「教育データを一元管理するということは申し上げてはおりません」

牧島かれんデジタル担当大臣は「政府は教育データを一元化へ」との一部報道に対してこう語気を強めた。その後もデジタル庁は“火消し”に追われたが、依然として「教育データ一元化へ」の誤解と不安は学校関係者や保護者らの間でくすぶったままだ。

デジタル庁は今後教育のデジタル化をどうすすめるのか?牧島大臣に聞いた。(聞き手:解説委員鈴木款)

「教育データを一元管理することは一切ない」

――まずなぜデジタル庁が教育データの利活用に取り組んでいるのでしょうか。

牧島氏:
私たちデジタル庁は教育を準公共分野の中でも重要なテーマだと位置づけました。子どもには1人1人個性や潜在的な力がありますが、それに気付いて伸ばす先生や学校がある一方でその才能が埋もれたままになるときもあります。

また、1つの単元で学びが止まっても4月になると次の学年に上がってしまい、前の学年で習得しないまま次の教科書を開くと楽しくなかったり苦しかったりする。そうした子ども1人1人の課題に気づけるようにすることが大事だと考えました。

牧島氏「政府が学習履歴を含めた個人の教育データを一元的に管理することは一切ありません」
この記事の画像(5枚)

――具体的に子どものどのようなデータを集めるのでしょうか?

牧島氏:
まず「集める」という表現ですが、政府が学習履歴を含めた個人の教育データを一元的に管理することは一切ありません。なので「集める」というと国が全部集めて管理するという印象を持たれてしまうので、私たちはそういう表現を使っていませんし、意思もありません。

データは「分散管理」を基本としていますので、どのようなデータを扱うのかは日々教育活動を行う教育委員会や学校の先生方が何を大事と思うのかが大切です。デジタル庁は自治体の皆さんと一緒に進め、どのようなデータが具体的に必要なのかを明らかにしていきます。

教育データは自治体や学校単位で利活用する

――データの内容ですが、子どものテストの成績や通信簿、内申書や出席状況、健康診断や体力測定などの情報が含まれるのでしょうか?

牧島氏:
子どもの教育データは法令に基づいて管理されています。いまも児童生徒1人1人の学習・指導状況を「指導要録」として記録することは法令上定められています。また学校の健診情報も同様です。これらはいま担任の先生などによって紙の書類で管理されているものもあるので、紙であるものをどうやってデータ化し、利活用するのかを研究する必要があります。

もちろんデータの利活用は、本人の理解や納得の上で法令に準拠したかたちで行われなければなりません。本人が望まないかたちで行われるのは、個人が不利益を被るおそれがありますから、気をつけなければいけないと思っています。

――では子どもたちの教育データは、政府ではなく自治体や学校単位で利活用するという理解でよろしいですか?

牧島氏:
はい。例えば校務支援の情報であれば学校の先生が利用するでしょうし、教材の情報であれば先生と子どもたち、学習履歴であれば先生、子どもと保護者が利用することになると思います。なので、どのデータをどの関係者が利用するのかは今後議論されることになります。そしてこの「関係者」の中には政府(国)は入っていません。

1人1人がデータをどう蓄積するのか判断する

――何歳から何歳までの教育情報がデータ化されるのですか?

牧島氏:
繰り返しますが政府が学習履歴を含めた個人記録・データを一元的に管理することはありません。PDS(=パーソナル・データ・ストア)、つまり1人1人が自らの意志で自らのデータを生涯にわたってどうやって蓄積をするのかを判断することになります。

一方で法令上、保存期間が決まっている記録もあります。例えば健康診断票と出席簿の保存期間は5年間です。法令上保存期間のあるものはそれを守って頂き、また「きまりがないから永続的に持ち続けてよい」訳ではなく、個人情報保護法制に基づいた保有に関する検討も大事になると思います。

