「医療現場のリアルな姿を伝えて」
鹿児島県内の新型コロナウイルスの感染者の増加とともに、病床占有率は高止まりを続けている。コロナ患者を受け入れる鹿児島市の民間病院から特別に許可を受け、新型コロナの対応にあたる病棟を取材した。
5月15日、鹿児島市の米盛病院の駐車場にできた車列は、ドライブスルーによるPCR検査だ。

鹿児島市保健所からの委託を受けて、感染者の接触者を検査する。2020年3月からこの病院で検査した人は、1万5,000人を超える。

この日は80人が検査を受けたが、ここ最近では少ない方だという。
米盛病院 PCR検査担当・松木薗和也医師:
ゴールデンウィーク中は、180人とか連日(PCR検査を)やっていた

「医療現場のリアルな姿を伝えてほしい」。今回、病院から特別な許可を受けて、新型コロナ重点病棟にカメラが入った。

この病院では、2020年7月からコロナ患者の受け入れを始めた。病棟では医師1人、看護師24人が、24時間体制で対応にあたっている。
感染防止のため設けられた仮設の壁にあるレッドゾーンの文字。この扉の向こうにコロナ患者の病床がある。

このゾーンには、二重マスクに手袋、そして防護服を着なければ入ることができない。
これまでコロナ患者を受け入れる病床は14床だったが、感染者の急増を受けて、5月11日から受け入れ病床を22床に増やした。

肺に“すりガラス”状の白い影
取材中に、新たな入院患者が救急車で運ばれてきた。

患者は、ホテル療養中に容体が悪化し、肺炎が進行していた。CT画像には、白い影のようなものが映っている。
米盛病院 新型コロナ重点病棟・伊藤寿樹医師:
白いもの(影)が出ている。これが、コロナの肺炎に典型的と言われている“すりガラス”

この病棟では、4月末時点で累計71人のコロナ患者を受け入れているが、担当者は、患者の容体の進行具合に明らかな変化を感じている。
米盛病院 新型コロナ重点病棟・野上拓也副看護部長:
入院してきて、すぐ酸素投与しないといけない。点滴を始める必要がある。2020年は、あまりそんなことはなかった。作業量は増えている

「いつまで続くのか」…本音がこぼれることも
病室に食事を運ぶのも一苦労だ。感染リスクを抑えるため、配膳車は使わず、1人分ずつレッドゾーンに食事を手渡す。

さらに、レッドゾーンで使った書類や医療機器は 特殊な機械で消毒する。
分厚い防護服に、二重のマスク。患者の処置を終えた看護師の額は、汗でびっしょりとぬれていた。

看護師:
息もできなくなったり、汗でゴーグルもぬれて、視界も見えなくなったり。患者さんもみんなバラバラで、ナースコールで呼んだりするので、その都度 防護服などを着たり脱いだりして、レッドゾーンに入るのは負担。患者が増え続けたら、病院やホテルがどうなるのか、先が見えないので心配

感染リスクを徹底的に排除した上で、患者と向き合う日々だ。
米盛病院 新型コロナ重点病棟・野上拓也副看護部長:
コロナ重点病棟を立ち上げる時に、「頑張ります」と自分の気持ちで集まってくれた人たちが中心。「もうできません」というのは言えないが、みんな心では、「いつまで続くんだろう」とか、「もっと大変になったら、やっていけるのかな」、「持ちこたえられるのかなあ」とか、ぽろっと本音がこぼれたりしている

感染者が急増する鹿児島。そこには、医療の最前線に立つ人々の切実な叫びがあった。
(鹿児島テレビ)