初めて取材に応じたカレン族の住民
ミャンマー東部で国軍による空爆により負傷した少数民族カレン族の住民が初めて取材に応じた。爆風で吹き飛ばされてタイに搬送されたカレン族の男性は、空爆を受けた直後に意識を失ったとFNNに語った。
「家にいたら飛行機から爆弾が落ちてきた」
3月27日午後8時頃、東部カイン州の自宅で家族と共にくつろいでいたソー・ジャー・ビーさん(48)は、ミャンマー国軍の空爆攻撃を受けて吹き飛ばされ、その場で意識を失った。再び意識を取り戻した時には、すでにタイ国境近くまで運ばれていた。ソー・ジャー・ビーさんは肺に穴が開く重傷でミャンマー国内では治療困難と診断されたため、30日午前にタイ国内の病院に搬送された。

ミャンマー国軍は27日の夜以降、タイ国境に近いミャンマー東部カイン州で少数民族の武装組織KNU=「カレン民族同盟(KNU)」の支配地域を断続的に空爆した。この空爆で7つの村が爆撃を受け、およそ1万人の住民が村から避難し、うち3千人がタイ国内に越境した。カレン平和支援ネットワークによると27日の空爆では3人が死亡、7人が負傷した。空爆はその後も断続的に行われ、死傷者はさらに増えたとみられている。

タイへの越境が認められた負傷者7人は30日午前、タイ・メーホンソン県内の病院に搬送された。現地の病院担当者によると7人は年齢15歳から60歳の男性3人、女性4人で、いずれも爆弾によって負傷したという。タイの医師が診察した結果、負傷者の中には爆弾の破片が足に刺さったままだったり、頭蓋骨や、足を骨折したりしている人が含まれていた。

「空爆はやめてほしい」
FNNが訪れた病院には4人が入院。前述のソー・ジャー・ビーさんもその一人だ。我々は病院担当者の許可を得て、カレン語の通訳を通じて話を聞いた。
「現地では食べ物や薬が不足しています。生活用品やドライフードなど、避難の時に必要です。空爆はやめてほしい」
国軍の空爆で重傷を負ったソー・ジャー・ビーさんは、FNNの取材にこのように語った。カレン族の一般市民には今も空爆を恐れて森の中で避難生活を続けている人が多くいる。ソー・ジャー・ビーさんは、ベッドに横たわりながらも、懸命にこうした人々への支援の必要性を訴えた。
今回のミャンマー国軍による空爆は、カレン民族同盟による国軍への攻撃に対する報復として行われた。空爆に先立ちカレン民族同盟は27日朝、国軍の拠点を襲撃し10人を殺害、別の8人を拘束したと表明していた。
国軍との衝突を繰り返してきた武装勢力
ミャンマーには少数民族の武装勢力が20以上存在し、1948年の独立以降、国軍と衝突を繰り返してきた。今回空爆が行われたカイン州は近年、比較的平穏であったが、国軍のクーデター以降は状況が大きく変わってきている。カレン民族同盟は3月以降、ミャンマーの治安部隊からデモ隊を守るために武装要員を派遣するなどクーデターで実権を握った国軍への反発を強めている。
また、こうした動きはカイン州だけでなく他の地域でも起きている。北部カチン州では武装勢力・カチン独立軍(KIA)が国軍への攻勢を強めている。別の3つの少数民族武装組織(アラカン軍(AA)、タアン民族解放軍(TNLA)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)も国軍を非難する共同声明を発表した。国軍側も少数民族に対し強硬姿勢を取り始めている。

いまも治安部隊による激しいデモ弾圧が続き、犠牲者が増え続けているミャンマー。
加えて国軍と少数民族の武装勢力との衝突が更に広がれば、内戦勃発の引き金となる危険性をはらんでいる。
【執筆:FNNバンコク支局長 佐々木亮】