いま国内では、赤ちゃんの10人に1人が体重2,500グラム未満で生まれている。
そうした赤ちゃんは「低出生体重児」と言われ、健康面でのリスクが大きいとされている。
発達の不安や悩みを抱えやすい低出生体重児を出産した母親。
その相談の場を設けようと、活動するサークルが福井にある。その現状と課題は。

低出生体重児を出産した母親向けサークル

母親A:
体重が354グラムしかなくて、ものすごく小さかった。ちゃんと大きくなれるのか、成長していけるのか不安ばかりで

母親B:
(手のひらに)乗るくらいの大きさで、管につながれて。なんてことしちゃったんだろう。こんな姿で産んでごめんね

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通常 赤ちゃんは、妊娠してから40週、体重3,000グラム前後で誕生する。2,500グラム未満で生まれると、低出生体重児となる。
体の臓器が十分に準備できていない段階で体外生活を始めるため、健康面でのリスクが大きいとされている。
出産直後の母親は、この不安に悩まされる。

カンガルークラブ代表・小村真美さん
カンガルークラブ代表・小村真美さん

カンガルークラブ代表・小村真美さん:
消えてしまいそうなくらい小さいので、申し訳ない気持ちで自分を責めてしまうし、わが子を見て、この先どうなるのか心配と不安で押しつぶされそうになった

カンガルークラブ代表・小村真美さん
カンガルークラブ代表・小村真美さん

カンガルークラブ代表・小村真美さん:
1,000グラム未満で生まれてくる赤ちゃんは、(全国で)0.3%。そういうお母さんと知り合えるチャンスが元々少ない。1人じゃない、経験をしている母親がいることを伝えたい

「カンガルークラブ」の交流会の様子
「カンガルークラブ」の交流会の様子

566グラムの女の子を出産した小村さんは、自らの体験をもとに、2010年に低出生体重児を出産した母親向けのサークル「カンガルークラブ」を設立した。
1,000グラム未満で生まれた子を持つ母親が多く、月に一度、交流会を開いている。

メンバーからは、「ほかの大きく生まれた子と比べず、小さく生まれた子たちの中で、遅れながらも成長していくのを、メンバーで確認できるのがいい」「母子手帳に書いてあることができないと、悩みにつながる。退院してからも心配しかなかった。わかってくれるお母さんに話せる環境があることは、ありがたい」などの声が聞かれた。

低出生体重児の割合増加…“自責の念”にとらわれる母親に伝えたいこと

少子化にともない、出生数は減少しているものの、日本全体で低出生体重児の割合は年々増加している。
その要因は…

福井県立病院 小児科・田口律代医師
福井県立病院 小児科・田口律代医師

福井県立病院 小児科・田口律代医師:
(出産する)母体の年齢が上がっていることや、若年での出産の例が見られたり、妊婦の痩せ願望傾向が、日本の低出生体重児の割合の増加に寄与している

2017年 人口動態統計より
2017年 人口動態統計より

国内の体重別出生数は、2,500グラム未満では9.4%。1,500グラム未満では0.7%の割合となっている。

1,000グラム未満の超低出生体重児などの医療に取り組む、福井県立病院。
小児科の田口医師は、自責の念にとらわれた母親に伝えたいことがある。

福井県立病院 小児科・田口律代医師
福井県立病院 小児科・田口律代医師

福井県立病院 小児科・田口律代医師:
赤ちゃんから見たら、あらゆるお母さんが宇宙で1人だけ。120%大好き。自分が(出産で)傷つきショックを受けているのだから、自分を大事にして。かわいい赤ちゃんの姿や生命力は、お母さんが生んだものですよと、そこを感じてほしい

「リトルベビーハンドブック」の導入目指す

カンガルークラブ代表・小村真美さん
カンガルークラブ代表・小村真美さん

カンガルークラブ代表・小村真美さん:
お母さんが元気になってもらうことが、わたしたちの大きな願い。そうすることで、赤ちゃんの成長を一緒に見守っていける

実体験をふまえて、今カンガルークラブが力を入れている取り組みがある。
平均的な体重で生まれた赤ちゃんを基準として作られた「母子手帳」は、低出生体重児の親にとっては利用しづらいという現状がある。

そこで、誰もが使いやすいよう考案された「リトルベビーハンドブック」の導入を目指している。

カンガルークラブ・北川里実さん
カンガルークラブ・北川里実さん

カンガルークラブ・北川里実さん:
リトルベビーハンドブックを知った時、こんなの欲しかったと思った。母子手帳だと、体重が1,000グラムから始まる。

0グラムから記入できる
0グラムから記入できる

カンガルークラブ・北川里実さん:
リトルベビーハンドブックは0から記載できる。わたしたちが書けるところから始まっていて、自分の子どもに合った成長を見つけて、書くことができる。これから生まれてくる小さい子を持つ母親には、生まれてすぐ届けてあげたい

リトルベビーハンドブックは現在、静岡県や佐賀県など全国で6つの県で導入されていて、母子手帳と一緒に配布されている。
早期導入に向けて、福井の母親たちも始動している。

(福井テレビ)

福井テレビ
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