新型コロナ感染拡大で注目 遠隔手話通訳とは?
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、注目を集める遠隔手話通訳を取材した。
芦田タキ子さん:
花粉症なんですが、花粉症の薬はどこにありますか
岡山市内の薬局で、薬について手話で尋ねるのは、聴覚に障害がある芦田タキ子さん(47)。
薬剤師とのやり取りのために、岡山市に手話通訳者の派遣を依頼したが、専門的な言葉が続くと…
薬剤師:
こちら、点鼻薬と言って、鼻に直接噴霧するもの
手話通訳者 大岡政恵さん:
すみません、マスクをかけていると、(聴覚障害者が)口形の読み取りがしにくいので、マスクを外して対応します
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手話でのコミュニケーションは、手の動きだけでなく、表情や口の形からも多くの情報が伝わる。
しかし、マスクを着けていると、その情報量は制限される。
ーーマスクがあると不便ですか?
芦田タキ子さん:
マスクがあると表情やニュアンスがわかりにくいので、マスクはない方がありがたい。でも、通訳者にも新型コロナウイルス感染の心配がある
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感染拡大が続く新型コロナウイルス。
岡山市では、感染予防のため、医療機関での手話通訳の際には、通訳者がマスクを着用することへの理解を求める通達を2月21日に出した。
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手話通訳者 大岡政恵さん:
通訳者の健康も守っていかないといけないというのはあると思う。特に今の状況の中で通訳に行く時に、実際に人と会う時に心配はある
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芦田タキ子さん:
(自分が病気の時に)通訳に来ていただくのは申し訳ない気持ちもある。でも通訳がないとコミュニケーションが取れない
そんな中、注目を集めているのが遠隔手話通訳。
遠隔手話通訳は、タブレット端末やパソコンなどのテレビ電話機能を使い、離れた場所にいるオペレーターが画面を介して手話通訳するもの。
岡山市内では、区役所や銀行で導入されている。
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WHOでも推奨 日本でも整備を要望する動き
通訳者が、直接その場に出向かなくてもコミュニケーションが取れる遠隔手話通訳。
世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、WHO(世界保健機関)でも、その有効性が議論された。
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2月、スイス・ジュネーブでWHOの会議に参加した慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の川森雅仁特任教授。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 川森雅仁特任教授:
手話というのは、原則対面で行うのが一番いい。顔の表情などがわかるので。ただ、どうしても手話通訳者を派遣するのが難しい場合、WHOとしては、当然のことながら、そういう緊急の場合には、そこの場所にいるのではなく、遠隔手話通訳サービスを使うのが当然のやり方でないかということだった
WHOが、遠隔手話通訳を推奨する背景には、ある考え方があるという。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 川森雅仁特任教授:
WHOでは、ユニバーサルヘルスケアというのが非常に大切だと思っていて、例えば、病院の中での看護師・患者・医師・全ての人に安全を提供する。そうすると当然、ろう者が患者として病院に来た時に、付き添っている手話通訳者も安全でなくてはいけない
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日本国内でも、3月3日、手話通訳者の感染リスクの排除を目的に、全日本ろうあ連盟、全国手話通訳問題研究会、日本手話通訳士協会の3団体が、厚生労働省に対し、行政の相談窓口や、医療機関受診時の遠隔手話通訳の整備を要望した。
一方で、遠隔手話通訳を請け負う事業者は、画面越しによる通訳で、情報量が限られる特性を補うため、手をゆっくり動かしたり、わかりやすい表現で伝えるなど、オペレーターの育成に励んでいる。
アステム 佐藤至取締役:
技術的には、カメラにはピントがあるので、体と手が離れてしまうと、手のほうにピントが合って、体にピントが合わないことがある。
手をできるだけ体に近づけて手話表現するなど、画面通訳としての技術的スキルアップは必要
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実際に体験 …「コミュニケーションがスムーズにとれる」
薬局に薬を買いに来た芦田さんと薬剤師の方にも、持ち運びができるタブレット端末で、遠隔手話通訳を体験してもらった。
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芦田タキ子さん:
副作用の少ない薬がいい
薬剤師:
だいぶ眠気も出にくい薬も多く出ていますので、そちらを薦めさせていただきたい
芦田タキ子さん:
コミュニケーションがスムーズに取れて良かった。緊急時には、通訳を依頼しても難しい場合がある。その時に遠隔手話通訳があれば、速やかにお願いができて便利
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非常時に、通訳者の安全を守ったうえで、聴覚障害者のコミュニケーションをどう図っていくのか。
状況に応じた方法が、迅速に導入されることが求められている。
(岡山放送)