日本の道路は、「明治通り」など「○○通り」といった“通り名”で呼ばれることがある。そしていま、広島県に変わった名前の通りがあると話題になっている。

嘘かと思ってたが……
まさか噂通りだったなんて……

きっかけは、Twitterユーザーのgai@スバ友(@gai_JRS)さんが投稿した1枚の写真。街中に標識らしきものが立っていて、そこには「噂通り」の文字が書いてある。

確かに「噂通り」(画像提供:gai@スバ友さん)
この記事の画像(9枚)

そう、この通りの名前が「噂通り」だというのだ。しかし普通は、「噂通り」と聞けば、「噂に違わず」や「聞いた通り」ということを思い浮かべるのではないだろうか。

この投稿は8万6000以上(9月24日時点)のいいねを集めるなど注目を集め、人々からは「面白い」「ほんまなん?」などの不思議な反応が相次いだ。

gai@スバ友さんに詳しく聞いたところ、写真は広島県広島市安佐北区にある、JR可部駅東口の近くで撮影したもの。仕事で神奈川県から訪れ、ホテルに宿泊した翌朝に偶然見つけたという。

グーグルマップにも掲載されている

誰が何の目的で名付けたか気になるが、そもそも、通り名はどのように決まるのだろう。まずは市内道路の管理業務などを担う、広島市道路交通局に聞いた。

一般公募や愛称から名付けられる

――道路の“通り名”はどのように決まっている?

名前が決まる仕組みは自治体によって異なります。広島市の場合、道路新設や幹線道路の改築が多かったころ(昭和50年代ごろまで)は、一般公募で決めることがありました。今は既存の道路に定着した、愛称から自然発生的につくこともあります。


――名前の認定や管理はどこがしている?

基本的には地域の自治体(安佐北区の場合は区役所)になります。地域住民が要望を提出し、自治体の選定を受けて合意があれば認められます。要望には住民や商店街の同意も必要となります。

広島市では、正式な認定に自治体の合意が必要(画像はイメージ)

そこで安佐北区役所に聞いたところ、「噂通り」は実は正式な通りではなく、地元の有志たちが考えたものだという。標識は私有地に置かれているため問題はなく、区としても「地域おこしにつながれば」と応援しているとのことだった。

謎は深まるばかりだが、「噂通り」とはどんな場所なのか。またなぜ「噂通り」なのか。この通りを広めた、広島市地域活動支援事業団体「噂通りの会」会長・大戸由加さんに聞くと、意外な経緯がわかった。

きっかけは「噂通りにおいしかった」

――噂通りの周辺はどんな場所?

JR可部駅の東口に「ホテルリッチ」というホテルがあり、ここから約80メートルの商店街をそう呼んでいます。ピザや創作料理、ビールバーなどの飲食店が多いですね。私はこのホテルリッチのオーナー・支配人で、「噂通り」の標識は私有地の駐車場にあります。
※gai@スバ友さんに聞いたところ、当時宿泊したのがこの「ホテルリッチ」だったという。

噂通りの会のメンバー。中央で標識を持つのが大戸さん(画像提供:噂通りの会)

――噂通りができるまでの経緯を教えて。

偶然が重なっています。可部は昔は商業地域として栄えていましたが、近年はさびれて人も少なくなっていました。もう一度地域を盛り上げたいと、2019年夏、コピーライターの長谷川哲士さんに「ホテルのキャッチコピーを付けてほしい」とお願いしたのです。

長谷川さんたちはその年の7月、ホテルに訪れていただき、私も一緒に商店街の飲食店を2~3軒楽しみました。その時に「噂通りにおいしかった」と思っていただいたそうです。それから数日後にいただいたのが「通りに名前を付けたい」というお話と「噂通り」の提案でした。

標識の接地場所。前にいるのが長谷川哲士さん(画像提供:噂通りの会)

――提案を受けてどう思った?

くすっと笑える名前でぴったりだと思いました。商店街には30~40代を中心に、仲の良いグループがあったので、それなら「噂通り」とそのための任意団体にしようと思いました。通りと会の正式な発足はグーグルマップに掲載の認可を受けた、2020年1月からとしています。

人々の「噂」となり存在が認知

――噂通りの標識はどのように作ったの?

長谷川さんのプレゼントです。「‪いつか置きに行きたい」と仰ってくれましたが、コロナ禍で難しいと思っていたところ、2020年4月に贈っていただきました。実は標識の「り」の部分には、小さな鳥がいます。噂通りはローマ字表記だと「Uwasa-dori」で「噂鳥」とも読めます。

実は「り」の部分に鳥がいる(画像提供:噂通りの会)

――噂通りとなったことでどんな変化があった?

以前は可部は素通りされるような印象でしたが、注目されるようになったと感じています。雑誌やテレビなどで取り上げていただけるようになりました。コロナ禍でホテルはもちろん、商店街も厳しい環境ですが、通り名がなければもっと苦しい状況だったと思います。


――会としての活動と目標を教えて。

現在はコロナ対策の最前線で働く、地域の医療従事者にお弁当を差し入れしたり、感染拡大で職場体験が難しい学生のため、学校での講和活動などを行っています。地域の魅力を伝えて「噂通りいいね!」という噂を広めていきたいですね。

医療従事者の支援なども行っている(画像提供:噂通りの会)

ひょんなことから名付けられた呼び名が注目され、Twitterでも話題となる。言葉の力の大きさを感じる出来事だった。大戸さんは「噂通り」を正式な通り名にもしたいとも話していたので、近い将来はそれが実現するかもしれない。

【関連記事】
コロナ禍の中「フードバンク」が生活困窮者を支援 「みんな幸せに生きていく権利がある」【広島発】
アニメ声優が歴史感じる町を案内・怖い“伝説”も臨場感たっぷり 音声ガイドで新たな魅力発信【広島発】