よーし、頑張れ!美諭!」手には写真が貼られた手作りのうちわとバルーン、そして首には名前が書かれたタオルを巻いて応援する男性は、テコンドー・山田美諭選手の父・啓悟さん(55)だ。無観客開催となり、会場近くのホテルで声援を送った。

山田選手は父親が開く道場で3歳から空手を始めたが、父親のすすめで中学一年の頃からテコンドーに転向したという。練習は週4日。夜9時まで続くこともあったというが、休むことなく練習に打ち込み、それ以外の時間は父親の道場で空手の指導の手伝いをしていたという。

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おっとりとして優しい性格の山田選手。だが、練習が始まると一気に勝負師の顔に変貌する。

「試合の時はきりっとした顔だけど、普段は・・・こんなほわ~とした感じ。全く怒らないですよ。逆にこれ片付けなさいって怒られてますよ(笑)」

試合では、自分よりも体格が大きい男の子相手でも強気で挑む、負けず嫌いな子だったと啓悟さんは語る。

準決勝で惜しくも敗れた山田美諭選手。父は山田家のラインにメッセージを入れた。
『最後まであきらめなかった。誇らしいよ』と絵文字をつけながら娘を賞賛する父。
その12分後に山田選手から『切り替えて頑張る」との返事がきていた。

「よしいくぞ!美諭」

メダルを懸けた3位決定戦。「よしいくぞ!美諭」
試合が始まり、嬉しそうにテレビで観戦する父の声がホテルの部屋に響く。直接声を届けたかった、と悔しそうに語っていた父。場所は離れていても心は一つ。目の前に山田選手がいるかのように優しく、力強い声でエールを送る。

セルビアのティヤナ・ボグダノビッチ選手(23)が有利になると、時折険しい表情を見せる。点を先取された時は手に握られた応援用のバルーンをたたき、「集中!」と声をかけた。

その後第三ラウンドで中段・上段とダブルで攻撃を受け点差が広がってしまう。結果は6-20で敗退。マスクで隠れていても伝わる悔しい表情。でも優しいまなざしで誇らしげに娘を称えていた。「よくやった、よくやったよ」退場する山田選手が映る画面を見つめながら拍手する。

「五輪までいって、逃げずに戦っていた。4位ってすごいですよ、自慢します」「きょうは楽しかった、娘がやっていたことはすごいことなんだな」と嬉しそうだった。

父にテコンドーの道へと導かれ、周囲に支えられながら初の夢の大舞台を勝ち取った山田選手。メダルにはあと一歩届かなかったが、多くの人に感動と勇気を与えたことは間違いない。

最後に父はこう言った。「今日は1日楽しかった!美諭、ありがとう。娘は宝物だし家族としても誇らしい」

(執筆:FNN五輪取材団 長島理紗)