往年の寝台特急「ブルートレイン」を遍路宿に生まれ変わらせる計画。2022年に勝負の年を迎えている。

岸井正樹さん:
朝起きて、(席を倒して座りながら)こんな感じで車窓を眺めて。最高よね

「ブルートレイン」を遍路宿に…活動を続けている岸井正樹さん
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窓の外に広がる瀬戸内海。昭和から平成を駆け抜けた列車の窓は、これまでにさまざまな街や人の風景を映し出してきた。

岸井正樹さん:
まず乗ったら、座席に座って「缶ピール、ポン」。同席の人に声をかけて、「どこからですか」「どこまでですか」と。一杯飲みながら

野ざらしだったブルートレインを遍路宿へ

香川・観音寺市の雲辺寺ロープウェイ駐車場にたたずむ2両の客車は、かつて関西と九州を結ぶ寝台列車として活躍したブルートレイン。

改修中のブルートレイン

2008年の引退後、鹿児島で野ざらしとなっていたこの客車を、ふるさと香川で遍路宿として再生させようとしているのが、善通寺市にあるうどん店の店主・岸井正樹さん(60)だ。

2020年から始めた2回のクラウドファンディングで費用約1,700万円を集め、2021年4月、香川までの約600kmを4日かけて移送させた。

難所の山道を越え、無事に到着。

岸井正樹さん:
夢の夢を続けてやってきた。自分でも「できるのかな」と思ったけど、本当に頑張りました

梅雨明けからは、車体の表面を塗り直す作業が始まった。くすんでいた表面は、つややかで鮮やかな青へ。ひびが入っていた窓ガラスも、新しいものに交換した。

野ざらしとなっていたブルートレイン
車体はつややかで鮮やかな青に

こうして順調に始まったかのように見えた修復作業だったが、長年放置されていた車体には、岸井さんの想定以上の深刻な問題が起きていた。

岸井正樹さん:
エアコンカバーから腐食して雨漏りがある。雨水が伝わってきて、蛍光灯の基盤がさびたり、天井もこんな感じに(割れたり)

天井にもひび割れが

屋根にプラットホーム…開業までの課題山積

開業までに乗り越えなければならない課題は、ほかにも山積みとなっている。

岡山放送・大野樹記者:
宿を開業させるためには、車体を雨風から守るための屋根と、スムーズに中に入るための高さ1.2メートルほどのプラットホームが必要になります

今後の改修工事に必要な追加費用は、合計約2,000万円。そのうち1,300万円は金融機関から融資を受ける予定だが、残りの700万円については、自分の貯金などで賄うしかない状態となっている。

岸井正樹さん:
(不足したのは)まずは車両を保存するための費用を優先したから。
(Q.生活費はどうしている?)
貯金と、国の補助金

岸井さんが経営する善通寺市の岸井うどんは、書き入れ時には1日に500人が訪れる讃岐うどんの人気店だったが、2020年から店を一時休業。
岸井さんは、ここでブルートレインのプロジェクトに専念してきた。

プロジェクトに専念するため岸井さんは店を休業

現在は、屋根の修復費用を少しでも安く抑えるため、見積書を片手に業者と交渉している。

岸井正樹さん:
値段が高い…。経費がかかりすぎ。でも、いかに安くやってもらうかというのも僕の役目。安くてかっこいいやつ、見た目の良いやつを作らないといけない。難しいけど頑張ります

「1分の1の模型を素晴らしいものに」

そんな状況を少しでも助けようと立ち上がったのが、岸井さんと同じ、香川県内の鉄道ファンだ。
丸亀市の遊園地でアトラクションのメンテナンスの仕事をしている井澤孝文さんは、ボランティアで車体の照明などの修理を引き受けた。

照明の修理を行う井澤孝文さん

井澤孝文さん:
照明も一度全部外して、中の安定器も外して、配線をLEDに切り替えて元に戻した

回路の工事が終わり、試験点灯して照明が正しく点くかを確かめる。
照明が点灯し、夜の線路を走ったあの頃の姿がよみがえった。

岸井正樹さん:
最高。ブラボーですね。よみがえったよう。いろんな壁に当たったが、1つ1つクリアしていってる。必ず自分の思った形にしようと決めている。頑張ります

井澤孝文さん:
まだスタートラインと、僕の中では思っている。まだまだよみがえらせて、生きているものにしていきたい。「1分の1の模型」を素晴らしいものにしていきたい

ブルートレインの姿を見つめる2人

西から東へ、夜から朝へ駆け抜けたブルートレイン。2022年春の開業を目指す岸井さんにとって、2022年はこの列車にもう一度命を吹き込むための勝負の年だ。

岸井正樹さん:
まず開業。一刻も早い開業を目指す年にしたい。列車の周りを、どんどん魅力のあるようにドレスアップしていかないと。皆さんと約束したことが守れずに、おしかりを受けることになりますから。1つ1つ進めていく年になるだろう

岸井さんたちによって、よみがえりつつあるブルートレイン。
往年の寝台列車は、令和の時代を迎えて、なお新たな乗客を待ち続けている。

(岡山放送)

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