休日に自治体の枠を超えて、インターネット上でつながる公務員たち。4000人以上が参加する、その名も「オンライン市役所」だ。

そこでは、ワクチンの3回目接種を成功させるための貴重な情報交換が。公務員の見え方が変わるかもしれない、そんな取り組みを取材した。

土曜日の夜に…オンラインで集う公務員たち

自宅で、子供を寝かしつけてからパソコンに向かったのは、神戸市の職員、長井伸晃さん。

神戸市職員 長井伸晃さん:
しばらくこのテーマが続いていますけど、3回目接種の前倒し実施にどう対応するかということで

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画面の向こう側にいるのは…

東京都国立市 職員:
現実はファイザーを待つ高齢者が一定数いますが、集団接種では結構モデルナが多いので、モデルナが埋まってないんですね、あまり

静岡県袋井市 職員:
モデルナの方が人気はないんですけど、それでもモデルナでいいやって打ちたい人が埋まるように、年齢層も下げて、とにかく(接種券を)送って行くと言う形を取って、待つ人はもう待ってもらう形を取ろうかなと思っています

約170もの自治体のワクチン担当者が、新型コロナワクチンの3回目接種について、それぞれの進捗状況を報告し合う意見交換会。

しかし、今は土曜日の夜。実はこれ、仕事ではない。その名も「オンライン市役所」だ。

全国の公務員によるプライベートなコミュニティーで、自治体の枠を超えて、課題や悩みを相談したり、ノウハウを共有したりするために、2020年に有志の公務員らが立ち上げた。
登録者は4000人を超えている。

目的の1つは「人事異動対策」

運営の中心を担っている神戸市の長井さん。生活保護のケースワーカーなど4つの課を経て、2021年から、経済政策課で働いている。

実は「オンライン市役所」の目的の1つが、「人事異動対策」だったそうだ。

神戸市職員 長井伸晃さん:
専門的な法律とかを求められるところにいきなり4月に行って、年間通常の業務がすごい勢いで進んでる中で、パッと身を置かれた時に、やっぱりどうしていいかわからない。
職場でちょっと遠慮して聞くよりも、他都市で同じ仕事をしている人に聞くっていう選択肢も出てくるじゃないですか。そういう場所として、すごく意義があるんじゃないかっていうところで立ち上がった、というのはあります

3回目接種 大阪・羽曳野市が参考にしたのは…東京・小笠原村

オンライン市役所がおおいに活躍したのが、全国の自治体が直面した共通の課題 、ワクチン接種だ。

大阪・羽曳野市もオンライン市役所に助けられた自治体の1つ。羽曳野市では1回目の接種の際、全国に先駆けて集団接種の訓練を行った。

ワクチン接種を担当する辻村真輝さんは、そのノウハウを他の自治体にも共有してほしいとオファーを受け、オンライン市役所に参加した。

しかし、3回目接種では思わぬ壁が。初めてモデルナのワクチンを使うことになったのだ。

羽曳野市 辻村真輝さん:
モデルナをどう使ったらいいかとか、バイアル(ワクチンの容器)の大きさも違いますので、保存方法とかも違いますよね、そういったところを聞いたりですとか、こんなやり方もあるんだっていうのが分かって、すごく頼りがいがあるというか、助かった部分はあります

ファイザーとモデルナでは、ワクチンの容器のサイズが違うため、運ぶときに使うクッションのサイズも異なる。

3回目接種に向け、羽曳野市は新たにモデルナ用を発注したが、1月末の接種までに間に合わないことが判明。そこで、オンライン市役所で他の自治体が発信していた情報を参考に、ファイザー用のものをくりぬいて代用することにした。

そんな羽曳野市が参考にした自治体が、なんと大阪から1000キロ以上離れた東京都の小笠原村だった。

小笠原村職員 伊藤嘉則さん:
非常にびっくり。嬉しいですね。今まではもらうだけだったのが、私があげたのが他の方に役立っているのは非常に嬉しいですね。羽曳野市さんも大規模接種会場のプランとかを発表していただいていて、それもうちの接種の会場設営とかに非常に役に立ったっていうところもあったので、羽曳野市さんのお役に立てて嬉しいです

「仕事の一部、生活の一部になれば」

距離を越えて自治体同士が助け合う取り組みだが、気になることも。プライベートとの両立は、できているのか。

(Q.お子さんは受け入れているんでしょうか)
神戸市職員 長井伸晃さん:

いつも口癖のように、きょうオンラインあんのって聞いてきます
(Q.一般の方は、公務員の方が業務(時間)外に、ある種 仕事以上のことをされてるのはびっくりされると思います)
誰かがやらないと、というところが大きいですね。ここまで続けてきて必要とされているのは、モチベーションになります

長井さんに、オンライン市役所の今後の展望を聞いた。

神戸市職員 長井伸晃さん:
市役所の組織って、本当にめちゃくちゃいろんな分野があるので、切り口やテーマの設定次第ではたくさんの方にニーズを感じてもらえる場になるんじゃないかなと。困ったことがあったらあそこに聞けばいいやみたいな、顔の見える関係と安心して情報共有できる、生活の一部・仕事の一部の場所になっていくといいのかなというふうに思います

(関西テレビ「報道ランナー」2022年1月25日放送)

関西テレビ
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