安倍晋三元首相が台湾のシンクタンク主催のフォーラムにオンライン出席し、台湾への軍事的圧力を強める中国を強く牽制した。台湾海峡の緊張が高まり、日本周辺でも中国とロシアが軍事的威圧を強めている。

BSフジLIVE「プライムニュース」では安倍元首相を迎え、今後の対中政策や安保戦略についてうかがった。

安倍氏「首脳や外相の訪中は国の意思表示、五輪競技と分けて考えよ」

安倍晋三 元首相、習近平 中国国家主席(画面左)、バイデン米大統領(画面右)
安倍晋三 元首相、習近平 中国国家主席(画面左)、バイデン米大統領(画面右)
この記事の画像(14枚)

新美有加キャスター:
アメリカが、北京冬季オリンピックの外交的ボイコットを発表しました。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
チベットやウイグル、香港を見てきた国際社会が、人権弾圧を憂慮している。今まで同様の対応で良いのか、各国が判断を迫られる。

反町理キャスター:
安倍さんはウイグル、チベットなど中国の人権状況については。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
もちろん是認しません。首相時代にも首脳会談で提議してきた。外交的ボイコットについて岸田総理は記者会見で「総合的に勘案し国益の観点から判断」と。恐らくもうだいぶ判断していると想像している。いつ意思を示すべきか考えておられるのでは。

反町理キャスター:
閣僚や議員が人権問題のある国に行くのは、お祝いするという誤ったメッセージになってしまうということか。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
首脳や外務大臣が行くことはオリンピックの競技と関係ない。国のひとつの意思表示になるから、分けて考えるべき。

安倍派パーティーでの岸田首相ジョークは「今までで一番面白い」

新美有加キャスター(左)、反町理キャスター(中)、安倍晋三元首相
新美有加キャスター(左)、反町理キャスター(中)、安倍晋三元首相

反町理キャスター:
自民党の最大派閥・清和政策研究会の会長に就任された。派閥領袖になり、総裁選に出て総理になるのが伝統的だが、安倍さんは順番が逆転している。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
確かに。総理大臣を長い間務め、派閥会長に戻る気持ちはなかった。だが若い仲間の支援、先輩含め世話になった人への恩返しをと思い会長になった。最大グループは政治の安定に一番大きな責任がある。

反町理キャスター:
もう一回首相に、ということは。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
考えていない。候補となる議員がたくさんいるので、後押ししていきたい。

安倍派のパーティーでジョークを言う岸田文雄首相
安倍派のパーティーでジョークを言う岸田文雄首相

新美有加キャスター:
岸田首相から「ある外国の首脳が『シンゾウは国政選挙で6連勝している。秘訣を教えてもらった』と。私はまだ聞いていない」というジョークがありました。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
岸田首相とは同期で28年ほどの付き合いだが、今まで聞いた中で一番面白いジョーク(笑)。普段あまり冗談をおっしゃる方ではないが、余裕を感じさせた。

台湾有事について「日本はフロントラインに立っている自覚を」

新美有加キャスター:
「台湾有事は日本有事だ。すなわち日米同盟の有事でもある。この認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない」というご発言の真意は。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
中国への挑発ではない。ただ、中国が台湾に対して軍事的圧力を高めているのは事実。紛争は、能力のバランスが大きく崩れるとき、また相手の意思を見誤ったときに起こる。中国にとってのハードルを高くする必要がある。

反町理キャスター:
中国の反発として「公然とでたらめを言った」という副報道局長の発言があったが。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
副報道局長といえども、中国の意思を示したのだろう。いちいちこの発言に反応するつもりはありません。

反町理キャスター:
台湾有事とはどういう事態を想定しているのでしょう。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
上陸などの侵攻、サイバー攻撃、いろんな可能性がある。実態として、有事と平時の境がなくなりつつある。サイバー攻撃は、日本に対しても日常的に行われています。

反町理キャスター:
自衛隊と米軍の連携。平和安全法制で示された事態になるという理解でよいか。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
重要影響事態は、放置すれば我が国への直接の武力行使に至る恐れがあり、平和と安全に重要な影響を及ぼす事態。台湾は与那国島などから100kmほどしか離れておらず、そうなる可能性は高い。だから日本有事と表現しました。

反町理キャスター:
「見誤ってはいけない」。習主席だけでなく、日本国内へのメッセージの意味も?

