秋田県大館市から、福島県南相馬市に贈呈された生後3カ月の秋田犬。有害鳥獣対策にも一役買っているこの犬が、一度はバラバラになった住民をつなげている。

「大館」と「南相馬」から一文字取って…

三角の垂れた耳と、少し眠たそうな愛らしい瞳…。

ふわふわの秋田犬
ふわふわの秋田犬
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阿部加奈子記者:
生後3カ月ですが、すでにたくましく、毛はふわふわです。今後、この子が地域で活躍します

2021年4月に、秋田・大館市から、福島・南相馬市に贈呈された秋田犬。名前は、大館と南相馬から一文字ずつ取って「大馬(だいま)」だ。

提供:南相馬市
提供:南相馬市

避難指示解除からもうすぐ5年。人口は、東日本大震災前の3割という南相馬市小高区。
4歳の秋田犬「サンボ」と一緒に、一度はバラバラになった住民をつなげている。

4歳の「サンボ」と一緒に散歩する大馬
4歳の「サンボ」と一緒に散歩する大馬

ニックネームは「ランボー」 有害獣を追い払う

しかし、大馬には、もう1つの大きな役割が…。

住民:
イノシシが来ないんだったら、越したことないですね

「大馬」のニックネームは、「ランボー」。その名が表すように、実は、有害鳥獣対策にも一役買っている。

飼い主の鈴木延夫さんは、動物行動学などの専門家だ。

1日に1回の散歩。実は…。

鈴木延夫さん:
大周りするだけでも、2時間近くかかります。それが、くもの巣状にできていますので

鈴木さんによると、尿などでマーキングをすることで、獣を寄せ付けないようにする効果が期待できるという。

住民が減ったことで、イノシシなどによる農作物被害が深刻な旧避難区域。

住民:
たのもしいですね。ああいうのがいてくれると

鈴木延夫さん:
戻ってよかったと思えるような、この犬たちを養育して、その土台になってあげたいな

有害獣を追い払う「大馬(だいま)」の活躍は、住民の「ただいま」を後押しするかもしれない。

癒やしだけじゃない! 有害鳥獣対策に秋田犬

福島・南相馬市は、有害鳥獣ハザードマップをまとめていて、小高区では、イノシシやタヌキ、ハクビシンなど、有害鳥獣被害が続いている。

南相馬市がまとめた有害鳥獣ハザードマップ
南相馬市がまとめた有害鳥獣ハザードマップ

犬の効果について、広島・福山市の境界守本舗の清水社長は、「うちでは、猟犬を使ってイノシシや鹿を追い払うビジネスをしています」と話す。

猟犬で追い払い、犬が通った道に臭いが残るので、野生動物は、「敵がいるのでは?」と錯覚して近づかないという。

そして秋田犬は、狩猟犬の遺伝子を継ぐ犬種で、野生動物も本能的に怖がるという。

ちなみに、この広島の会社では、スゴい鳥獣対策をしていた。

農地などを囲むように地中にパイプを埋めて、そこからスズメバチの音や臭いだけで、野生動物が近づかなくなるという。
イノシシやシカ、カラスなど、ほぼ全ての有害鳥獣に効果があるとしている。

野生動物は、「ハチは刺す」、「刺されると痛い」と知っている。ツキノワグマでさえ、怖くて近づかないという。

JR東日本・千葉の内房線や、岩手の釜石駅などで導入していて、シカと列車の衝突事故が年間200件の岩手・JR山田線で実験を行ったところ、衝突はゼロになったという。

(福島テレビ)

福島テレビ
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