埼玉県春日部市にある「首都圏外郭放水路」をご存じだろうか。地底50メートル、春日部市上金崎から小渕までの約6.3キロにおよぶ、世界最大級の地下放水路だ。

首都圏の洪水被害の軽減に貢献するとともに、大きな空間に巨大な柱がそびえる光景から“防災地下神殿”の異名で話題となった。詳細は過去に編集部でも紹介した。

(参考記事:洪水を受け止めた「地下神殿」…首都圏外郭放水路が“フル稼働”で台風19号から街を守っていた

神殿のような光景が話題となった (画像提供:国土交通省江戸川河川事務所)
神殿のような光景が話題となった (画像提供:国土交通省江戸川河川事務所)
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そんな“防災地下神殿”に行ける、無料巡回バスの運行がスタートしたのだ。ルートは東武鉄道の春日部駅東口、首都圏外郭放水路がある「龍Q館」、道の駅「庄和」をつなぐもので、定員は約50人。

無料巡回バス(画像提供:朝日自動車株式会社)
無料巡回バス(画像提供:朝日自動車株式会社)

2021年12月1日から2022年1月31日までの期間限定で、平日に1日5便、土曜と休日に1日6便を運行するという。※見学会の貸切日や年末年始などでの休業日を除く

無料巡回バスの時刻表(出典:首都圏外郭放水路見学会のサイトより)
無料巡回バスの時刻表(出典:首都圏外郭放水路見学会のサイトより)

人気を集める一方でアクセス面に課題

春日部駅から龍Q館までは車でも約20分かかるというので、ありたがい話だ。現地では見学会も開催しているというので、運行開始の経緯や施設の見どころを首都圏外郭放水路事務局の担当者に聞いた。


ーー無料巡回バスの運行開始の経緯を教えて。

首都圏外郭放水路は防災施設として人気を集める一方で、公共交通機関でお越しになる方のアクセスに課題がありました。これまで行われていた、地域事業者のバス運行が、2020年12月31日で終了してしまったこともあり、実証事業として発案・検討しました。

龍Q館(画像提供:首都圏外郭放水路事務局)
龍Q館(画像提供:首都圏外郭放水路事務局)

ーー運行ルートはどのようにして決めたの?

春日部駅や近隣施設を通る周遊バスを運行することで、二次交通の課題解決による更なる誘客促進を図るとともに、近隣地域との回遊性向上、観光消費促進を目指しております。


ーーバスの降車から地底にはどのように向かう?

バス降車後は「龍Q館」1階にて、見学会の受付を行います。施設敷地内の外を200メートルほど歩いた先に調圧水槽の入口がありますので、そこから地下まで116段の階段を下りていただきます。

調圧水槽の入口(画像提供:首都圏外郭放水路事務局)
調圧水槽の入口(画像提供:首都圏外郭放水路事務局)

地底には何が?見学コースを紹介

ーー現地ではどのような光景を見学できるの?

巨大な空間に59本の柱が整然と林立している、壮大な空間をお楽しみいただきたいです。


ーー見学会では何を見ることができる?詳細を教えて。

首都圏外郭放水路の役割をもっと深く知っていただけるよう、「見どころ満載!インペラ探検コース」「迫力満点!立坑体験コース」「気軽に参加できる!地下神殿コース」「深部を探る!ポンプ堪能コース」の4つの見学コースを用意しております。

・見どころ満載!インペラ探検コース
これまで非公開だった調圧水槽最奥部の巨大なインペラ(羽根車)を特別装備で見学できるのとあわせて、第1立坑や調圧水槽と外郭放水路の見どころを網羅したコースです。(定員20人、所要時間約110分、参加料金一人4000円)

インペラ探検コース(画像提供:国土交通省江戸川河川事務所)
インペラ探検コース(画像提供:国土交通省江戸川河川事務所)

・迫力満点!立坑体験コース
第1立坑の見学をバージョンアップしたもので、キャットウォーク(作業員用通路)を歩き、立坑内の階段を途中まで降りていくことができるコースです。(定員20人、所要時間約110分、参加料金一人3000円)

立坑体験コース(画像提供:国土交通省江戸川河川事務所)
立坑体験コース(画像提供:国土交通省江戸川河川事務所)

・気軽に参加できる!地下神殿コース
地下神殿「調圧水槽」の見学を約55分に凝縮したコースです。(定員50人、所要時間約55分、参加料金一人1000円)

防災地下神殿(画像提供:国土交通省江戸川河川事務所)
防災地下神殿(画像提供:国土交通省江戸川河川事務所)

・深部を探る!ポンプ堪能コース
首都圏外郭放水路の心臓部であるポンプをメインに、ポンプの働きが一目でわかる模型説明やポンプ室の見学、ガスタービン部の見学ができるコースです。(定員20人、所要時間約100分、参加料金一人2500円)

※深部を探る!ポンプ堪能コースは新型コロナウイルス対策により、現在一時休止中。


ーー見学における格好や持ち物での注意点はある?

調圧水槽内の床は滑りやすく、網状になっている個所もありますので、滑りやすい靴や細いヒールでのご参加はご遠慮いただいています。また足下が汚れているため、汚れてもよい服や靴でのご参加をお勧めいたします。


ーー施設内部の写真や映像撮影はできる?

見学会中も決められた場所でしたら、承諾なしに撮影は可能です。具体的には、移動中や階段の上り下りの際は安全面から撮影をお断りしております。小学校入学前のお子様の見学会への参加も、安全面からお断りしております。高齢者の年齢制限はありません。


ーー見学できない人たちはどうなるの?

首都圏外郭放水路には数多くのモニターを設置しており、地底の貯水槽や見学会の様子などを龍Q館で見学することができます。こちらを選択される方もおります。

龍Q館の指令室で見学できる(画像提供:首都圏外郭放水路事務局)
龍Q館の指令室で見学できる(画像提供:首都圏外郭放水路事務局)

気象状況が怪しくなった場合は?

ーー気象状況が怪しくなった場合はどうなる?

防災地下神殿には水が溜まることもあるので、洪水の流入の状況により見学会が中止になることもございます。2021年は7月2日にポンプが稼働を開始したため、7月3日の見学会が中止となりました。


ーー防災地下神殿に水が溜まる光景はみられない?

実は年に1回か2回ほど、見られるチャンスがあります。条件ですが、水は流入しているがポンプが稼働していないことで、ごくまれなタイミングで偶然みられるものです。


ーー無料巡回バスの運行開始から来館者は増えた?

龍Q館は春日部駅から少し離れているので、これまでの来館者はタクシーや私用車、徒歩で訪れていました。これがバスだけで来られるようになるので、来館者も増えているのではないかと思います。


ーー興味を持った人にメッセージを。

無料巡回バスの運行で、公共交通機関でのお越しのお客さまも来館しやすくなりました。これを機会に見学会へのご参加をお待ちしております。季節や時間帯、光の入りや湿度で様々な変化がありますので、ぜひ2回、3回とお越しいただければと思います。



なお、首都圏外郭放水路利活用協議会と連携協定を結ぶ、東武トップツアーズは、見学会の入場料や食事券などをセットにしたモニターツアー商品も開発し、無料巡回バスの運行結果を検証するという。詳細は首都圏外郭放水路見学会のサイトに掲載されている。

※龍Q館の一部は無料公開されているが、首都圏外郭放水路の見学にはいずれかのコースに申し込む必要がある。見学は個人・団体ともに予約制で首都圏外郭放水路見学会のサイト、または電話(048-747-0281)で申し込める。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。