デルタ株の急速な拡大に医療機関は危機感を募らせている。
現在広がりつつある第5波が医療現場にどのような影響を与えているのか。 特別に取材が許されたコロナ病棟の現状だ。

入院患者が急増…「第4波」と「第5波」の違いは?

看護師:
調子はどうですか、息苦しさとか?

入院患者:
動くとすぐ酸素濃度が下がってきたりしますね

新型コロナウイルスの感染者が入院する札幌市手稲区の手稲渓仁会病院。8月に入って、状況が深刻化している。

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手稲渓仁会病院・奈良理副院長:
決して対策に慣れてしまったから感染が広がっているのではなくて、同じ対策をしていてもウイルス自体の感染力が強くなっている

第5波に見舞われたコロナ病棟で一体何が起こっているのだろうか?
緑、黄、オレンジ、赤とテープで区画が分かれている。

アラーム音が鳴る機械も。

看護師:
サチュレーション(酸素飽和度)が低くなっているので鳴りました。早期に患者の異常が発見できるように、モニターをつけています

8月19日現在、36床の病床のうち20床が埋まっている。

看護師:
患者がうつぶせで寝ることによって肺の換気がよくなるので、治療の一環としてやってもらっている。もともと症状が重かった。入院当初は中等症で、少しずつ良くなっている

回復する人がいる一方で…

看護師:
高濃度の酸素が必要な肺の状態なので、部屋で自分で動けるように酸素のチューブを長くしている。酸素が欠かせない患者は多いです

ワクチンの効果が見られ重症患者はいないが、8月に入って入院患者が急激に増えた。
北海道内で1日700人を超える感染者が出た第4波と、現在の第5波とは何が違うのだろうか?

手稲渓仁会病院・奈良理副院長:
年齢層が違います。第4波の時は圧倒的に70歳以上が多かったんですけれど、現在は50代を中心とした患者の入院が増えています。
介護を要する人が少ないので、医療者の負担は前回より少ないことになりますが、この状態で感染者が増えると再び通常医療を制限しないといけない

「患者の移動」だけでも注意が必要

医療ひっ迫ギリギリの状態で新型コロナウイルスとの戦いは長引いていて、医療現場は疲弊している。
症状が改善した患者が軽症用の病棟に移動する際も…。カバーがついた車いすに30~40代くらいの患者が乗って出てきた。

看護師は防護服を着用し、細心の注意を払う。単純な移動だけでも大変な作業となる。

看護師:
10回くらい防護服を着替えます。もう慣れている部分もあるんですけれど

第5波の感染拡大が止まらない。医療現場は危機感を募らせている。

医療現場に漂う「危機感」…感染の低年齢化で課題も

手稲渓仁会病院・奈良理副院長:
なぜ感染者数が増えると重症度が低くても大変かというと、医療を受けられるタイミングが遅れてしまうから。早期の治療で重症化を防げたはずが、重症になってしまう

手稲渓仁会病院・奈良理副院長:
小学校低学年や幼児の感染者が増えると、両親も感染して入院が必要となる。すると、どこで子どもの面倒をみるかということが問題になる。症状がなくても預かってくれる施設がない。その結果、病院でつきっきりになってしまうので、そこに医療者が必要になる

子どもの感染者が増えると、その世話をするスタッフが必要となる。第4波のときに高齢者を介護したのと同じような負担が強いられるのだ。
これ以上の感染拡大を、何としても食い止めなければならない。

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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