多くの職員に見送られ葉山御用邸へ

上皇ご夫妻は3月19日、皇居を出発し神奈川県にある葉山御用邸へと向かわれました。今回は通常のご静養ではなく、東京・港区の仙洞仮御所への転居準備という意味合いもあり、皇居では多くの職員たちが見送る様子も見られました。

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今回の転居は、お代替わりに伴い、皇居のお住まいには天皇皇后両陛下に入っていただき、現在、両陛下がお住まいの赤坂の住居に上皇ご夫妻に入っていただこうというものです。ただ、両方のお住まいとも改修が必要で、まず、上皇ご夫妻に、港区にある旧高松宮邸でお過ごしいただき、その間に、皇居のお住まいを改修。改修後の御所に、両陛下が入られた後、赤坂のお住まいを改修し、上皇ご夫妻に入っていただく計画です。

皇居には天皇が住むべき、という上皇さまのお考えもありました。

こうしたお引っ越し計画の中、上皇ご夫妻は、19日から葉山御用邸と栃木県にある御料牧場に滞在していただく間に、吹上仙洞御所に収蔵されていた荷物などを旧高松宮邸や赤坂に移動させ、上皇ご夫妻には3月31日新たなお住まいとなる旧高松宮邸改め仙洞仮御所に入っていただく予定です。

3月31日からお住まいになる仙洞仮御所

御所での思い出の品々

上皇ご夫妻が皇居の御所に入られたのは、1993年12月8日で、約26年前のことです。御所は1991年に起工し、総面積約5000平方メートル、鉄筋コンクリート地下一階一部二階建てで家具や調度品などと合わせ総工費は約56億円、私室部分、接遇部分、事務部分に別れ総部屋数は62という建物です。

お住まいに面する庭もご夫妻のご生活の中で整備されていきます。

軽井沢の思い出の花「ユウスゲ」、阪神淡路大震災で犠牲なった加藤はるかさんの自宅に咲いていたひまわりの種から育った「はるかのひまわり」、東日本大震災で被害を受けた宿舎前に咲いていた「ハマギク」などなど、一部あげただけでも、一つ一つの草木には物語があり、こうして国民への思いがこもった草木を植えられてきました。

また、皇居には、上皇ご夫妻の毎朝ご散策されてきた東御苑もあります。そこにはご夫妻が提案し、都道府県の木が植えられたり、雑木林に木の名前を刻んだ名札がつけられたり、果樹園が作られたり・・・

この26年間、上皇ご夫妻はこの御所を拠点に象徴としてのご公務などに臨まれてきましたが、皇居にある様々なものから、国民一人一人に真摯に向き合う上皇ご夫妻のお気持ちを知ることができるのです。

所蔵品の整理

こうした一人一人に向き合うお気持ちを、お住まいの所蔵品からも知ることもできます。

上皇ご夫妻は、転居に伴い所蔵してきたものなどを時間をかけ整理をされてきたということです。朝早くから夜遅くまで作業をされたこともあったそうです。

点数にすると、外国からの献上品は元首や王族のものも含め、4000点を超えているといいます。献上品の中には手紙やカードがついているものもあり、その文面はただの礼儀的なものでなく、個人と個人の交流も綴られていたそうです。

つまりここに収蔵されてきた品々は国際親善を上皇ご夫妻がどのようになさっていたのか、それを示すものでもあったのです。

2019年 吹上仙洞御所にて

もちろん、日本の中から献上されたもの、ご夫妻が個人的に購入されたものもはこの4000点には含まれていません。

特別支援学校の旭出学園が行う工芸展でお買い求めになったもの、女優の宮城まり子さんが設立したねむの木学園からいただいた絵画などなど。

上皇ご夫妻がいかに国民に心を寄せ、出会った人たちを大切にされてきたのか知ることになるのです。収蔵されていた品々、一つ一つに物語が存在するのです。

天皇皇后両陛下へと引き継がれた庭

上皇ご夫妻は、天皇皇后両陛下と愛子さま、秋篠宮ご一家、黒田清子さんといったお子様方家族、お仕えする職員がお見送りする中、お住まいの吹上仙洞御所を出発されました。

途中、宮中祭祀を行う賢所を車で一周した際には、祭祀をお手伝いする掌典の方、また、乾門に向かう道筋にはたくさんの職員が並び、ご夫妻が通ると、拍手し頭をさげていました。

沢山の職員に見送られ乾門をあとにされる上皇ご夫妻

最後に皇居・乾門を出たご夫妻は、穏やかに手を振って沿道の一般の人たちに応えられていました。

ご夫妻は、今後も東御苑やお庭を訪問されることはありますが、国民に向かい続けたお気持ちが込められた庭は、天皇皇后両陛下へと引き継がれたのです。そして、両陛下が新たな物語を作られていくことになるのです。

現在の赤坂御所は、上皇ご夫妻にとり、皇太子時代、天皇になられた一時期と合わせ33年間住まわれた住居です。私のなによりの願いは、ご高齢となった上皇ご夫妻が高輪の仙洞仮御所で、穏やかな一年半を過ごし、さらに赤坂の仙洞御所で昔を懐かしみながらご夫妻睦ましい時間を過ごしていただくことで、そんなお姿を拝見できたとき、私は何よりの幸せを感じられると思っています。

【執筆:フジテレビ 解説委員 橋本寿史】