名古屋出入国在留管理局に収容中のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が死亡した問題で、野党の国会議員の有志らでつくる「難民問題に関する議員懇談会」(会長・石橋通宏参院議員)が8月13日、国会内で開かれた。参加したウィシュマさんの遺族らは、施設での様子が記録された監視カメラの映像と入管の報告書の内容が食い違っているとして、改めて映像の全てを公開するよう求めた。

ウィシュマ・サンダマリさんは、3月6日、不法滞在で収容されていた名古屋出入国在留管理局の施設内で死亡した。出入国在留管理庁は8月10日、ウィシュマさんが医療機関での診察を求めても現場の職員が必要ないと判断するなど、医療体制が不十分だったことや職員の不適切な発言があったとする調査報告書を公表し、8月12日に遺族に対して施設での様子が記録された監視カメラ映像の一部を開示した。

「なぜビデオと報告書が全然違うのですか」

しかし、ウィシュマさんの妹ポールニマさん(27)は、国会内で行われた会合で、一部が開示された監視カメラの映像と報告書の内容が食い違っていると語気を強めた。

ウィシュマさんの妹ポールニマさん(27):
なぜビデオと報告書が全然違うのですか。入管側もビデオを見ているなら、嘘みたいなこと、知らなかった、と言うのはやめてほしいです。

ウィシュマさんの妹ポールニマさんは全ての映像公開を求めた
ウィシュマさんの妹ポールニマさんは全ての映像公開を求めた
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ポールニマさんによると、開示された監視カメラ映像では、ウィシュマさんは、死亡する11日前の2月23日、体調不良を訴え嘔吐。看守にジェスチャーを交え、「I'll be drips」「Saline」などと、英語で生理食塩水の点滴を求めていたという。

出入国在留管理庁の報告書では、看守は「今すぐに病院に行くのは難しい、病院に行くことが決まったらすぐに知らせるなどと答え」「『セーラインやって』と言ったのに対しては、その意味を理解できず、分からないなどと答えた」との記載がある。

遺族側は、ウィシュマさんの言葉はわからなくても、ジェスチャーを見れば点滴を求めていることは容易にわかるはずだなどとして、映像と報告書の内容に食い違いがあると指摘した。

ウィシュマさんは、看守にジェスチャーを交え、英語で点滴を求めていたという
ウィシュマさんは、看守にジェスチャーを交え、英語で点滴を求めていたという

開示された映像は、ウィシュマさんが亡くなるまでの約2週間分を約2時間に編集したもので、ポールニマさんは真実を明らかにするためにも「映像の全てを公開して、日本にいる全ての外国人や日本人に見てほしい」と訴えた。

「死亡との因果関係は断定できない」

出入国在留管理庁の丸山秀治出入国管理部長は、「職員が言葉を理解できていなかった」とした上で、「入管の対応に問題があったが、死亡との因果関係は断定できない」と述べるにとどめた。また、岡本章警備課長は、ウィシュマさんが死亡する5日前の3月1日、衰弱してカフェオレを飲み込めず、鼻から噴き出したことについて、看守が「鼻から牛乳や」「このネタ分かるかな」などと、不適切な発言があったと認め、陳謝した。

丸山秀治出入国管理部長「死亡との因果関係は断定できない」
丸山秀治出入国管理部長「死亡との因果関係は断定できない」

ウィシュマさんの映像をめぐっては、野党側は国会で開示を求めているのに対し、政府・与党側は難色を示していて、今後の対応が注目される。

伊藤聖
伊藤聖

フジテレビ 報道局 政治部

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