8月20日に発売された絵本『ボッチャの大きなりんごの木』。
いま話題の絵本を手がけたのは、ドラマの撮影中に事故に遭い脊髄損傷と診断された、俳優の滝川英治さんです。

この作品は、自転車事故で体の多くの部分が動かなくなったゾウの「ボッチャ」を描いたもので、滝川さん自身がモチーフとなっています。
めざまし8では、事故を乗り越え、絵本作家デビューした滝川さんの思いを取材しました。

制作期間2年以上 脊髄損傷を負った俳優が自身を投影

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色鮮やかな動物たちが描かれた絵本『ボッチャの大きなりんごの木』。
ロードバイクの大会で事故に遭い、体の多くの部分が動かなくなってしまうゾウの 「ボッチャ」 が主人公の物語です。

この絵本の作者、俳優・滝川英治さんは、2017年に自転車競技を題材にしたドラマの撮影中に転倒。「脊髄損傷」の診断を受け、体の多くの機能を失ってしまいました。
先の見えない不安が続く中、滝川さんは少しずつ前へ進み、過酷なリハビリに耐えてきました。そんななか出会ったのが「絵を描くこと」でした。

Q. 絵を描くっていうのはどこから発想を得たのですか?
滝川英治さん:
ネットで調べると、口で絵を描く協会みたいなのがあって、そういう方が結構いらっしゃって。
病院で入院中は何もやることがなくて。本当に暇で、気を紛らわすために何かに没頭してないと、本当に嫌なこととか、変なこととか考えてしまっていたんですよ。
口に鉛筆とかをくわえて画用紙に描いたり、明日はこんな絵描いてみようとか、明日はこういうストーリー考えてみようかなっていうところから徐々にすごく楽しくなっていって、笑顔になれたんですよね。それがすごく自分の生きがいにもなっていったんで。

滝川さんが見つけた生きる希望。それは、絵を描くことでした。

“一本の線”が生み出す力 自身の思いを絵本の中へ

滝川さんは、ペンを口にくわえて丁寧に線を描き、顔を左右に動かして色を塗っていきます。

滝川英治さん:
最初は、とにかく納得のいく1本の線を引くのに1時間ぐらいかかったりとか。色は1個1個塗っています。範囲が広いところだったら簡単に塗れますけど、細かいところだったら何回もやり直したりとか結構苦労しますけどね。

1日のうち、絵を描ける時間は5時間ほど。
ストーリーの発案から出版社への売り込みまで、ほとんどすべてのことを滝川さんが自ら行い、事故から約4年がたった2021年8月、ついにデビュー作となる絵本を発売しました。
制作期間は実に2年以上。そのモチーフは、滝川さん自身です。

滝川英治さん:
(転倒事故の後)目覚めた時が、もう仕事関係者とか家族とかが居たんですけど、ICUで。
その時に、もう場が騒然としてたというか、母親の涙であったり、その騒然とした空気に耐えられなくて、なんか自分が悲しいとか考える余裕もなくて。
やっぱり、母親を悲しませてしまったけれども悲しませたくないっていう、その空気を一変させるために、たとえ歩けなくなったとしてもこんな事も出来るよ、ああいうこともできるよ、だから大丈夫だよ。笑ってれば大丈夫だよっていうことを言ってたんですよね。

絵本にちりばめられた前向きな言葉は、滝川さん自身の経験から湧き出た思いでした。

新たな夢へ・・・滝川さんの挑戦は続く

過酷なリハビリを乗り越えて、少しずつ前へ進んできた滝川さん。事故直後にICUで、ある夢を見たといいます。

滝川英治さん:
なんか見えたんですよね。自分が絵を描いている姿であったり、なんかね、もうその時点で、パラリンピックで何かしら自分がやっている姿とかが見えたんですよ。

2021年8月に行われたパラリンピック開会式で、滝川さんの夢は現実のものとなりました。

Q. 今後の展望や夢はありますか?
滝川英治さん:
めちゃくちゃありますよ。
もちろん絵を描いていく、これからも描き続けたいというのもありますけど、やっぱり歩くっていう自分の足で歩くっていう、大きな夢はもちろんありますし、あと僕、俳優引退したつもりもなくて、それがどういう形かわからないですけど、やっぱりまたね、お芝居をしたいなっていう目標はありますね。

4年前、絶望の淵で見つけた「絵を描く」という生きがい。
前を向き、新たな道を歩む滝川さん。そんな絵本の最後の1ページには・・・・・・

誰にだって無限の可能性がある。
滝川さんのそんな思いが込められているように感じます。

(「めざまし8」9月14日放送)