東急線の駅のホワイトボードに書かれた、手書きの告知がツイッター上で話題となっている。

この投稿をしたのは、宇田川吾郎さん(@56udagawa)。
投稿画像には、駅のホワイトボードに、「東急線News」と題して「電車売ります!」と告知され、「田園都市線・大井町線で活躍した8500系電車が順次引退するのに伴い、電車1両まるまる販売します!」と書かれている。

東急電鉄によると、8500系の電車は、1975年に導入され、東急田園都市線を中心に活躍してきたが、2020系の車両の導入に伴い、順次、廃車が進んでおり、現時点では残り4編成となっている。

8500系の車両【8622号と8630号】(提供:東急電鉄㈱)
8500系の車両【8622号と8630号】(提供:東急電鉄㈱)
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今まで廃車となった8500系の車両のつり革など廃車部品の販売は、WEB販売サイト「TOKYU STYLE」をはじめ、「東急電車まつり」やイベントで販売を行っていた。

今回は新たな企画として、今後、廃車予定の8622編成、8630編成の車両について、「車両1両」や「車両の先頭部分のカットモデル」、「運転台」などの販売を行うことになった。手書きのホワイトボードで冗談かと思いがちだが本当なのだ。

販売する品(提供:東急電鉄㈱)
販売する品(提供:東急電鉄㈱)

「車両1両」の販売価格は176万円、「車両の先頭部分のカットモデル」は2420万円、「運転台」は85万円。(すべて税込)
「運転台」は、「車両1両」と「車両の先頭部分のカットモデル」が完売した時は販売しない。

また、販売価格の他に下記の費用が別途必要としている。
1.トレーラー等での輸送費用
2.設置場所での車両降ろし用クレーンチャーター費用
3.設置場所の整備費用(レール・枕木・砂利・屋根の設置など)
4.設置費用
5.組み立て費用(「運転台」をご購入の場合)
6.購入後、継続的に必要なメンテナンス費用

販売する車両は、8522号、8622号、8530号、8630号。

購入を希望する場合はメールで申し込み、申し込みの締め切りは「8522号、8622号」が10月20日、「8530号、8630号」が11月20日となっている。

東急電鉄が車両を一般販売するのは今回が初めてなのだが、なぜ今、一般販売をするのか?
車両は誰でも購入できるのか?何か条件はあるのか?


東急電鉄の担当者に話を聞いた。

初の一般販売はコロナ禍も影響

――今、このタイミングで「車両」の販売を行うのはなぜ?

従来から、環境対応の観点から、国内の地方鉄道会社や海外(インドネシア)の鉄道会社に、中古の鉄道車両としての譲渡を行ってまいりました。

ところが、このコロナ禍で、国内・海外ともに販売の手続きが難しく、今回については一般のお客様向けに販売することに至りました。
 

――引退した車両は、これまで、全て販売している?

引退した、すべての車両を販売しているか定かでは無いですが、多くは国内の他の鉄道会社に販売したり、海外に譲渡したりしています。
 

――一般向けに販売するのは初めて?

東急電鉄では初めての取り組みです。
 

――販売価格を見ると、「車両1両」よりも「先頭部分カットモデル」の方が高い。これはどうして?

「車両1両」ですと、新たな加工が不要ですが、「先頭部分カットモデル」については、工場で断面処理を行う費用が発生します。

このため、「先頭部分カットモデル」の方が高くなるということです。

先頭部分カットモデル(提供:東急電鉄㈱)
先頭部分カットモデル(提供:東急電鉄㈱)

購入の条件は「設置場所」

――購入する際の条件は?

「設置場所」です。
重量を支えられる場所であること、腐食や朽ち果ての可能性が低いこと、陸送により搬入・降ろし作業が可能な場所であることなどの制限があります。
 

――販売価格の他に「別途かかる費用」も記載されているが、合計でいくらぐらいかかる?

設置場所までの運搬費用が発生します。

金額は、距離、運搬経路、搬入場所などの諸条件によって、増減するため、一概に申し上げられません。
 

――どのような方が購入して、どのように使うことを想定している?

「ローレル賞」を受賞した8500系の車両に対して、親しみや愛着をお持ちいただいているお客さまにお譲りすることを想定しています。

「ローレル賞」とは、鉄道友の会が、前年度に営業運転を始めた新型車両の中から、デザイン・性能・製造企画の点などで優秀と認められた車両に贈る賞です。

8500系の全車両が現役を引退した後も、在りし日の8500系や現役当時の東急線沿線の情景を回想し、購入したお客さまや、(設置している車両を)ご覧になられた方の想い出の回想を長期間にわたり、体感することができれば、という思いがあります。
 

10月20日現在、車両1両全体については8件の連絡

――今回の特別販売。10月1日のリリース後、購入希望のメールはどのぐらい届いている?

10月20日現在、お問い合わせを含めて、車両1両全体については8件、車両一部分カットについては2件、運転台に9件のご連絡をいただいております。

8500系の車両【8628号】(提供:東急電鉄㈱)
8500系の車両【8628号】(提供:東急電鉄㈱)

東急電鉄が初めて、一般販売をする電車の車両。
「8522号、8622号」の申し込みは10月20日で締め切られているが、「8530号、8630号」は11月20日まで受け付けている。
8500系に親しみや愛着があり、設置場所の条件を満たしている人は、まだ間に合うので検討してみてもいいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。