牧島氏「1人1人が自らの意思で自らのデータの蓄積を判断する」

――データ化によって「個人情報が不正に利用される可能性はないのか」、「情報が漏れるおそれはないのか」というような不安や懸念もあります。

牧島氏:
情報の管理は大変重要なことだと思っています。私も皆さんと同様に教育のデータは大変センシティブだと受け止めています。紙の記録をデジタル化すると急に漏洩の可能性が増えるというものではありませんが、デジタルになった時にはより一層明確に誰がどのようなデータを保有し、どのように管理・確認が可能なのかを見ていけるようにしたいと思っています。

厚労省と家庭環境のデータを共有することはない

――デジタル庁の教育デジタル化チームには、子どもの福祉を所管する厚生労働省が参加していません。今後厚労省が扱う家庭環境情報も一緒にデータ化し共有されることはありますか。

牧島氏:
国が一元的に子どもの情報を管理するデータベースを構築するわけではないので、厚生労働省と子どもの家庭環境の情報についてデータを共有することはありません。

一方で、貧困や虐待といった困難を抱える子どもの支援は大事です。自治体の中では縦割りとなっている保育、福祉や医療に横櫛をさして、ニーズに応じたプッシュ型の行政に取り組んでいるところもありますので、こうした事例を私たちも学んでいきたいと思います。

――教育のデジタル化によって今後学校や子どもの学びがどう変わっていくのかを教えてもらえますか。

牧島氏:
まず教育データ利活用ロードマップでは、2022年ごろまでとして教育現場での事務等の原則デジタル化を掲げました。校務のデジタル化によって、先生が児童生徒と向き合う時間が増えますし、先生の働き方改革としても重要な観点だと思っています。

また次のステップとして、子どもたちの個別最適な学びをどうやってサポートするかがあります。子どもの方がデジタルの道具の習得スピードが速いので、それを踏まえて大人が環境整備することが大事ですし、日本の子どもが持っているポテンシャルをどう活かすことができるのかも注視しないといけないと思っています。

牧島氏「校務のデジタル化は先生の働き方改革としても重要な観点だ」

子どもが学びの主体として個性が見出されるように

――最後に、牧島大臣が最も期待している教育データ利活用の効果とは何ですか?

牧島氏:
子どもたち1人1人が学びの主体として、持っている個性が見出されるようにしていくことだと思います。1つの教室の中には多様な子どもがいるので、それを前提としてそれぞれの伸びを見つけ出し、子どもが適切な教材や学習方法に出会うようにする。それが学びの楽しさに繋がっていき、興味や関心をどんどん伸ばすことができる。

コロナ禍で日本は他国に比べてイノベーションの伸びが弱いと言われましたが、「様々なことに挑戦できる環境がこの国にはあるんだ」と子どもや保護者、学びの関係者にも実感して頂けるような基盤を作っていきたいと思います。

――確かにコロナ禍で皆がデジタル化の遅れに気づきましたね。

牧島氏:
困難を抱えているお子さんやご家庭がある。私たちはもっと早く気づいて、手を差し伸べるプッシュ型の支援をするべきだった。こうしたお子さんを見つけ出すためにも、デジタル庁が整備するデータ連携のための基盤がお役に立てればと思っています。私たちは教育現場の皆さんが使いやすく、子どもが毎日幸せを感じながらのびのび暮らすことができる環境を整えるよう努めていきます。

――ありがとうございました。

取材後記:

教育データのデジタル化は、日本の学びが変わるためのまさに一丁目一番地だ。牧島大臣はじめデジタル庁にはぜひ広がった不安の払しょくに努め、デジタル化のスピードを緩めないでほしい。

関連記事:“永田町のハイジ”牧島かれんデジタル大臣が本格デビュー「わなを設置して待つのではなく、自ら山の中に入っていく」 

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】
【牧島大臣の写真提供:デジタル庁】

鈴木款
鈴木款


フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。

政策・政治
記事 469