特殊詐欺撲滅へ 新たな一手「100人ディフェンス作戦」

埼玉県警は、県警本部所属の捜査員100人を集中投入して、「還付金詐欺100人ディフェンス作戦」を開始した。金融機関のATMで、携帯電話を使用している人がいれば、速やかに声かけ、注意喚起を行う。当然、周辺に不審者がいれば、躊躇なく職務質問を行うといった一斉警戒を始めたのだ。

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埼玉県内では、近年、オレオレ詐欺などを含む特殊詐欺の認知件数が減少傾向にあったが、ここにきて、にわかに増加傾向に転じた。

9月末現在で、認知件数は770件(前年同期比+22件)、被害総額は約16億5000万円(前年同期比+約2億円)だ。特に、医療費が戻るなどとウソをいって、被害者をATMに誘導し、現金を振り込ませる「還付金詐欺」が154件(前年同期比+59件)と、すでに前年を上回る被害が発生。一刻も早い対策が求められる事態となっていた。

埼玉県では還付金詐欺の発生件数が、9月末時点で、去年1年間の分を上回っている
埼玉県では還付金詐欺の発生件数が、9月末時点で、去年1年間の分を上回っている

還付金詐欺には「受け子」なし 逮捕リスクも低くなる

特殊詐欺グループには、様々な役割がある。犯行を指示する「指示役」、電話をする「掛け子」、現金を引き出す「出し子」、そして、現金を受け取る「受け子」など。この受け子は、被害者らと、直接、接するケースが多いため、捕まるリスクは高い。しかも実刑判決を受ける確率も高い。

このため特殊詐欺グループの間では、一時、受け子の「人手不足」が指摘された。しかし、還付金詐欺には「受け子」はいない。被害者にそのまま現金を振り込ませるからであり、この点、還付金詐欺のにわかな流行の一因があるとみられる。

埼玉県警は捜査員100人を投入し、ATMでの声かけなどを徹底する
埼玉県警は捜査員100人を投入し、ATMでの声かけなどを徹底する

ATMコーナーで「還付金」と聞いたら それは「詐欺」

「作戦」開始にあたり、埼玉県警の近藤勝彦生安部長は、「『還付金詐欺の被害者は1人も出さない』との強い気持ちをもって、被害の未然防止と広報啓発にあたっていただきたい。被害を必ず食い止めることはもとより、ATMの利用者に対して、『還付金』『ATM』というキーワードが出たら詐欺ですと、積極的に呼びかけ、社会の特殊詐欺に対する抵抗力を高めていただきたい」と捜査員たちに呼びかけていた。

埼玉県警・近藤生安部長は「『還付金詐欺の被害者を一人も出さない』という気持ちを持つよう呼びかけた
埼玉県警・近藤生安部長は「『還付金詐欺の被害者を一人も出さない』という気持ちを持つよう呼びかけた

警察力の向上とともに、特殊詐欺の撲滅のために不可欠なのが民間との連携だろう。実際、金融機関やコンビニなどで店員による積極的な声かけにより、詐欺被害を水際でとめたというケースも多数報告されている。

他人事ではなく、私たち一人ひとりが、本気で被害防止について考え始めたときこそが、撲滅への本当の第一歩といえる。埼玉県警の今回の取り組みをきっかけに、特殊詐欺撲滅に向けた社会全体の関心がより高まることを期待したい。

(フジテレビ社会部・埼玉県警担当 金子聡太郎)

金子聡太郎
金子聡太郎