畑違いの事業承継に挑戦したある男性に注目。取り組んだのはジュースの製造販売。男性を突き動かしたのは、地域への「愛」だった。

必死に修行…4代目ジュース職人に

年季の入った木枠の窓に古めかしい板張りの天井。積み上げられた大量のケース。ここは、昔懐かしい瓶入りのジュースを製造販売する広島・尾道市向島の「後藤鉱泉所」。

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1930年(昭和5年)の創業から2021年で91年。この店の4代目・森本繁郎さん。

(Q.「後藤鉱泉所」なのに、なぜ「森本」さん?)
後藤鉱泉所・森本繁郎さん:

後藤さんから事業承継で引き継ぎまして、それで名前が違うという事になります。後継者を探していらっしゃって、そういうサイトに情報があがっていたのを見つけて、無くすのはもったいないなと思ってアプローチしました

森本さんの前職は、安芸の小京都として知られる竹原市の市役所職員。44歳という若さでなぜ、畑違いのこの店を引き継ぐ事になったのか。

後藤鉱泉所・森本繁郎さん:
市役所で働いていて、人口減少や高齢化で街の活力がどんどん失われていくという現状を目の当たりにして、地域で愛されている事業でも後継者がいなくて辞めてしまうという事がありますので、なんとかしたいなと

全く経験のなかったジュース製造の仕事。契約を交わした2020年9月から先代オーナーのもとで修行する日々が始まった。

後藤鉱泉所・森本繁郎さん:
どちらかと言うと職人さんみたいな感じだったので、必死になって見て覚えましたね

先代夫婦が長年守り続けてきた味を、自分の代で終わらせるわけにはいかない…そんな森本さんを支える妹の藍さんと共に、ジュース製造の技術を必死に習得した。

約半年の修行を経て、2021年4月から4代目として経営を引き継いだ森本さん。公務員から職人へ…森本さんの人生にとって新たなステージが幕をあけた。

(Q.1番売れている商品は?)
後藤鉱泉所・森本繁郎さん:

マルゴサイダーという、ここの看板商品です。50年ぐらい前の瓶で、持ち帰りが出来ないので、この場で飲んでいただくようになります

後藤鉱泉所が販売する瓶入りのジュースは店頭で飲み切り、瓶を返却するのが鉄則。「訪れないと飲めない」という特別感はあるもののその半面…

後藤鉱泉所・森本繁郎さん:
どうしてもこの場で飲むとなると、ひとり一本ですね。売上げ的には正直しんどいですね

回収した瓶は、1本1本丁寧に洗浄して再利用するが、時間と手間の割に大きな売り上げは見込めない。「長く続けられる仕事を」という思いで決断した新たな挑戦は開始早々、大きな課題に直面した。
そこで森本さんは、持ち帰りができる商品を導入。

「訪れないと飲めない」瓶のマルゴサイダー

後藤鉱泉所・森本繁郎さん:
これは持ち帰りできる新しい瓶なんですけど、こちらを新たに導入しました

土産物として持ち帰りができるように、新たに商品化したのが看板商品「マルゴサイダー」。この商品によって、ネット通販を使った全国発送も可能に。

森本さんはグッズ開発にも挑戦し、缶バッチやステッカーなど、旅の思い出になる品を販売するなど販路拡大に向けて動き始めた。

後藤鉱泉所・森本繁郎さん:
客単価でいくと2.5倍から3倍ぐらいに上がってますので、コロナの関係で来店数は減っているとは思うんですが、そのぶんをカバーできてるかなという風に思っています

地域のレモン生産者と共同で商品開発

この日、森本さんが車を走らせ向かったのは、尾道市瀬戸田町にある通称レモン谷。ここで森本さんを待っていたのは、この地で代々レモン栽培に従事する片岡孝之さん。それに、地元企業と生産者をつなぎ商品のプロデュースを行う山岡由明さんの2人。

後藤鉱泉所・森本繁郎さん:
今回この「怪獣レモン」を使った新商品を作りました

聞き馴染みのない「怪獣レモン」。一体、どんなレモンなのか?

カタオカファーム・片岡孝之さん:
ゴツゴツとしていまして、怪獣みたいな見た目で規格外にされてしまうレモンを、怪獣レモンと呼んでいます。皮まで食べられて爽やかな味わいです

収穫時には通常のレモンに比べて2倍から3倍の大きさになるという、片岡ファームのブランド「怪獣レモン」。この果汁を使って開発したのが「怪獣サイダー」。

株式会社瀬戸内百姓・山岡由明さん:
元々、後藤鉱泉所というのは尾道の人からしたらすごい身近にあるラムネ屋さんで、そことレモンの果汁を合わせて何かできないかと思って

株式会社瀬戸内百姓・山岡由明さん

生産者と企業をつなぎ、商品をプロデュースをする山岡さんが、SNSで森本さんに声をかけて実現した今回の商品化。森本さんにとっても嬉しい誘いだった。

後藤鉱泉所・森本繁郎さん:
ちょうど引き継いだタイミングで声をかけてもらって、こんなに美味しいレモンがあるのかと思って、いい商品ができたと思います

もちろん、こちらも持ち帰りできる瓶を採用。さわやかな甘さのレモンと、強めの炭酸が相性抜群。店頭販売だけでなく50を超える店舗に納めている。

手伝える時は、片岡さんや山岡さんも工場に入って、「怪獣サイダー」を製造している。
地域の宝を守りたいと、自ら飛び込んだジュース製造の道。
古くから愛され続けるこのお店を次世代へとつなぐため、森本さんの挑戦の日々は続く。

手伝う様子

後藤鉱泉所・森本繁郎さん:
後継者不足で廃業の危機だったという事がありますので、それを持続可能なものにするために、ひとつひとつ問題点をクリアしていく。ほんと大事な場所だと思いますので、そういう場所を引き続きというか、なくさないようにしていきたいなと思っています

(テレビ新広島)