鳥取の因幡犬と島根の石州犬から生まれた“山陰柴犬”は、戦後、伝染病や鳥取大火でおよそ90匹にまで激減。地道な保存活動の中、地元カメラマンが手がけた写真絵本の表紙で2匹の小犬が顔をくっつけて走る瞬間がSNSで話題に。かわいすぎる! 山陰柴犬について、TSKさんいん中央テレビ・坂西美香アナウンサーが解説する。

TSKさんいん中央テレビアナウンサー・坂西美香:
11月2日、島根県の益田市美都町では「柴犬の里まつり」という柴犬のルーツとなった地元の犬、石号の誕生日を祝う行事が行われるなど、山陰の柴犬は地元でとても人気です。

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実は山陰柴犬は“絶滅の危機”とも言われていましたが、ある一枚の写真をきっかけに山陰柴犬をめぐる状況が変わってきました。

それが、「奇跡の一枚」の写真が表紙を飾る写真絵本『生まれたよ!山陰柴犬』です。
子犬の兄弟、小松と雫の成長期なのですが、2021年6月に鳥取・島根の書店とネットで販売されると全国から購入が相次ぎ、ベストセラーになっているんです。

かわいくて飼いやすい山陰柴犬

山陰柴犬について3つのポイントで紐解いていきます。
1つ目のポイントは「かわいくて飼いやすい山陰柴犬の素顔」。
柴犬で広く知られているのは信州柴犬ですが、それとは別の種類で古来から山陰地方で飼われていた地犬の鳥取の因幡犬と島根の石州犬というのがルーツになっているんです。

外見は小さめの頭部、スリムで引き締まった筋肉質の体、これは因幡犬がアナグマ猟の猟犬だったことが影響しているんです。そして尻尾は巻き尾だが、ゆるい巻きの個体が多い。

そして山陰柴犬は物静かで落ち込んだ雰囲気を漂わせ、感情を体全体で表すことが少ないんです。嬉しいときにもしっぽを数回振る程度。そっけないとさえ言われるほどでまるで大人しいと言われている山陰人を思わせるような性格なんです。

しかし、獲物が射程圏内に入ると、稲妻のような反応を見せることから、動と静のコントラストが非常に印象的でもあります。

絶滅の危機なかなか増えない悩み

続いての2つ目のポイントは「絶滅の危機なかなか増えない悩み」です。

まずは1947年に生まれた太刀号という犬が鳥取尾崎家の柴犬として全国で有名になりました。鳥取在住だった日本犬保存会審査員の故・尾崎益三氏が手がけたもので山陰地方の地犬の保存、繁殖は昭和初期から続けられていたんですが、太刀号が山陰柴犬の大本とも言われ、これを始祖とする系譜は現在の山陰柴犬に受け継がれることになりました。

しかし、悲劇が訪れます。昭和20年代後半から30年代にかけて伝染病ジステンパーが山陰地方で猛威を振るい、さらに1952年4月に発生した鳥取大火で5000戸が焼失し、山陰柴犬は約90匹にまで減少しました。

さらに一般的な雌犬は発情期が年2回。1回の出産で5匹から10匹の犬を産むと言われているんですが、山陰柴犬の発情期は年に2回来ることは少なく、1回の出産で産むのは平均で2~3匹、4匹産むことは稀で、一般に出産数が少ないのが特徴なんです。

山陰中央テレビでは子犬の引き取りなどこれまで様々な保存活動を取材してきたが、本当に地元の人たちが山陰柴犬を愛しているのをいつも感じていました。

「SNSが救世主全国的流行の予感」

そして3つ目のポイントは「SNSが救世主、全国的流行の予感」です。
地道な保存活動で徐々に数が増えてきた山陰柴犬ですが、令和に入って嬉しい出来事が起きたんです。

地元カメラマン豊哲也さんが飼っていた犬が産んだ子犬を撮影してTwitterに投稿すると、リツイートは2万超、9万いいねがついたんです。

その写真というのが絵本の表紙にもなっている奇跡の一枚なんです。この投稿に全国から「可愛い山陰柴犬はじめて知った」といったコメントが多数寄せられました。

豊さんがクラウドファンディングで写真絵本を作ろうと提案すると、目標金額の200万円に支援は全国約350人から届き、目標金額をはるかに超え335万円を突破しました。

地元の人の保存活動にSNSの力も加わって、約90匹まで減った山陰柴犬は現在約500匹にまで増えているんです。

かつて鳥取尾崎家の柴犬として全国的に有名になった山陰柴犬が再び全国にその名を轟かせる日はそんなに遠くはなさそうです。

(「イット!」11月9日放送分より)

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