手2社の協業のように中小の運送会社を含めてさまざまな協業が加速してくるのではないでしょうか。

内田 嶺衣奈キャスター:

私たちが便利なサービスを受ける一方で、それが誰かの負担によって成り立っているというのなら、やはり持続可能なものに変えていく必要があると思います。