2022年に開催される北京冬季オリンピックでは、新型コロナウイルスのオミクロン株による影響が懸念される。また中国の人権問題に対し、アメリカやイギリスなどが外交的ボイコットを検討している。日本はどう対応すべきなのか。BSフジLIVE「プライムニュース」では、識者を招き議論を深めた。

オミクロン株を口実に中国政府が規制を強める可能性

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新美有加キャスター:
世界で懸念されるオミクロン株の感染拡大が、オリンピックに影響を与えるかどうか。中国外務省は記者会見で「いくつかの挑戦をもたらすと思う。しかし、中国はコロナ対応の経験があり、冬季オリンピックは予定通り順調かつ成功裏に行われると確信」と述べています。

凌星光 福井県立大学名誉教授:
まだ状況がはっきりしていないが、ワクチンも含めて万全の対策を今整えています。

宮本雄二 元駐中国大使:
中国は怖がっていると思う。オミクロン株の感染者は香港にはいるが、中国にいない。他国の研究を踏まえてやるしかない。これが本当に大変なものであれば、中国は果たして今の対応でいいのかという話も出てくる。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
仮にそれほどのものでなくとも、これを口実に中国政府は規制を強めると思う。中国政府が一番恐れるのは選手の抗議行動。東京大会からルールが変わり、IOCは競技会場内での選手の行動規制を一部緩和した。東京ではサッカーの女子選手が人種差別に抗議するポーズをした。もしこれをどこかの国の選手が、中国の人権問題に対してやればどうするのか。国安法でも持ち出して国外追放するのか。

北京五輪の外交的ボイコット 二宮氏「政治家が行かない先例を作れ」

新美有加キャスター:
中国の人権問題への懸念から、アメリカやイギリス、オーストラリアなどの国で、北京冬季オリンピックに政府関係者を派遣しない外交的ボイコットが検討されています。岸田首相は「日本は日本の立場で物事を考えたい」と、まだ対応を明確にはしていません。

佐藤正久 自由民主党外交部会長:
外交的ボイコットとは、選手団を派遣しないということでない。日本は開会式に政治色を出さず、つまり政治家が出席しなくていいと思っています。東京オリンピックに中国から来たのも局長クラス。実際、中国紙の環球時報は「中国政府は開会式の外交的ボイコットを考えている西側諸国の人間を招待する計画はない」と先手を打ってきている。

反町理キャスター:
「もう来なくていい」と言っているんだ。

佐藤正久 自由民主党外交部会長:
プライドが高いですから。初めからこれは織り込み済みで動いている。ならば日本も、中国との関係という意味でも局長クラス、日本で言えば山下泰裕JOC会長、室伏広治スポーツ庁長官などを派遣すればよい。西側諸国にも、これは人権問題を考えた結果だと言える。

宮本雄二 元駐中国大使:
私が一番心配しているのは、2008年夏季オリンピックを見ても、オリンピックは政府というより中国の人にとって誇りということ。その感情は傷つけたくないという気持ちです。そんなに無理して行く必要はないが。

宮本雄二 元駐中国大使

新美有加キャスター:
外交的ボイコットという強い言葉よりは少し穏便に、という?

宮本雄二 元駐中国大使:
外交的ボイコットというのが、バイデン米大統領の発言で流行り言葉になった。だが僕はそもそも論として、オリンピックを政治化することに反対。できるだけ政治とオリンピックは離したい。

新美有加キャスター:
凌さんはいかがでしょうか。

凌星光 福井県立大学名誉教授:
オリンピックと政治はやはり関係があると思います。東京オリンピックの成功はまさに国際政治における日本のプラスになった。オリンピック精神は世界の平和、グローバルな団結に対して影響する。各国の首脳・政治家も協力的、積極的に対応することが望ましい。

反町理キャスター:
要するに中国は、日本の首脳が来なかったときにどう思うんですか。

凌星光 福井県立大学名誉教授:
今はこういうコロナ禍の状況ですから、首脳が来なくても日中関係が大きなダメージを受けるとは思いません。

新美有加キャスター:
二宮さんはいかがでしょう。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
過去をみると、1980年のモスクワオリンピックではソ連のアフガン侵攻を理由に西側がボイコットし、1984年のロサンゼルスオリンピックではその意趣返しのように、アメリカのグレナダ侵攻を理由に東側諸国がボイコットした。
こうした中で、もう選手の権利を奪うことをやめようという流れになった。スポーツと政治が別であるならばこの際、政治家が行くのをやめるという先例を作るのがいい。スポーツ担当の大臣などが行くのはよいが、わざわざ国家元首クラスが行くようなことをやめる。だから外交的ボイコットは有力な選択肢。

