“街のシンボル”のホタル
コロナ禍の影響で、ホタルの名所の多くが大々的なイベントを自粛している。そんな中、豪雨で激減したホタルを増やし、“灯”を未来につなげようと活動している女性がいる。
福岡・八女市上陽町。町内を流れる星野川は、清流として広く知られている。
この記事の画像(14枚)その流れの傍にたたずむのは、「ほたると石橋の館」だ。
館長を務めるのは、内田理絵さん。
内田さんが最近の日課にしているのは…
ほたると石橋の館・内田理絵館長:
産んでくれてます。ここのガーゼの黄色い部分、丸い粒々が見えるのがホタルの卵です。毎朝来て、楽しみに見てます
ホタルが産んだ卵を確認する内田さん。ホタルは、一晩かけて500個から1,000個の卵を産む。
星野川のすぐ側、ホタルが産卵するせせらぎ水路。
ほたると石橋の館・内田理絵館長:
食欲旺盛なカワニナたちです
巻貝の一種「カワニナ」は、ホタルの幼虫の食べ物。キャベツの芯だけ残し、順調に育つカワニナに、内田さんは満足げな様子だった。
ほたると石橋の館・内田理絵館長:
ホタルは、星野川に架かる石橋に並んで、上陽のシンボルだと思う。たくさん飛んでくれていると、うれしくなりますね
2012年の豪雨で生息数が激減
15年ほど前、星野川の夜の風景を映した1枚の写真。数えきれないほどのホタルが光を身にまとい、乱舞している。
しかし、9年前にこの地を襲った出来事をきっかけに、初夏の風景は一変してしまった。
2012年7月、九州北部を襲った豪雨。ホタルが住む星野川も氾濫し、せせらぎ水路にも濁流が流れ込んだ。
ほたると石橋の館・内田理絵館長:
水が枯れてしまったような状態で、ホタルを全く見ることができなかった
街のシンボルのホタルは、豪雨で激減した。
増え始めたホタル…子どもたちと復活に取り組む
かつての風景を取り戻そうと、豪雨の翌年に結成されたのが「上陽ほたるの会」だった。
内田さんも事務局長として携わり、地元の小学校にも幼虫を育ててもらうなど、子どもたちも巻き込んでホタルの復活に取り組んできた。
そして…午後8時前、暗闇に浮かぶ淡く優しいホタルの光。
豪雨の前ほどには及ばないものの、幼虫の世話をしてきた児童がすぐに見つけられるほど、その数は着実に増え始めた。
ホタルを見に来た子ども:
ホタルいた
子どもの母親:
「育ててくれて、ありがとう」ってきてくれよるよ
ほたると石橋の館・内田理絵館長:
続けていくことは簡単なようで難しいと思うが、将来、また上陽にずっとホタルが飛び続けるように、みんなで頑張っていきたいと思います
少しずつ戻り始めた上陽町のホタルの光。
内田さんたちの思いに応えるように、その光は静かに輝き続ける。
(テレビ西日本)