長崎にわずか5軒の農家だけが生産しているトマトがある。甘みが強く希少価値も高いが、流通量は限られる。この、いわば「幻のトマト」をあの手、この手で知名度アップに取り組む人たちを取材した。

水をほとんど与えず、温度差をつけて甘く育てる

小ぶりで真っ赤な「小串トマト」。3月から5月が旬で、糖度は高いものでオレンジと同じ10度以上ある。東彼杵群川棚町小串郷で生産されている。

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1990年には施設園芸の経営と技術のコンクール、全国施設園芸共進会で農林水産大臣賞を受賞。日本一に輝いた。

10月に苗を植えてからの約3カ月間、水をほとんど与えず育てることで甘みが強まるという。温度管理もとても繊細に行っている。

JAながさき県央小串トマト組合・一瀬薫組合長:
夜は10度以下にならないように、日中は27度くらい。温度差をつけることで糖度が増す。おいしいトマトは星のように白い(線が入る)。これがおいしいトマトの証拠。私たちはスターマークと呼んでいる

テレビ長崎・後藤綾太記者:
甘い!果汁がぶわっと広がる。中はフルーティーで皮はしっかりしてる。今まで食べたトマトとは別物の感じがする

”日本一のトマト”をもっと知ってほしい

この小串トマトを多くの人に知ってもらおうと始まったのが、「いろはにとまと」プロジェクトだ。町内の飲食店や生産者、役場の職員などが2021年6月に立ち上げた。

いろはにとまと・松隈靖之代表:
東彼杵町はお茶、波佐見町は器、川棚町は小串トマトと、みなさんの共通認識になるようにしたい

月に1度開いている企画会議。コストや流通量の少なさから、飲食店から上がっていた「使いづらい」という課題について検討を重ねた。

そして、ジャムなどを作る佐世保市の菓子店の技術で、傷ついたトマトをピューレにすることで解決。今では約10の飲食店が、ピューレを使ったピザやデザートなどを提供している。

いろはにとまと・松隈靖之代表:
とても味が濃く風味もいい。甘いだけでなく酸味のバランスもとってもいい。(食材として)魅力的。さすが日本一のトマト。通販にも対応できれば、加工品の全国発送など日本全国に届けられる商品にしたい

「食べに来られないなら店が出向く」トマト料理を開発

新型コロナウイルスの影響で予定のイベントが中止になるなど、プロジェクトは順風満帆ではない。そんな中、プロジェクトのメンバーが小串トマトを使った鉄板オムライスを提供するキッチンカーを2月から始めた。

上野妙美オーナー:
コロナ禍で外に食べに行けない。こちらが出向くスタイルで川棚町から発信したいとキッチンカーを始めた

初日は酒蔵の新酒販売会に向かい、昼どきには多くの人々で賑わった。

男性客:
コロナで自粛生活。外で買えるのはいい

女性客:
(小串トマトは)名前だけ聞いたことがある。職場の人がオススメしていた。おいしい。ケチャップの甘さを想像していた。トマト本来の味で、ほんのり甘い

上野妙美オーナー:
ピューレができたことで、幅広く1年を通して食べてもらえる。川棚町をはじめ町外の人にも小串トマトを知ってほしい。いろいろなところに出向いていけたら

ピューレを使った料理を提供する店は今後も増える予定で、現在はJAながさき県央の直売所「グリーン東彼新鮮市場」で購入できる。また鉄板オムライスは今後、大村市内で出店することが決まっている。

多くの人々においしい小串トマトを味わってほしいと始まったプロジェクト。「トマトの町・川棚」の知名度アップに向けた取り組みは始まったばかりだ。

(テレビ長崎)

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