北海道では第5波のピークを超えたと見られる今も、入院せずに自宅で療養する人がいる。
この状況は第4波のピークを超えた6月も同じで、当時は自宅や施設で療養をする人が、北海道全体で2000人を超えていた。

感染者が減っても入院できるわけでなく、自宅で不安を抱えながら療養した男性が、当時の厳しい状況を打ち明けてくれた。

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自宅療養を経験 菅野 勝博さん:
ベッドの端の方に、2週間以上ずっと熱が高かったのでそのまま。このまま死んで行くと、ずっと思っていました

札幌市内に住む40代の男性。6月上旬に新型コロナウイルスに感染。40度近い発熱が2週間続き、過酷な自宅療養生活を経験した。
1人暮らしで頼れる人もいなく、たった一人で耐えた孤独な自宅療養生活。その実態とは…

自宅療養を経験 菅野 勝博さん:
車で4人で出かけなければならなかったんです。時間にすると1時間30分ほど。夜9時ごろに1人から電話があり、体調が悪くて病院に行ったらコロナの陽性だったと。車に乗っていた全員が濃厚接触者だと

車で移動して「濃厚接触者」…そして感染判明

2週間以上の自宅療養生活を体験した菅野勝博さん(47)だ。菅野さんは札幌市内で水産会社を経営し、従業員などと1時間30分ほど車で移動をしていた際、4人のうち1人の感染が確認され濃厚接触者となった。
その後40度近い発熱となり、救急車を呼んだ。

受け入れる病院なく「自宅療養」に…

自宅療養を経験 菅野 勝博さん:
その場で測って、38度近い熱がでていました。(救急隊員は)それを見てくれているんですが、「申し訳ないけど」って…。救急隊の運びたいという気持ちはすごく伝わったんですが、医療機関がどこも受け入れしてくれないから

救急車を呼んだのは第4波の最中、6月上旬の土曜の夜だった。新規感染者はピークを超えても北海道内で200人を上回っていて、この夜診察してくれる病院はなかった。

週が明けた月曜日、ようやく発熱外来を受診し感染を確認。自宅療養となった。

自宅療養を経験 菅野 勝博さん:
ホテルでも病院でも空いていれば入りたいと保健所に話をしても、『いま満床なので本当に苦しくなったら救急車を呼んでくれれば、どこか入れる所があるかもしれません』としか回答されないんです

両親を早くに亡くした菅野さんは7年前に離婚。それ以来、一軒家に1人暮らしをしている。40℃近い発熱が2週間続いても、1人で耐えるほかなかった。

不安を抱え「1人」で過ごす療養生活

自宅療養を経験 菅野 勝博さん:
全然動けないのと、もうろうとしてる感じはありますね。保健所の方は1日1回連絡をくれるんですが、朝の時もあれば夜8時になる時もあり、やっぱり出られない時もあるんです。両親も亡くなっていて、兄弟も家族もいない。誰が鍵を閉めているのに発見してくれるのだろうか…

自宅療養と宿泊療養。そして入院。札幌市では、保健所がどの療養の形をとるかを決定する。

保健所が判断する基準は…『高齢者や基礎疾患がなく軽症・または無症状の人が前提。自宅で安静にでき、外出せずに生活できること。電話などで健康状況を相談できる人』としている。
条件が合致した菅野さんの状況は、より深刻だったと言う。

自宅療養を経験 菅野 勝博さん:
血中酸素を測る機械が送られてくるんですけど、その機械の数値が90%以下になれば体の酸素が薄くなってるから病院に行く。自分の場合は80数%という日が結構続いていました

「危険な状況」になっても続いた"自宅療養"

血中酸素の飽和度が、入院治療が必要とされる基準値を下回ることもあったということだが…

自宅療養を経験 菅野 勝博さん:
保健所にそのことを伝えても、「救急車を呼んでください」としか言われないんです

頼りになるのは処方された解熱剤だけ。
しかし2週間たっても、熱は下がらなかった。

自宅療養を経験 菅野 勝博さん:
正直、熱出てて辛いんですよね。(解熱剤は)1日3回で1回1錠と言われたが、1錠飲んでも正直下がらないんです、全然。少し下がっても、すぐ熱が上がる。それを説明しても、保健所からは「そのまま続けてください」としか言われませんでした

最終的に処方されたさらに強い解熱剤を服用し、熱は下がり、菅野さんの自宅療養は終わった。あれから4か月…。菅野さんは息苦しさや記憶障害を感じながら、日々の生活を送っている。

札幌市保健所が示す「自宅療養」の対象は以下の通りだ。

・軽症、または無症状(高齢者、基礎疾患のある人などを除く)
・自宅で安静が可能
・外出せず生活できる
・スマートフォンや電話で健康状況を相談できる

札幌市は今回のケースを「対応しなければならなかった」としながら、「時間帯によっては対応できないことがある」としている。

「電話診療」や「往診」に取り組む札幌市

札幌市では、第4波の緊急事態時に自宅療養者が1600人に達した。そこで札幌市医師会と協力して電話での診療や往診に取り組んでいる。

・電話診療:155施設
・往診  : 93施設
(5月下旬から9月7日まで)

今後も協力する施設を増やしていきたいとしている。

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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