全国の小中学校で1人1台端末のGIGAスクールが今月から始まった。しかしその対応は自治体、学校でバラバラだ。現状と今後を取材した。

「市の備品なので自宅持ち帰りさせない」

「すべての学校に端末がそろうまで、端末の使用をさせない自治体がある」
「市の備品としての取り扱いを重視するあまり、自宅持ち帰りをさせない自治体が多い」

先週開かれた教育のICT活用に関する超党派議員連盟の会合で、経済産業省が提出した資料には学校などからの声としてこんな文言が並んでいた。

経産省が提出した資料には学校などの声が
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さらに資料によると、自治体の中には独自の情報セキュリティ規則により、検索や動画サイト、エドテック教材などへのアクセスを制限していたり、端末が故障したときの対応が明確になっていないのを理由に、学校が児童生徒に対して端末を自由に使わせないケースもあるという。

半数以上の自治体がゼロからのスタート

児童生徒に一人一台の端末整備を目指すGIGAスクール構想。文科省によると、全国の自治体1千812のうち、97.6%が端末の納品を2021年3月末までに完了し、校内ネットワークの整備では、すべての公立小中学校など3万2千228校のうち97.9%が4月末までに共用を開始する予定だ(※)。

(※)文科省2021年3月末時点の状況(速報値)

この数字だけ見ると現在全国のほぼすべての自治体・学校が、ICT教育の環境を整えたことになる。ただ注意したいのは、2020年12月の段階では端末が納品済みの自治体は2割程度で、2021年2月でも約半分程度だった。つまり半分の自治体が4月のスタートにギリギリ間に合った状態で、半数以上の自治体はこの4月にまさにゼロからのスタートとなる。

「学校や自治体によって様子が違う」

こうした状況について萩生田文科相は4月27日の閣議後会見で、「新学期が始まってまだ3週間なので、率直に申し上げて各学校や自治体によって様子が違うと思う」と認めつつ、こう語った。

「従前から一定程度の端末を持っていて慣れている学校と、今回初めて1人1台の環境が整ったという学校では、家庭等のルール作りなどを慎重に対応していると思います。学年によっても、例えば高学年でしたら持ち帰りをして様々な使い方をしてもいいと思いますが、低学年ですとルール作りからやっていかないといけない」

萩生田文科相「各学校や自治体によって様子が違うと思う」

戸惑っている学校の先生が多い

一方GIGAスクールでは児童生徒以上に大きな課題となるのが教える側だ。

議連に出された経産省の資料では、「教員用端末がないか、あっても職員室備え付けの古い機種」「端末トラブルで授業が進まない懸念から教員が使わなくなるおそれ」など問題点が指摘されている。

こうした指摘に対して超党派議連の会長である遠藤利明元オリパラ担当相はこう語る。

「やはり学校の先生がまだICT教育をどうすればいいのか、戸惑っている方も多いと思います。これまでやってきた先生はいいのですが、性急に進めようとするとこれからスタートする先生がICT教育を嫌になってしまう。もちろん全国一律にやってほしいのですが、無理をするとかえって教育現場が混乱するケースも出て前に進まなくなってしまう。ここは少し丁寧にやらないといけません」

遠藤元オリパラ担当相「無理をすると教育現場が混乱するケースも」

端末は“備品“でなく子どもたちの未来

萩生田文科相も「スモールステップで進みたい」と語る。

「理想の教育環境は整いつつありますが、運用面で『こんなはずじゃなかった』という様々な副作用が生じることは望ましいと思っておりません。そこはスモールステップで進みたいという基本的な姿勢を自治体とも共有しながら、しっかりできるところは前に進んでもらっても結構ですが、学内でルール作りを検討しているということであれば、それはそれで尊重したいなと思っています」

4月5月は先生たちにとって学級をまとめ上げる大切な時期だ。こうした中新たに加わったGIGAスクールとICTのルール作りに、筆者もその「負担の重さ」に先生たちに同情したくもなる。

ただ一方で「市の備品として持ち帰りをさせない」というのは本末転倒で、GIGAスクールが目指す教育をまったく理解していないと言わざるを得ない。

端末は「備品」ではなく、子どもたちの未来のツールなのだ。それが分からないのなら、どうか教育現場から退場して頂きたい。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】