2008年夏季オリンピックで中国は増長、人権問題はさらに悪化している

習近平 中国国家主席

新美有加キャスター:
そもそも中国での冬季オリンピック開催の決定時には、人権に対する懸念はなかったのですか。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
ありましたよ。決定時のIOC会長はジャック・ロゲ氏。「オリンピックは人権と社会関連の改善に大いに役立つ」と。2008年の北京夏季オリンピック、役立ちましたかね?

反町理キャスター:
いやいや(笑)。どうご覧になるんですか?

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
逆行した。人権状況はさらに悪化していると私は思いますよ。冬季オリンピックは特に環境問題との兼ね合いで、反対運動が起きないところの方がやりやすい。中国では反対運動は起きない。ソチで開催したロシアも。簡単に言うと、民主主義国家では冬季オリンピックはなかなか難しい状況。そして、中国は2008年の夏季オリンピックで増長したという意見の方が強い。2022年の冬季オリンピックで成功し、さらに増長したら何が起こるのか。IOCには平和と人権という二枚看板がある。これにふさわしい国だと反町さんは思います?

反町理キャスター:
そうであれば、今こうした国際的な外交ボイコットの議論にはならないとは思いますよ。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
つまり、IOCにも反省すべき点がたくさんあると思います。

反町理キャスター:
なるほど。凌さんは? 

凌星光 福井県立大学名誉教授

凌星光 福井県立大学名誉教授:
人権とは何か。まず生命権、次が自由権、そして財産権と続く。そこで西側諸国が言う人権は世界の価値観なのか。国連の人権委員会でも中国の価値観が優勢を示している。中国の人権は2008年から現在までに格段に改善されている。アメリカでは毎年、銃で2万人ほど死んでおり、コロナでも数十万人が死んだ。中国では基本的に、最初の武漢の時の死者からそれ以上増えていない。その点を考えていただきたい。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
「人はパンのみに生きるにあらず」。凌先生は生存のことをおっしゃるが、自由があってはじめて生活できる。オリンピックによって改善されたというのはちょっと言い過ぎでは。

佐藤正久 自由民主党外交部会長

佐藤正久 自由民主党外交部会長:
中国の方はよく、アメリカにも日本にも人権問題があるだろうと反論する。その通りです、ありますよ。だが、中国がウイグルや香港でやったような自由民主主義に対する挑戦は、もう全然レベルが違う。特に平和と人権を謳い文句にしている五輪憲章を考えるとき、本当に今の中国に開催国としての資格があるのか。この議論はあってしかるべき。

宮本雄二 元駐中国大使:
G20の首脳宣言で「人類の力強さの証となる世界中のアスリートのための競技の機会として、2022年北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会を見据える」と出しちゃっている。中国が強く要求して入れたのだと思うが。だから国際政治の流れとしては、もう進まざるを得ない。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
実はIOCと中国政府は極めて似た体質。それは「無謬神話」。自分たちは絶対に間違わない。自分たちはアスリートを、国民を指導する立場であると。極めて親和性が高い。こういう体質が本当にいいのかということは、西側の諸国から問い詰めていかなければいけない。

林外相訪中、今は避けるべきか。佐藤氏「誤ったメッセージになる」

新美有加キャスター:
林芳正外相がフジテレビの「日曜報道 THE PRIME」出演時に、中国側からは招待があったが訪問について現段階ではまだ何も決まっていないと発言。佐藤さんは「訪中は間違ったメッセージを出すことにほかならない」と。

佐藤正久 自由民主党外交部会長:
所詮、外務次官クラスの王毅さんと議論してもそんなに成果は出ない。外交的ボイコットの話も出て、日本の主権侵害もやっている。今はタイミングが違う。案件についてはオンラインで十分。行けば利用される可能性がある。こうしてテレビで要請があったと話すことも利用されるから、どうかと思います。

宮本雄二 元駐中国大使:
順番的には、ワシントンに行ってアメリカと話した上で中国に行くというのが、外交的には美しいかなと思います。

凌星光 福井県立大学名誉教授:
日中間の重要な両国関係において、外相同士が長く会わないのは大変不自然。今回は日本が行く番です。

BSフジLIVE「プライムニュース」12月1日放送