福島テレビの気象予報士・清野貴大が、あらゆる角度から気象にまつわるアレコレを楽しく深く解説。今回は、奇跡のバスと呼ばれる福島交通2054号車、通称・黒バンパーについて。どんな奇跡の物語があったのか?福島交通全面協力の下、このバスに迫った。
福島交通2054号車の歴史
福島交通2054号車は1991年式。高速バスタイプとして、福島交通最古参の車両だ。
2054号車がデビューした1991年は、東北新幹線が東京駅まで延伸。東京方面からの観光客が増加するなか、貸し切りバスとして運用が始まった。

2010年からは高速バスに転身。主に県内と仙台を結び、2013年からは郡山と福島空港を結ぶリムジンバスとして活躍していた。
黒バンパーを襲った水害
しかし、2019年。逢瀬川の近くにある福島交通郡山支社は、東日本台風によって浸水の被害に遭った。約160台あるバスのうち94台が水没し、廃車となった。
2054号車も屋根近くまで水に浸かり、もう走ることはできないと思われた。

福交整備郡山工場整備課の佐藤富春課長は「幸いに当時の2054は、今でいう機械式に近い電子制御が少ない車だった。中に入っている水などを抜いて作業すれば、エンジンの中がダメになるっていうことはないので、作業的には今の車より楽でした」と語る。
突如姿を消した2054号車を追う
まさに「奇跡」!不死鳥のごとく復活を遂げた2054号車だが、2023年に突然姿を消した。
SNS上では「いまも動いているのでしょうか?」「いまもいるのかな?」「福島交通のMS7(2054)も動いてないのか」と一部のバスマニアから廃車を心配する声も。

福島交通乗合営業課の千葉良彦さんは「福島県内でも珍しい車両、全国でも珍しい車両。福島交通と言えば三菱ふそうということで、全面リニューアルをして今回新たにみなさんに乗っていただくということになった」と話す。2054号車は1年半をかけて2025年7月に全面リニューアルを遂げていたのだ。
福島交通を象徴する三菱ふそう車両
バスに詳しい方はご存知だと思うが「ふそう大国」と呼ばれるほど、三菱ふそうの車が多かった昔の福島交通。

みちのりホールディングスの傘下に入り、「三菱ふそう」の車両が少なくなる中で、2054号車はバスマニアからも愛される福島交通を象徴するバスだったのだ。
バスマニア推しポイント 黒バンパー
では、どういう風にリニューアルされたのか?福島交通のバスマニアでもある千葉さんに紹介してもらった。

外観のポイントは、なんといっても「黒バンパー」だという。千葉さんは「バスマニア・バスファンの中で黒バンパーと愛称で親しまれるところの一部になります。元々ふそうの原型が黒バンパーで、原型を残しているのは全国唯一と言っても過言ではない」と説明する。
内装に残る平成の雰囲気
次に車両内を案内してもらった。走行メーターは65万7764キロと表示されているが、実は百万の位が足りないという。現在の走行距離は165万7764キロと地球・約41周分走っていることになる。走行距離からも、いかに活躍してきたか知ることができる。

フカフカの座席は、高級感のあるワインレッドを継承。車内にはシャンデリアなど平成初期のバブリーな雰囲気を残しつつ、電子決済が可能になるなど最新の機器を搭載した。
みんなの想いを乗せてこれからも
そして、この2054号車は福島交通の永久保存車となった。元運転士の国分義春さんは「やはり乗ってみたいっていうのがあった。すばらしい車です」と話し、車両整備課の富田賢一さんは「自分にとっては入社前から配属されていたバス。それから長い付き合いだったので自分にとっては先輩という感じで接しています」と話した。

また運行管理課の遠藤和孝さん「これからも末永く走り続けてください」と話し、福島交通乗合営業課の千葉良彦さんは「2054号車は私と同級生の車。同じ平成3年式ということで、復活してありがとうございます」と話した。
保存車両でも現役
現在は、郡山駅と福島空港を結ぶリムジンバスとして走っている2054号車。保存車両を一般の路線で走らせるのは全国でも珍しく、注目を浴びている。
再び台風や大雨で被害にあわないよう、福島交通郡山支社では比較的高いところに広い敷地のある工場と連携し、24時間雨量が150ミリを超えると予想される場合は、協議のうえで、バスを避難する計画を作っている。年に一度は実際にバスを避難させる訓練も行っているという。

お父さんお母さん世代には子どもの頃に乗った懐かしいバス、お子さん世代には珍しいバスということで、飛行機を眺めにレトロなバスで福島空港におでかけしてみては?
(福島テレビ)