わたしたちを夢の世界へと誘うサーカス。
コロナ禍で一時、公演の継続が危ぶまれたが、待ちわびた人に支えられ今、広島で笑顔を振りまいている。

鍛え上げられた名人芸。
世界各国から集う一流のアーティスト達が競演する「スーパー・ミラクル・イリュージョン」。

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年間動員数120万人を誇り、子どもから大人まで多くの観客を魅了するエンターテインメント集団「木下大サーカス」が、2021年広島で5年ぶりに公演している。

取締役・木下英樹さん:
入場前には、お客さまおひとりおひとりに検温をしていただいて、あとはソーシャルディスタンスと、ご連絡先のご記入をお願いさせていただいております

入場前に行う感染症対策だけでなく、ショーが行われる劇場内も徹底した対策で臨んでいる。

取締役・木下英樹さん:
ソーシャルディスタンスを設けまして、このような形で席の間隔を空けております。換気扇は、工業用の換気扇を34台。空調関係には、万全に注意をいたしております

そして、ひと公演ごとに団員がすべての座席を消毒。
安心してショーが楽しめるよう、万全の対策を心がけている。

約5カ月公演できない状態に…

その「木下大サーカス」も、2020年は創立以来、経験したことのない苦境に立たされた。

取締役・木下英樹さん:
去年の2月28日に小学校と中学校に休校の要請がありまして、その翌日からすぐに公演を中止いたしまして。次の公演地が金沢市に決まっていましたので、とりあえず金沢の方に移動。3日間だけ公演はできたんですけれども、すぐに中止になって、約5カ月ほど公演ができない状態が続いて

旗揚げは1902年・明治35年。
人びとに、夢と感動を与えるエンターテインメントとして、日本だけでなく世界中にその魅力を発信。1世紀以上の歴史を経て、世界三大サーカスの1つに数えられる地位へと進化を遂げた。

そうした中で起きた、新型コロナの感染拡大。
団員達はみな、日々鍛錬してきたその技を披露する場を失ってしまった。

入団21年目・中尾梨沙さん:
不安な気持ちでいっぱいだったんですが、練習をしないとどんどん自分の芸の質が下がってしまうので、自分との闘いですね。お客さまが観てくれた方が気持ち的に盛り上がるので練習も辛くないんですけど、でもやっておかないと自分の芸ができなくなってしまう…っていう恐怖の方が大きかったです

肩で支えた1本の竹。
そこをよじ登り、羽根を広げたように張り出したハシゴの上で絶妙なバランス芸をみせる「羽出しバシゴ」。

引退を決めた団員「最後の公演を観てほしい」

これを演じる、入団22年目のベテランアーティスト・服部健太さんは、今回の広島公演を最後に引退する事を決めている。

入団22年目・服部健太さん:
なんとなく決めたのは、2年くらい前ですかね。コロナのもっと前から徐々に考え出してて、でもそう思う中で「もしコロナでずっとできなかったら、このまま何も演技せずに終わっちゃうのかな」って。それはちょっと寂しいなと思いながら、またお客さまの前でできる時がくるということを信じて。もうそれしかないですよね

再び舞台に立てる日を信じ、練習を重ねてきたアーティストだけでなく、裏方も含め約70人の社員を抱える経営陣にとっても、収入が途絶える中で葛藤の日々が続いた。

クラウドファンディングで知った期待の「心」

取締役・木下英樹さん:
たくさんの動物たちもいますので、エサ代とかメンテナンスにかかる費用もございますし、もちろん大型のエアコンとか空調関係にもかなり費用がかかりますので、7月ぐらいにクラウドファンディングをやらせていただきまして

目標金額を1,000万円に設定し、挑戦したクラウドファンディング。その結果は、想像を遙かに上回るものだった。
1,796人もの支援者から集まったのは、3,076万円。
サーカスを愛する多くの人がいることを知り、団員一同、勇気をもらったという。

取締役・木下英樹さん:
「なくなってほしくない」とか、「小さい時にお爺ちゃんお婆ちゃんに連れていってもらって、あのバイクのショーを今でも覚えてるよ」とか。そういった昔の思い出と、「これから子どもたちを連れて行ってサーカスを楽しみたい」というようなたくさんの応援メッセージがありまして、「あぁ、これはどうしてもなくしてはいけないな」と

誰もが辛い状況に置かれたコロナ禍で、自分たちのステージを待ってくれている人がいる…その想いを胸に、徹底した対策を取りながら2020年8月に公演を再開。
4月に始まった広島公演も、連日、楽しみにしていた人たちが訪れている。

お客さん:
5年ぶりに来たんですけど、楽しかったです。なかなかみんなで出る機会がなかったから、久しぶりに外出できて良かったです

子どものお客さん:
マジックがすごかった。中に人が入って、人が1回いなくなってまた出てくるところが面白かった

子どものお客さん:
あの、なんかさあ、あのぉ、お姉ちゃんと同じ!

応援してくれるすべての人に、最高のステージで恩返しをしたい。
創立119周年を迎えた「木下大サーカス」は、その進化を止めることなく、世界中に、笑顔と勇気、感動を与え続ける。

取締役・木下英樹さん:
ほんとに広島のこの地においては、すごく思い入れがある場所ですので、広島のみなさんにさらに元気を与えて、我々もみなさんの拍手でまた元気になれますので

入団21年目・中尾梨沙さん:
わたしはそんなに運動神経も良くないし、サーカスに向いてる人間なのかなと思うとちょっとわからないんですけれども、練習をすればしただけ自分の限界を越えられるんですよね。それを越えた時に、お客さんからたくさんの拍手をもらえるというのが、もう快感ですね

入団22年目・服部健太さん:
ラストになるので、楽しい空気を味わっていただけたらいいなと思います。こんな時期ですので、サーカスを観て元気になってください。観に来てください。お願いします

(テレビ新広島)