2021年の年末頃からざわつき始めていた無料のオンラインゲーム「WORDLE(ワードル)」。
「面白い」という噂は聞いていたが、あのニューヨーク・タイムズ紙(以下、NYT)が1月31日、巨額で買収したと発表した。

その瞬間、端末に手が伸びた。

シンプルなルールと素朴さで爆発的人気

「WORDLE」はアルファベット5文字の英単語をあてるゲーム。ルールは簡単だ。

5文字の英単語を入力し、文字とその位置があっていれば「緑」。文字があっているが位置が間違っているなら「黄」。その単語に含まれていなければ「グレー」。

正解するまでトライは6回まで。1日1回限定。

ルールは簡単 ヒントを頼りに5文字の英単語をあてる
ルールは簡単 ヒントを頼りに5文字の英単語をあてる
この記事の画像(6枚)

試しにやってみる。

なぜか「SWEAT(汗)」という単語が最初に思い浮かび、入力するやいなや「黄」が3つ。
条件と色を頼りに次の単語を頭からひねり出すと、今度は「緑」も。3回のトライで正解の「THOSE」にたどり着いた。ちょっとした“お褒めの表示”も出る。

この日の正解は「THOSE」
この日の正解は「THOSE」

秘密は「ハマりすぎない?」1日1回限定

「これは確かにハマるわぁ・・」。
シンプルだけどチャレンジング。広告もなく、無料。1日1回、短時間で終わるから執着もしなくていい。この絶妙な案配に、くすぐられる。設定をのぞいてみると、色の識別が困難な人のためのモードもあり、ユーザーへの優しさが感じられる。

色の識別が困難な人のための設定も
色の識別が困難な人のための設定も

誕生秘話?コロナ禍の暇つぶし用に「パートナーへのプレゼント」だった

作者はNY市ブルックリンに住むソフトウェア・エンジニア、Josh Wardleさん。
ゲーム名の「WORDLE」は「単語」を意味するwordと苗字を引っかけている。パートナーがクロスワードパズルなど単語ゲームを好んだことから、巣ごもり中も2人で楽しめるオンラインゲームをつくってあげたのが始まりだった。

2人はこれにハマった。次に家族が。そして親戚が。
2021年10月に公開してみたところ、2022年1月には30万人が熱狂していた。テレビでコメディアンがスタジオの観客と一緒に解いて盛り上がり、人気は爆発。いまや数百万人が「きょうの5文字の英単語」を解こうと日々、頭をひねっている。

ところが1月31日、ファンに衝撃が走る。

発表の朝の1月31日付紙面は意味深に「もっとあるよ」
発表の朝の1月31日付紙面は意味深に「もっとあるよ」

NYTが巨額買収、相思相愛?

「NYTがWORDLE巨額買収」。
無料だった、ユーザーのささやかな楽しみはなくなってしまうのか。しかも「7桁で買収」とある。つまり数百万ドル、日本円で数億円の合意だ。

NYT側の戦略も見え隠れする。

「5文字の英単語」は約1万2000語あるそうで、全く知られていない単語などを除き、ゲームは2500語程度に絞り込まれていた。「1日1回」のルールで単純計算すると、7年は続く。
NYTは2027年までに有料購読者1500万人を目指している。

でも、Wardleさんとは相思相愛らしい。巣ごもり中、NYTのクロスワードパズルは2人の定番ゲームで、その延長線上にこれが誕生したからだ。

2月1日付紙面「作者はNYTのゲームから発想を得た」
2月1日付紙面「作者はNYTのゲームから発想を得た」

「無料のままで、お願い!」の声

英語が苦手な読者は敬遠するかもしれないが、例えば、「STORY」や「HAPPY」など日本人でも思いつく単語もある。コツは、どの単語にもある母音のA、E、I、O、Uの多い単語でスタートすることだ。インターネットには早速、攻略法まで出ている。

熱狂的な“ワードラー”からは「NYTお願い!無料のままにして」との声が寄せられていて、人気はしばらく続きそうだ。

【執筆:FNNニューヨーク支局長 弓削いく子】

弓削いく子
弓削いく子

心身を整えるためにヨガをこよなく愛す。
Where there’s a will, there’s a way.
FNNニューヨーク支局長。ニューヨーク市生まれ。1993年フジテレビジョン入社、警視庁、横浜支局、警察庁、社会部デスクなど、駆け出しは社会部畑。2010年からはロサンゼルス支局長、国際取材部デスクを経て現職。