コロナ入院患者は2人にまで減少…日常を取り戻しつつある病棟

10月31日に投開票される衆議院議員選挙。各政党が掲げる公約の中で関心が高いのが、新型コロナ対策だ。医療体制の確保や医療従事者への支援…。

各党が様々な政策を打ち出す中、現場の医師たちは何を望み、何に期待するのか。コロナの最前線を見続けてきた医師に聞いた。

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愛知県豊明市にある藤田医科大学病院の岩田充永副院長は、救命救急センターに運ばれてくる中等症以上のコロナ患者の対応や、ワクチンの大規模接種会場の責任者として指揮を執っている。

岩田充永副院長(2020年12月):
医者になって20年以上経ちますが、こんなに緊張感と恐怖を覚えたのは、本当に初めてですね

日々変化するコロナ医療の最前線。

岩田充永副院長:
ここのフロアは8床あるんですけど、コロナの中等症の中でも重症に近い方や重症の方をみている病棟です。今は患者さん2人だけなので…

藤田医科大学病院にある中等症・重症患者用ベッドは全部で45床。第5波のピーク時には、連日“満床”の状態が続いた。ピーク時には8人中6人が人工呼吸器をつけるなど、重い症状の患者が入院していた。

現在、新型コロナで入院している患者は2人。それ以外では一般の入院患者が入り、徐々に日常を取り戻しているように見えた。

岩田充永副院長:
ワクチン接種や抗体カクテル療法が進んで落ち着いてきて、逆にここまで減ったことがないので、(今後の)準備と安心とが入り混じってるような感じです

医師から見た各党が掲げる“コロナ対策”

10月31日に投開票される衆院選では、各政党が新型コロナ対策について政策を掲げている。「医療提供体制の確保」や「検査体制」、それに「医療機関の支援」に関するものなど、各党様々な策を打ち出しているように見える。

岩田充永副院長:
いろいろ論点がある選挙だと思うけど、コロナ対策については、党名を隠したらどの党がどの対策か当てるのが難しいくらい似ていますよね。それだけ、どの党も大事なことだと認識しているということですよね

すべての患者に満足いく医療を提供できない葛藤

現場で多くのコロナ患者を診てきた岩田副院長は、様々な葛藤を感じてきたという。

岩田充永副院長:
特に看護師さんたちが苦しんでいたのは、災害医療ってそうなんですけど、この人に100点、隣の人には0点ではダメで…。みんなにまず60点を保証する発想に切り替えていかなきゃいけないんですが、精神的な苦しさがありました。そういうのが続いていくと「あ、自分は患者さんに何もできていないんだ」って発想になって、燃え尽きたりするのをすごく心配しましたね

「コロナ医療」と「災害医療」はイコールと語る岩田副院長。毎日、次々と運び込まれるコロナ患者…。多くの患者に対応するため、一人一人に100点の治療をするのが難しく、満遍なく60点の医療をキープするのが精一杯だったことに、医療従事者としての葛藤を覗かせていた。

病床を増やすより“重症化させない”に重点を

こうした状況に、各党の公約として打ち出しているのが、病床数の確保など“医療体制の見直し”だ。現場でコロナ患者と向き合っている岩田副院長は、どう感じているのか。

岩田充永副院長:
「(コロナ)病床を2割増やす」ということが言われています。じゃあ増やした分、どこか2割減るわけですから、全体を見た中での議論をしていただきたいです。おそらく“病床を増やす”という闘い方は、まだ治療法がなかった第1波、第2波の頃であれば正解でしょうし。医療従事者というのは無限に増えていくわけではないので、コロナに特化したのであれば、その分手薄になる領域ができてしまうという厳しいメッセージも、政治が責任を持って発していただかないといけないかなと感じます

コロナ治療の最前線に立って1年半…。ワクチン接種の普及や抗体カクテル療法が導入されたことで、第5波も抑え込むことができた。ようやくコロナとの付き合い方が見えてきた今、衆院選で問われるのは“これからのコロナ対応”だ。

岩田充永副院長:
どんどんフェーズが変わっていくので、「こういう飲み薬がある、抗体治療薬がある」というキャンペーンをする方が、病床を増やすよりも合っている気がする。病床を増やして重症化する人を待っているよりは、重症化させないことに重点を置くべきだと。全く今までの治療法が無効になるようなウイルスの変異が起こる場合と、今の闘い方でいけるウイルスだった時と、いろいろな想定をして「具体的な策を練っていただく」ということが、とても大切だと思います

コロナ病床の確保だけではなく、“フェーズに合わせた適切な対応”をとってほしいと医療現場は期待している。

(東海テレビ)

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