新型コロナウイルス対策で、今日から休校がスタートした学校も多い。
休校によって心配なのは、教室で得られたはずの学習の機会を、子どもたちにどうつくるかだ。オンライン学習を開発・推進する教育ベンチャー=エドテック業界から、自然発生的に広がった支援の動きを取材した。

「スピード勝負だと思い動いているので」

株式会社Libryの後藤匠氏
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デジタル教科書や問題集を開発する株式会社Libry(以下リブリー)の代表取締役CEOの後藤匠氏は、先月27日休校要請の一報を聞くと、支援に立ち上がったエドテックのリストを自らのブログに作り公開した。

ブログの最後には、リストに掲載した各企業に対して「確認を取らずにプレスリリースの内容等に勝手にリンク貼っていたり、内容の引用をしてしまってごめんなさい。スピード勝負だと思い、動いていますので、ご容赦ください」と書かれている。

後藤氏はこう言う。
「木曜日の夜に臨時休校のニュースが出てから、まわりのたくさんのエドテック企業が休校支援の取り組みをはじめました。一方で今一番大変なのは、晴天の霹靂で休校時の対応に追われている学校の先生じゃないですか。先生達が混乱をしている中で、それらの情報が点在していても、ひとつひとつの情報を探したり追ったりできるはずないと直感しました。そこで、支援の情報をまとめて更新していけば、少しでも先生方のお役に立てるんじゃないかと。そう思った時にはもうブログでまとめはじめていました(笑)」

離れていても宿題の出題や回収ができる

リブリーでも全国の中・高校に対して、コンテンツの一部の無償提供を開始した。期間は春休み期間終了までだ。リブリーでは、既存の教科書や問題集をデジタル化し、生徒一人ひとりの学習履歴に基づいた個別最適化学習ができる。また、先生はどこにいても生徒の学習履歴を閲覧することができるほか、宿題の配信・回収・集計も簡単に行え、現在約500の中・高校が利用している。

「文科省から『学習に著しい遅れがでないように配慮すること』という通知が出ていたので、『休校中の課題作りが大変だ』という話を導入している学校から聞いていました。リブリーを使えば、遠隔で宿題の出題や回収ができます。また、リブリーはタブレットでもスマートフォンでも学習管理ができるため、ICTが導入されていない学校に対しても、支援できればと思います」

先生も子どももコミュニケーションが不安

このリストにもあったClassi株式会社(以下クラッシー)は、全国の2500校以上の高校で利用されている学校ICT化をサポートする教育プラットフォームだ。クラッシーでは、休校する全国の未導入の高校に対して、今月9日から来月30日まで一部サービスを無償提供する。

代表取締役副社長の加藤理啓氏はこう言う。
「私たちのサービスは高校の2校に1校、高校生の3人に1人が使っています。だからこそ、学校がどのようなことに困るのか想像がつきます。とはいえ初めての事態なので、できることはどんどん進めていくというスタンスです。学校が休校になると、いつも目の前にいる人たちがいなくなり、先生も子どももコミュニケーション面で不安があると思います。ITができることは、物理的な距離を超えられることなので、クラッシーのコミュニケーション機能で解決できると考えています」

生徒が体温測定し先生に報告

クラッシーは、高校(一部、中高一貫校を含む)を対象に、中学校〜高校の学習範囲で約1万2千本の学習動画と約6万の問題を提供する。
さらに今回、新型コロナウイルス対策として、生徒が毎日体温を測りクラッシーを通じて先生に報告する機能を追加した。

「28日に社内で『サービスを無料で提供するだけでなく、他にも学校に支援できることはないか?』とSlackで意見交換を行っていたところ、ある社員が『子どもの学校で体温測定が始まった』と。そこで2日から開始しましたが、とても好評を頂いています」(加藤氏)

ほかにもクラッシーでは、利用する全国の先生たちが休校に関する様々な情報や知識を共有できるように、「コロナウイルス休校に関するアイディアグループ」というチャットルームを開設した。先月29日に開設以来、すでに1,000名を超える先生が加入している。

加藤氏は言う。
「未曾有の危機で大変だと思いますが、この経験を共有できている子どもたちは他の世代よりユニークであってほしいと思います。『普段できなかったことをできるようになったよ』と子どもたちが言えるような経験になるといいですね。私たちは、そのために何ができるのか、先生とともに一緒に考えていきたいです」

紙の宿題より英語コンテンツに触れてほしい

EnglishCentral(以下イングリッシュセントラル)は、グローバルな動画を使ったオンライン英会話と英語学習のサービスを提供している。本部は米国・ボストンにあり、登録者数は世界でのべ500万人だ。
イングリッシュセントラルでは、英語を教える学習塾などの教育機関に対して、来月30日までの間、動画学習プラン「アカデミックプレミアム」を無償で提供することにした。

代表取締役の松村弘典氏は、支援に乗り出した理由をこう言う。
「何もかもが急な話でしたが、『子どもたちを遊ばせておくわけにはいかない』と山のような紙の宿題を出されるよりも、英語コンテンツの山に触れてもらえたら嬉しいな、とこの判断に至りました」

休校でも学びがあったと言われたい

イングリッシュセントラルは、ニュースなど様々な動画を学習者が自ら選んで英語4技能を強化する。それぞれの学習者が自分のレベルに合わせて、リスニング、ボキャブラリー学習ができるほか、音読をAIが分析し指導してくれる。

「これを機に、一斉に与えられるものではなく一人一人が自分の興味・関心のあるものを自由に選んでも、英語を学ぶことは出来るということを体験してほしいと思っています」

支援発表以来「反響の大きさに驚いている」程の問い合わせが、学校や学習塾だけでなく、子どもが家にいる時間を有意義な学びとしたい保護者らからもきている。イングリッシュセントラルでは今後、個人にも支援対象を広げる方向で検討中だ。

「家でこれをやってきなさいという課題ではなく、やってみたらいろいろ楽しくて、気がついたら課題の倍はこなしていたという状態を作り出して、『休校期間にもそれなりの学びがあったね』とポジティブに捉えてもらえるよう、いろいろな施策を打って行くつもりです」(松村氏)

子どもたちが教室では得られなかった新たな学びをつくれるように、学校だけでなく若い教育ベンチャーたちも日夜奮闘しているのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】