飲酒運転で事故を起こし、後遺症で麻痺が残り両手が使えなくなった男性がいる。男性は「俺みたいになるな」とメッセージを掲げて自らの体験を講演で語るなど、飲酒運転の根絶に向け活動している。

飲酒運転事故の代償…両手が使えない状態に

飲酒運転で単独事故を起こした宮城恵輔(37)さん。

宮城さんは16年前、沖縄県北谷町のクラブで友人らと酒を飲んだにもかかわらずオートバイを運転して帰宅。その途中で事故を起こした。

飲酒運転で事故を起こした宮城恵輔さん (37)
飲酒運転で事故を起こした宮城恵輔さん (37)
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宮城恵輔さん:
向うから来ると緩やかな右カーブになっているんですけど、当時は酔っぱらっているので右カーブを曲がり切れずに直進してしまって、そのまま左側に(乗り上げてしまった)。何でこんなところで、という気持ちにはなりますよね

事故から1週間後に意識を取り戻し、なんとか一命をとりとめたものの後遺症で身体には麻痺が残り、両手が使えない状態になった。

宮城恵輔さん:
事故の時に右肩も断裂していて。右肩は神経を切って、右腕はもう全部使えないって感じですね。僕は手が使えないので、何をするにも人の手が必要なんですよ。そうなった時にトイレの介助とかをお願いしないといけないのが一番相手にも負担だし、そのあたりはやっぱりこっちも気をつかいますね

「収入もない、嫁と子供も育てられない」と離婚へ

若くして介護が必要になった宮城さん。事故の3カ月前には娘も授かり、一家の大黒柱として幸せな家庭を築いていくはずだった。

宮城恵輔さん:
僕は収入もないし嫁と子を育てていく能力がないな、このまま一緒にいさせても幸せにできないなと思ったので…。新しい旦那さんを本当のお父さんだと思ってくれたら良いなという気持ちで、離婚に踏み切ったという形ですかね

沖縄県における飲酒運転検挙件数は全国平均5倍超

一度の過ちが取り返しのつかない事態を招く飲酒運転。

2020年の沖縄県内での検挙件数は、全国で一番多かった2019年に比べ3分の2に減少した。新型コロナの影響により、外で飲む機会が減ったことが関係したとみられる。

それでもその数は全国で2番目に多く、人口1000人あたりに換算すると全国平均の実に5.4倍となっている。

2020年までの過去5年間の県内での検挙件数は9696件。

時間帯でみると、午前6時から9時までの3時間での検挙数が全体の約25%を占めている。朝の出勤時間帯などに二日酔いの状態で運転している実態が伺える。

一方、検挙された人への聞き取りでは、飲酒運転をした理由として「飲酒量が少なかったので大丈夫だと思った」「(これくらいでは)警察に捕まらないと思った」と答えている人が全体の7割近くを占めていて、飲酒運転への認識の甘さが浮き彫りとなっている。

宮城さんも飲酒運転で事故を起こした当時は、考えが浅はかだったと話す。

宮城恵輔さん:
(飲酒運転を)そこまで重くは捉えていなかったです。同じ過ちを犯す人を減らしたいと、当事者として県警と一緒に飲酒運転根絶アドバイザーとして活動することを決めた。

飲酒運転根絶アドバイザーととして活動する宮城さん(2015年)
飲酒運転根絶アドバイザーととして活動する宮城さん(2015年)

宮城恵輔さん:
飲酒運転をしてこういう身体になったよという人は、多いか少ないかでいうと少ないわけじゃないです。その中で生き残った命だし、それを伝えていってそういう人を出さないという責任があると思ったし、やっぱり社会の一員として自分も役に立ちたいっていう思いがありましたね

自身の過ちを悔いる日々を過ごす中、見つけた新たな夢

7月7日、「俺みたいになるな」というメッセージを掲げ、沖縄県立前原高校で飲酒運転根絶に向け自身の体験を語った。

宮城恵輔さん:
ニュースで見る飲酒運転の事故は他人事、事故を起こすやつは運が悪いだけ。俺は事故らない、捕まらない。ルールなんて気にしないと思っていました。こんな僕になってしまったのは、紛れもなく考えなさ過ぎた、浅はかな僕の結果です。

2021年7月 高校での講演
2021年7月 高校での講演

宮城恵輔さん:
今日の僕の話で皆さん自身がルールを破ることなく、僕の話を思い出して思いとどまってくれれば幸いです。一緒に飲酒運転を根絶させましょう

前原高校3年生・福原芽衣さん:
生の声を聞いて、自分自身を守るためにも、自分の将来や好きなことを好きなだけ、人生を楽しめるようにするためにも、飲酒運転をするのはいけないと思いました

前原高校3年生・小林愛紀さん:
こういう目にあったからダメなんだということを、私たち高校生の間でも伝えていけたら良いなと思っています

 
 

宮城さんは自身の過ちを悔いる日々を過ごす中、ひとつの夢を見つけた。

宮城恵輔さん:
障がい者の宮城恵輔としての夢があってですね。僕は今アーティストとして活動していて、それが何かしら成功することで後世の障がい者、またはその家族に勇気や希望を与えられるんじゃないかと思って。僕はこのアーティストで活動していこうっていう気持ちで絵を描いています

宮城さんの作品
宮城さんの作品

人生に新たな希望を見出す一方で、飲酒運転の根絶に向けて取り組みを続ける決意だ。

宮城恵輔さん:
僕のことが記憶の片隅にあってくれたら、そういうのも多少は食い止められるのかなという気持ちですね。そういうのを伝えたいと思います

車が時に自分や他人の人生を台無しにする凶器になることを意識し、ルールを守って運転する心がけが大切なことは言うまでもない。

(沖縄テレビ)

沖縄テレビ
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