7月23日に開会式を迎える東京オリンピックだが、選手村ではPCR検査で新型コロナ陽性者が相次いでいる。果たしてオリンピックの感染対策は大丈夫なのか。

BSフジLIVE「プライムニュース」では、大会の警備責任者をはじめ感染対策についての識者を迎え、感染対策の課題、安心安全な大会を実現するための方策について議論した。

現時点でバブルは機能している。市中のほうが感染危険度は高い

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新美有加キャスター:
東京オリンピックにおける感染対策。選手や大会関係者、メディア関係者らは、出国前96時間以内に2回の検査を行い陰性を確認、日本での行動計画書を提出。その後も検査を行って陰性を確認。また、スマートフォンに追跡アプリのダウンロードも求められます。選手村では原則毎日検査を行い、移動は専用車両で。選手らを泡で包むような方式をとることから「バブル方式」とも呼ばれています。しかし、選手村に滞在中だったサッカー男子南アフリカ代表の選手などから陽性者が出ています。

米村敏朗 元内閣危機管理監:
バブル方式は非常に重要。世界的パンデミックの中、特別な形で入国・活動してもらう。その人たちが一般の国民と自由に触れ合うのはよくないということ。7月1日から21日までの検査結果で、日本到着時に空港で検査した結果の陽性率は0.06%。その後、選手村で行われた大会組織委員会によるスクリーニングテストでの陽性率は0.02%。つまり1万人に2人。
早期の発見と隔離は、現状ではしっかりできている。濃厚接触者もルールに則ってしっかり確保し、経過観察している。現状においてバブルは決して崩壊しているわけではない。

米村敏朗 元内閣危機管理監
米村敏朗 元内閣危機管理監

反町理キャスター:
海外から来る人に関しての安全性は、かなり証明されていると見ていいのか。選手村の方がクリーンで、市中の方が感染する危険度が高いという実態があまり知られていないのでは。

佐藤正久 自民党外交部会長:
国民の安全が最優先で、その上での五輪。ルールを守らない人が必ずいますから、いかに徹底させるか。またおかしなルールもあり、直していかなければいけない。例えば、濃厚接触者の予備待機場所は空港。しかし、仮に選手が空港で陽性になれば選手村の発熱外来に行く。これはおかしい。一番クリーンゾーンとしておかないといけないのが選手村なのに。改善を求めている。

松本哲哉 国際医療福祉大学 感染症学講座 主任教授:
細かいことをいえばもちろん穴はあるのだろうが、検査が徹底され、バブルの中の陽性率は低く抑えられている。バブル外の方が広がっている。
ある国の選手団に随行した医師から間接的に聞いた話では、自分たちはホテルにおり、必要なものはホテル内のコンビニで買う。しかしそのコンビニには、ホテル外からもいっぱい人が来ている。これは大丈夫なのかという懸念。出国前に3回も検査もし、入国後もずっと検査を受けている。ずっと陰性で、それでも自分たちが感染するのなら、決して持ち込んだわけではないことをわかってほしいと。

「15分ルール」は解釈に誤解があった…違反には厳格に対処していく

新美有加キャスター:
バブルの外に滞在する大会やメディア関係者の宿泊先に、特例として掲示された内容が以下です。「入国から14日間経過していないので、外出簿にルームナンバーと出発時間を記載してください。お戻りになりましたら戻り時間を記載してください。15分以内に戻るようにお願いします」。いわゆる15分ルールと呼ばれるもの。野党から強い批判があり見直される方向です。

米村敏朗 元内閣危機管理監:
ホテルの関係者で入国14日以内の人は、基本的にはあちこち勝手に行くなという話。どうしても必要な場合は、あらかじめ行動計画に書いてもらう。ただ実際問題として、メディアの人を中心に早朝や深夜の食事の問題があった。近くのコンビニに弁当を買いに行く程度のことについて、濃厚接触を避ける形ならばなんとかならないかという発想。

反町理キャスター:
濃厚接触の定義。プレイブックによると、陽性が確認された人と「マスクなし・1メートル以内で・15分間以上接触」した場合は濃厚接触者となる。

佐藤正久 自民党外交部会長:
この外出についての「15分ルール」は勘違いで、原則と例外が逆転してしまった。外からの取り寄せかホテルの中での食事が原則。ただ夜遅くなど、例外的に15分以内であれば外出してもいいというもの。それが逆転してしまい、あたかもこれが原則的にOKのような形でホテルに貼り出されてしまった。

反町理キャスター:
バブルの中のほうがクリーンで外の方が感染率が高いという状況の中においては、これを特例として認めたところで、リスクを負うのは外出する人の方ですよね。