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
そうです。アメリカは台湾有事に関し曖昧戦略をとってきたが、明確に示す方がむしろ地域の平和と安定に資するのではないかという議論もある。アメリカの安保関係者は日本より深刻に捉えている。日本は今、フロントラインに立っている。これを支えるのは日米同盟、クアッドによる日米豪印の協力、「自由で開かれたインド太平洋」の構想に賛同する国々。事態は厳しい。日本も自覚を持たなければ。

反町理キャスター:
アメリカには台湾関係法がある。日本版は必要か。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
法律を作る以上に、我々は台湾との関係を強化している。ワクチンの提供もあった。これからも民間同士の対話を行い、政府にもフィードバックしていくのが大切。また、台湾のWHOなどの国連組織への参加を後押ししていき、国際場裡に引き上げていくこと。

防衛力強化は軍拡ではなく、バランスを保つ努力

新美有加キャスター:
防衛力強化について、「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず」との岸田首相の発言がありました。

反町理キャスター:
安倍さんは2020年に首相として談話を出したが、敵基地という言葉を使っていない。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
日本の防衛の基本的な考え方は、日本は盾としてしっかり守る、矛の打撃力をアメリカが担うという分担。だが今の時代にそれで通じるのか。「アメリカは打撃力を使わないのではないか」と相手が思えば、抑止力は崩れてしまう。抑止力とは、日本に攻撃しようとする相手に思いとどまらせること。敵基地に限定せず、中枢に打ち込むことで機能を破壊できる能力を持っておくことが大切。打撃力、反撃力という方が正確だと思う。

反町理キャスター:
野党的な質問をすると、それは日本が軍拡競争に参加することになるのでは。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
あくまでも抑止力の向上。中国は30年間で軍事費が42倍になった。すでに我が国の防衛費の4倍。追い越すのではなく、日米、他の同志国と合わせて対抗し、バランスが崩れないよう努力するということ。

反町理キャスター:
防衛費をGDP比2%以上にすることも念頭に、というのが自民党の政権公約。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
2%の計算はNATO基準だから海上保安庁の費用も含むが、いずれにせよ相当努力していかなければ。アフガニスタンから撤退する際に、バイデン大統領は「自分の国を自分で守ろうとしない国民のためにアメリカの兵士は戦わない」とおっしゃった。当然のこと。

反町理キャスター:
安倍政権におけるアジアの安全保障戦略では、中国だけでなくロシアも視野に入れていた。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
日本は海を通して両国と国境を接している。そんな国は他にない。中露が手を組まないようにすることが大切で、ロシアとの関係改善の必要がある。残念ながら中露の艦船10隻が、日本列島周囲をぐるっと周る演習を行ったが。

反町理キャスター:
バイデン大統領が「民主主義サミット」をやろうとしていることについては。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
特筆すべきは台湾が入っていること。民主主義というのは基本的価値であり、評価する。ただ、こちら側の陣営にいるのに振り落とされてしまうASEANの国が出る。こうした国をすくい取りながら、日本がこういう会議体の提案をしてもいいのでは。

憲法改正は「憲法審査会で毎日でも議論すべき」

安倍晋三 元首相
安倍晋三 元首相

新美有加キャスター:
視聴者からのメール。「憲法改正について、日本維新の会は参院選を期限として進めるべきと。同意しますか」。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
国民民主党も前向き。問題はどこをどう改正するか。それが大切なので、維新の会もその点を示してほしい。自民党は4項目を出している。憲法審査会で毎日でも議論すべきだと思う。

反町理キャスター:
「12月8日で真珠湾攻撃から80年。戦前日本の失敗をどう総括し今に活かすか」との視聴者からのメール。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
善悪の問題ではなく、国際的な出来事において判断を誤った結果、先の大戦の結果に行き着いてしまった。100年の時間軸を考え、70年談話を示した。そこに「日本は世界の潮流を見誤った」と書いた。このポイントは日本だけでなく、他の国も考えてもらいたい。

反町理キャスター:
なるほど、先日の談話と被ってくるわけですね。「見誤る」という言葉が。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
(笑)

BSフジLIVE「プライムニュース」12月7日放送