長崎県の島原半島にある雲仙・普賢岳が198年の眠りから覚め、噴火活動を再開してから、11月17日で31年を迎えた。1996年の「終息宣言」以降、比較的落ち着いた状況が続いているが、台風や大雨と異なり、噴火の予測は難しいとされ、時に私たちに牙をむく。

火山災害とどう向き合うか。次世代の研究者の育成も含め、各地で模索が続いている。

31年前の1990年11月17日、普賢岳の山頂から2本の白い噴煙があがった。198年ぶりに再開した噴火活動は約5年半に及び、火砕流で44人の死者・行方不明者を出した。

1990年11月17日 当時の空撮
1990年11月17日 当時の空撮
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山頂には、噴き出したマグマが冷えて固まった「溶岩ドーム」が現れた。標高は約1,480メートル。「平成新山」と名付けられ、地震や大雨などで崩落する危険性が指摘されている。

100を超す活火山がある、火山列島・ニッポン。

小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火で噴き出した「軽石」は、各地で被害をもたらしている。

火山から住民守る「ホームドクター」の存在

気象庁は国内50の火山を24時間体制で監視していて、雲仙・普賢岳は重点的に観測・研究が必要とされる火山のひとつだ。

普賢岳の麓にある九州大学の地震火山観測研究センター。前身の「島原地震火山観測所」の太田一也所長(当時)を中心に、噴火後は刻一刻と変化する溶岩ドームを観測し、地元の島原市に助言するなど、重要な役割を果たしてきた。

地域に根ざしていち早く異変を察知する「山のホームドクター」は、日本各地で火山災害から住民を守ってきた。
しかし、2004年の国立大学の法人化が大きな「曲がり角」となった。

九州大学地震火山観測研究センター・清水洋 特任教授:
いわゆる火山の麓にある観測所は、多くの大学で無人化が進んでいる。自動的にデータが伝送できる時代になってきているので、何が何でも現地に張り付いている必要も昔ほどはなくなってきた

火山を熟知した研究者の育成は

監視に必要な技術開発も進み、研究成果が見えにくい火山分野の予算や体制は「縮小傾向」と言われている。
一方で研究者からは、「きめ細かな判断にはホームドクター的存在が必要」との声があがる。

きっかけは、2014年に死者・行方不明者63人を出し、戦後最悪の火山災害となった、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山の噴火だ。

国内ではその後も箱根山や西之島、阿蘇山などで火山活動は活発化した。火山ごとに異なる特徴や噴火の兆候をどうつかむのか、「想定外」にどう対応するのか。
高い専門性と経験を兼ね備えた研究者を育てようと、国は大学と連携したプログラムを打ち出した。さらに九州大学は育成拠点を設けて、火山や地質学の研究者の育成に力を入れている。

研究者育成に立ちはだかる課題

研究者の「卵」たちは、15日に平成新山の状況を確認する「防災登山」に参加した。

九州大学大学院・西脇瑞紀さん:
(清水先生たちは)すごく偉大な方々。僕も、いずれは日本の火山学をけん引できる立場になれれば

九州大学大学院・安仁屋智さん:
僕らの世代は雲仙・普賢岳が噴火し終息した後に生まれている世代なので、実際に経験してきた人たちから色々学んで、次は後ろの世代にきちんと伝えていくことが僕たち若い世代の使命

火山研究を志す学生は少しずつ増えているものの、最大の課題は「就職先」。御嶽山の噴火災害を教訓に、長野県では県の支援を受けて火山活動の分析や情報発信などを行う大学の施設が設けられた。人材の育成にもつながると期待されているが、こうしたケースは全国的にも稀だ。

九州大学大学院・西脇瑞紀さん:
年配の研究者が退職する年齢になり、その分 新たに若い人が補充されるところもあれば、補充されずにポストごとなくなる場合もあり、難しい

九州大学大学院・安仁屋智さん:
火山を研究して、防災とかそういう部分に携わっていきたいとの思いがある。自分が何をしたいかをきちんと探していきながら、研究職の方にもいけるチャンスがあると幅や選択肢は広がる

火山防災の第一歩として

次世代を担う研究者が将来への不安を口にする中、専門家は「何か起きてからでは遅い」と訴える。

九州大学地震火山観測研究センター・清水洋 特任教授:
悲劇が起きないと、それでやっと少し動くのが現状。せっかく卵が育っても、それを生かせるポジションが残念ながら、なかなか思い浮かばない。細々と気象庁や国土地理院に行くのが精一杯。これを何とかしたい

火山による災害は、台風や大雨などの風水害や地震よりも起きる頻度が少なく、地方の自治体が定期的に研究者を採用したり、予算をつけるのは難しいのが現状だという。

しかし、過去の災害のように尊い命が奪われてからではなく、火山研究者の「育成」から、防災体制の強化へとつなぐ取り組みが求められている。

(テレビ長崎)