佐藤正久 自民党外交部会長:
プレイブックのイメージは、コンビニに行くとしても大会関係者が同行して他の人と接触しないようにというもの。ルールを作った以上は守らせるのが政府の責任。

佐藤正久 自民党外交部会長
佐藤正久 自民党外交部会長

米村敏朗 元内閣危機管理監:
24時間いつでも帯同して監視しなきゃダメだと。これは大変なルール。

反町理キャスター:
ただ、今ここで議論しているのは選手ではなくメディアや関係者、優先順位が一段低い人たちについて。選手と触れ合う人たちだから仕方ないにしても、どこまで厳格に対応したらいいのか。

米村敏朗 元内閣危機管理監:
選手は自分の競技が大事ですから、ルールに従います。問題は他の関係者。プレイブックを読んでいないとかいう人も出てきた。プレイブックというのは、人が人を管理するためのものではなく、その人が自分を管理するためのもの。しっかり理解して守ってほしい。

反町理キャスター:
ルール違反への罰則として、参加資格を剥奪するところまで書いてある。国外退去に等しいニュアンス。明らかにルール違反をしていると思われる人が、メディアの取材やインタビューで何人か出ています。今朝入国したと言って外を歩いている。参加資格の剥奪になった例はまだないですよね。ルールの実効性が、今まさに問われているのでは。

米村敏朗 元内閣危機管理監:
必要なときはやったほうがいい。ルール違反は言語道断。今のところ尻尾を掴んだ分について言えば、入国後14日を過ぎている。ただ14日過ぎても、観光ビザではないわけだから、あちこち行ってよいというわけではない。
「不信と不安」か、それとも「信頼と思いやり」なのかというと、オリンピックのルールでは信頼が一番重要。それはそれとして、違反があれば徹底的にやるということ。

強制的な行動抑制はできない。感染を恐れない若い世代に呼びかけ続けるほかなし

新美有加キャスター:
東京オリンピックに対する懸念として、バブルの外の日本社会の感染拡大が広がらないかという点。2018年サッカーのワールドカップロシア大会で、強豪コロンビアに日本代表が勝利したときの東京・渋谷は、満員電車のような人の多さでした。このような状況になった場合、やはり感染が広がるのでは。

松本哲哉 国際医療福祉大学 感染症学講座 主任教授:
外来で陽性だった人を診ていても、20代など感染に対する怖さが全然ない人たちがそこそこいる。どうしても若い世代の人たちが盛り上がれば、感染は広がり得るとは思います。

反町理キャスター:
緊急事態宣言も出ていて、これだけ状況が緊迫している中で開かれるオリンピック。しかし、人が集まることの抑制は強制的にはできない?

米村敏朗 元内閣危機管理監:
できません。好きな言葉ではないが、警察権力をもってしてもできない。呼びかけるしかない。

佐藤正久 自民党外交部会長:
もしサッカーで日本代表が決勝戦に行けば、会場周辺には相当集まる。だが、憲法で移動の自由が認められている。非常に難しい問題だが、行動の抑制をお願いするしかない。

重症者や死者が増えなくとも医療への負担は増す。楽観視はできない

反町理キャスター:
病床使用率について。確かに、ワクチン接種の拡大によって重症者や死者の数は急増してはいないが、病床使用率全体から見ると、新規感染者が増えると使用率も急上昇している。今の勢いで推移したときに、例えば1日に2500〜3000人という東京の感染者数は視野に入っていますか。

松本哲哉 国際医療福祉大学 感染症学講座 主任教授:
この状況で増えていけば、少なくとも2500人にはなり、3000までいくかもしれない。その中にはもちろん軽症者もかなりいます。重症者や亡くなられる方はそう多くはない。
しかし、そうは言っても病院の負担としては結局ベッドは埋まっていき、ホテル療養が増え、結局は自宅療養をせざるを得ない人たちが増えてくるのが目に見えている。

松本哲哉 国際医療福祉大学 感染症学講座 主任教授
松本哲哉 国際医療福祉大学 感染症学講座 主任教授

反町理キャスター:
重症者や死者が増えていないから日本の医療はまだ崩壊しない、とも言われるが。安心していいわけではない? 

松本哲哉 国際医療福祉大学 感染症学講座 主任教授:
病院がほとんどコロナの患者さんで埋まっているが、重症者はゼロということはあり得る。重症者はいなくとも病院は大変。これから2500〜3000人の感染者が毎日出るような状況になれば、病院側が本当に必要な人たちだけを全て受け止められるキャパシティは、今はないと思う。

BSフジLIVE「プライムニュース」7月21日放送