経団連が指針改訂 トイレのハンドドライヤー利用再開へ

昨年5月から利用停止となっていたトイレのハンドドライヤーが、再び使えるようになりそうだ。4月13日に経団連が新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインの改訂版を発表した。
その中の変更点として、トイレのハンドドライヤー利用停止が削除されることになった。

そもそも経団連の2020年5月のガイドラインでは、「ハンドドライヤーは利用を止め、共通のタオルは禁止し、ペーパータオルを設置するか、従業員に個人用タオルを持参してもらう。」と明記されていた。

これが、今回の改訂版では、「ハンドドライヤー設備は、メンテナンスや清掃等の契約等を確認し、アルコール消毒その他適切な清掃方法により定期的に清掃されていることを確認する。」と書かれ、トイレのハンドドライヤーの利用停止は削除された。

これを受けて、経団連のトイレでは、ハンドドライヤーが4月13日正午過ぎに利用再開されている。

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再開の理由は、ハンドドライヤーの利用での感染リスクは極めて低いことが確認されたからだというが、一体どういうことなのか?そもそもなぜ、ハンドドライヤーは利用停止となっていたのか?
経団連ソーシャル・コミュニケーション本部長の正木義久さんに詳しく話を聞いた。

経団連ソーシャル・コミュニケーション本部長 正木 義久さん

「やっと利用できるようになった」という声も

――ハンドドライヤー再開を発表後、周りの反応は?

知人からは「やっと利用できるようになるのか、よかった」といった話がありました。また、「早速、当社でも使用を開始した」といったご連絡もいただきました。


――ハンドドライヤー再開を望む声は以前からあった?

昨年の夏ごろから、なぜ停止しなければいけないのかというお問い合わせをいただくようになりました。そこで専門家会議提言の記述の根拠を辿ってみると、科学的には公正でない方法で行われた論文が根拠となっていることが分かり、その反論をすることから議論を始めました。

専門家会議の提言を受け策定…その後、感染リスクが極めて低いことを確認

――2020年5月のガイドラインで、ハンドドライヤー利用停止を盛り込んだ理由は?

ガイドラインを策定したきっかけは、政府の専門家会議の提言とそれを受けた政府から中西会長への要請です。
専門家会議の提言は、「業種ごとに感染拡大を予防するガイドライン等を作成し、業界をあげてこれを普及し、現場において、試行錯誤をしながら、また創意工夫をしながら実践していただくことを強く求めたい」として、それぞれの業種の業界団体等にガイドラインの作成を求め、ガイドラインを策定する上での留意点として、「ハンドドライヤーは止め、共通のタオルは禁止する」ことが明記されていたのです。

この要請を受け、経団連は総合経済団体として、オフィスや製造事業場(工場)を一般的にカバーするガイドラインを策定し、ハンドドライヤーを止める旨を記載しました。


――今回、 ハンドドライヤー再開を決めた理由は?

ハンドドライヤーを通じた感染の可能性として、(1)ウイルスが付着した機器に手が接触すること(2)ウイルスが飛沫(水滴)やマイクロ飛沫(エアロゾル)にのって手や目・鼻に入ることが考えられます。

(1)の接触感染のリスクについては、もともと通常の使用では手で触れる機器ではありませんし、きちんとした清掃をすれば、接触感染のリスクは低くなります。(2)の飛沫感染やマイクロ飛沫感染のリスクについても、実験やシミュレーションによって評価した結果、リスクは低いことが明らかになりました。

加えて、諸外国の事情を調べてみても、ハンドドライヤーの使用を制限している国は見当たらず、むしろガイドライン等で、「ペーパータオルかハンドドライヤーで手を乾かすこと」を推奨しているものがみられただけです。こうした事情で、きちんと清掃することを前提とすれば、ハンドドライヤーを停止する理由はないと判断しました。

感染リスク0.01%という結果も

――ウイルスを飛散させない科学的根拠は?

(1)飛沫(水滴)については、ハンドドライヤー使用時に使用者の手から微量の飛散はあるものの、短時間で床に落下するため、長時間空中に滞在することはなく、飛沫(水滴)からの感染リスクについては専門家からも問題ないと見解をいただいています。

また、手洗いが不十分な人がハンドドライヤーで手を乾かしたあとに、機器の底に残った水滴が舞い上がらないか、といった実験をしました。
その結果、ハンドドライヤーを使用することで、手挿入部から菌が飛散し、周囲の浮遊菌数が増加することはない(評価機関:衛生微生物研究センター)、また、手挿入部内に残存した水滴が再飛散することがないこと(メーカーである三菱電機の評価)を確認できています。

(2)マイクロ飛沫(エアロゾル)については、メーカーである三菱電機が、(a)エアロゾル発生量の実証、(b)拡散シミュレーションを行い、北海道大学林基哉教授に監修いただいて、感染リスクの評価をいたしました。

手をかざした人の呼吸をする顔の周辺にどれぐらいの濃度でエアロゾルが飛散するのかということを試算した結果、15秒間流水で手洗いが実施されている状況で、ハンドドライヤーを一般的に使用している場合(機器が2分に1回使用されている状態で、1日に合計30分間滞在した場合)の感染リスクは0.01%であり、手洗いが不十分な場合(手を水で濡らすのみ)でも感染リスクは0.87%でした。詳しくは、実験をした三菱電機が、近く試算結果を公表する予定です。


――ハンドドライヤーを使用しないことで、逆に感染リスクが高まることはある?

専門家の先生からも、トイレに手を乾かす手段がないことにより手を洗わない人や、手を洗っても水滴を垂らしたままトイレの外に出ていく人がいる可能性があるのではないかとの指摘がありました。なかなか実証もできませんが、使用しないことでリスクが上がっていた可能性があります。

 

経団連によると定期的な清掃の目安は「1日1回以上」ということだが、今後ハンドドライヤー再開の動きが、広がっていきそうだ。しかし、街の人の中には「今まで使われていなかったので若干抵抗がある。」という声もあり、一度、やめてしまった習慣を元に戻すには、時間がかかるかもしれない。

withコロナの生活が続く中で、1年前と比べるとウイルスについての情報も増えてきているので、当時の対策を検証し見直すことも必要だろう。