経団連の十倉会長と連合の芳野会長は1月26日労使トップ会談を開き、今年の春闘がスタートした。

岸田政権が求める賃上げがどこまで実現するのかが焦点となっている。去年の春闘はコロナ渦での雇用維持がメインテーマだった事もあり、今年は賃上げへの関心が例年にないほど高まっている。だが、実際に「賃上げされる」との実感を持つ人はどれだけいるのだろう。FNNが行った世論調査データを分析してみると、「若年より高齢層」「正規より非正規」など特徴が見えてきた。

高齢層に賃上げ実感

FNNは、1月22・23の両日、全国の18歳以上の男女を対象に、電話世論調査(固定電話+携帯電話・RDD方式)を実施し、1052人から回答を得た。

「今年、労働者の賃金が上がると思いますか?」という質問に対し、「ほとんど上がらない」が最も多く64.4%。「まったく上がらない」という人も17.5%いた。一方、「相当上がる」(0.6%)、「ある程度上がる」(16.0%)と、賃上げに期待を持つ人は2割に満たなかった。全体として、賃上げされるとの実感を持つ人は少ない。

1月のFNN世論調査では賃上げに期待を持つ人は2割に満たなかった
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次に、この質問について世代別に寄せられた回答を見てみる。

賃金が「相当上がる」「ある程度上がる」という人は、10~20代は13.2%、30代は10.4%、40代は12.8%、50代は12.5%だったのに対し60代は23.6%。70歳以上は22.6%だった。60代以上の高齢層が、それ以下の年代よりも顕著に賃上げへの実感が高い。人口が多い高齢層が賃上げの実感を持つのは悪いことでは無いだろうが、若年層や子育て世代が60代以上に比べて賃上げの実感を持てていないのは問題があるだろう。

正規より非正規が賃上げ実感

次に、職業別の回答を見てみる。顕著な差が出たのは、正規雇用者と非正規雇用者だ。「相当上がる」「ある程度上がる」という人は正規雇用者の場合12.5%にとどまる一方、非正規雇用者は24%と約2倍に上った。

また、岸田内閣を支持すると答えたかどうかで見てみると、賃金が「相当上がる」「ある程度上がる」という人は支持すると答えた人の20%だったが、支持しないと答えた人では8.6%と低くなっている。逆に言うと、岸田内閣を支持する人のうち、賃金が上がるとの実感を持つ人は2割だけで、約8割は、賃金は上がらないと考えている。賃上げの問題は、政権の支持・不支持を決める上で大きな争点にはなっていないようだ。

経団連の調査によると、2010年の大卒初任給は20万7445円。2020年は21万8472円。10年で1万1027円しか上がっていない。賃金が上がらない時代が長すぎ、諦めが広がっているようにも見える。

岸田政権の賃上げ政策

岸田首相は、「業績がコロナ前の水準まで回復した企業は3%の賃上げを」と期待を寄せている。

口先だけではない。看板政策である「新しい資本主義」には賃上げに向けた政策が多数盛り込まれている。民間の賃上げの呼び水にするため、2月から保育士、幼稚園教諭、介護・障害福祉職員の給与を3%程度、月額9000円上げる他、看護師についても2月から1%程度、月額4000円を引き上げ、その後段階的に3%程度まで引き上げる。

また2013年から続いている賃上げ税制を強化。税額控除の上限を中小企業は25%から40%に、大企業は20%から30%に引き上げた。

また中小企業が賃上げの原資を確保できるような対策も取った。大企業が、原材料費などの高騰による負担を取引価格に反映せずに下請けの中小企業に押しつける「買いたたき」を巡り、法律上の解釈を明確にして、厳しく認定できるようにしたのだ。公正取引委員会は「買いたたき」が疑われる企業について情報提供できる窓口をホームページに開設した。

公正取引委員会ホームページには「買いたたき」企業の通報窓口が設けられた

政府がこうした様々な政策を打ち出す一方で、ガソリン価格の高騰など物価高も進んでいることから、賃上げへの期待は高まっている。

“賃上げの重要性”は一致しているが・・・

経団連の十倉会長は26日の連合とのトップ会談で「企業の責務として、賃金引き上げと総合的な処遇改善に取り組んでいくことが極めて重要であることを明確に打ち出しております」と発言。

経団連は、一律の対応に否定的で、各企業が自社の実情に適した賃上げという立場(経団連・十倉会長)

連合の芳野会長も「長きにわたり、我が国の実質賃金は低迷し、コロナ禍にあっても賃金が増加している他の主要国から遅れをとっています。社会経済の持続性を確保するため、将来を見据え、賃上げを起点とした需要喚起で経済を自律的な成長軌道に導く必要があります。」と述べた。

連合はベースアップと、定期昇給分を合わせて4%程度の賃上げを要求(連合・芳野会長)

労使ともに賃上げの重要性については一致している。だが、連合は基本給を引き上げるベースアップに相当する分と定期昇給分とを合わせ4%程度の賃上げを求めているのに対し、経団連は長引くコロナ禍で業績にばらつきがみられるため、一律の対応には否定的だ。あくまで各企業が実情にあわせて対応するとしている。オミクロン株が蔓延し経済活動が縮小するほど、賃上げの動きも縮小する事になりそうだ。

(フジテレビ経済部 渡邊康弘)

渡邊康弘
渡邊康弘


1977年山形県生まれ。東京大学法学部卒業後、2000年フジテレビ入社。「とくダネ!」ディレクター等を経て、2006年報道局社会部記者。 警視庁・厚労省・宮内庁・司法・国交省を担当し、2017年よりソウル支局長。2021年10月より経済部記者として経産省・内閣府を担当。

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