2020年12月に渡仏してから早3カ月。夜間の外出禁止が続き、飲食店も店内営業は禁止されたままだが、大きな不自由もなく生活してきた。
しかし、この間もフランスの一日の新規感染者は3万人台と高止まりが続き、3月18日には遂に3度目の外出制限が発表された。日中の外出が制限されるとなれば話は違う。一体どうなってしまうのか。これからの生活に一気に不安が募った。
2021年3月18日(木)「外出禁止」発表
午後7時、カステックス首相の会見が始まった。
「1日の新規感染3万人超」「累計死者10万人」「感染者の4分の3がイギリス型変異株」「病床が逼迫」
厳しい現実が示された。その上で首相は「第3波が来ていることは明確だ」と警鐘を鳴らした。続いて「外出禁止」の概要が発表された。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/e/700mw/img_8e50da86bb3e030e611537d8fcba8efa225726.jpg)
過去2回の外出禁止では食料品、薬局、銀行、ガソリンスタンドを除く全ての店舗、施設が閉鎖されたが、今回は書店や美容室の営業が認められた。
特に驚愕したのは外出についてだ。新鮮な空気を吸う、散歩、運動のための外出は自宅から10キロ以内なら時間無制限で移動可能だという。感染拡大防止のために取った「外出禁止」措置は名ばかりなのか。それでも生活必需品以外の店が全て閉鎖し、外出の際には外出許可証を持ち歩かなくてはならない。自分にとっても家族にとっても初めての経験だ。
2021年3月19日(金)「外出禁止」前日
![パリを脱出するため列車に急ぐ](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/5/700mw/img_55b7a30644f64f452639980c855732542960577.jpg)
地方へ向かう列車が発着するモンパルナス駅。この日のうちにパリを脱出して規制対象外の地域に向かおうとする人たちが駅に殺到していた。
「パリでは息がつまるので、早く出た方がいい」と話す若い女性。
「外出禁止になると分かった時点で脱出を決めた」と語る女性もいる。
列車の運賃は予約状況に応じて変動するが、この日のボルドー行きの運賃は通常の5倍近くまで跳ね上がっていた。
![衣料品店にできた行列](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/4/700mw/img_c4464e1318a689a51140280ab6a715281215239.jpg)
また明日から生活必需品以外の店が閉鎖するため、市内の衣料品店や化粧品店には最後の買い物をする客で行列ができていた。
「外出禁止」に備える市民の姿を目の当たりにして、不安がさらに大きくなる。
2021年3月20日(土)「外出禁止」初日
![「白鳥の島」は普段と変わらない人出](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/700mw/img_6c09186ac8fafa5a5cbc6057f7a50d7e3396492.jpg)
雲一つない青空。空気はひんやりと冷たいが絶好の散歩日和だ。外出許可証の入力方法がよく分からず、自宅のベランダから外の様子を見ることにする。午前中はまばらだった人の姿も午後になると、春の陽気に誘われるように増えていく。しばらくぼんやりしているとスタッフから連絡が入った。
「外出許可証が必要なくなりました」
10キロ以内の移動、午後7時までの外出については外出許可証が必要なくなったというのだ。
「外出禁止」初日から早くもルールが簡素化されたことに驚く。しかしこれで外出を躊躇する理由もなくなり、外に出た。生活必需品を買い求める人や散歩、ジョギングをする人、子供連れやカップル、お年寄りまで、思い思いに外出を楽しむ様子は、普段の週末と変わらない光景だ。
![午後6時前 家族連れの姿が目立つ](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/700mw/img_73b0059891057a874da1252e0efaad542911412.jpg)
スーパーにも立ち寄った。午後6時。昨日までは閉店時間だったが、営業時間は1時間延びていた。トイレットペーパーがこの日は品薄だったが、これも一時的なもの。客が買い占めに走ることはないし、その必要もない。
![営業時間は1時間延長](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/3/700mw/img_c36ae6d05f8037d3587a4634d3a0d1e92619066.jpg)
パン屋も営業時間が延長され、閉店間際にバゲットを買い求める客の行列は午後7時前に見られた。
2021年3月23日(火)「外出禁止」4日目
必要があり出社した。「週4日のテレワーク」で市中心部の様子がどうなっているのか見たい気持ちもあり、昼休みの時間に外に出る。シャンゼリゼ通りに面する有名ブランド店やアパレル店は全て閉まっていて、人通りは少ないように見えた。
![飲食店は店内営業が禁止されている](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/d/700mw/img_cdf40e9afc193eea7fd5c1dfa8d4514d2665668.jpg)
しかし大通りから外れ、飲食店が軒を連ねる横道に一歩入ると、テイクアウトの昼食を求める客が各店舗で行列を作っていた。手ぶらの人が多く、ほとんどが周辺のオフィスで働いている人たちだ。店先で弁当を販売する店員が道行く人にスープを振る舞う。店員と客の会話が弾み、笑い声が響く。そこには息苦しさや悲壮感は見られない。最小限の我慢をしながら、これまでと変わりない日常を過ごす市民の姿が逞しく思えた。
2021年3月25日(木)「外出禁止」6日目
前日(24日)の新規感染者が4万5000人を超えた。フランスでは7割が変異株による感染と言われ、その猛威が止まらない。また、イギリスや南アフリカ由来の変異株以外にPCRをすり抜ける変異株も確認されている。保健相はこの日の会見で「外出禁止」の対象地域の拡大を表明した。
![夜間外出禁止は午後7時に繰り下げ](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/700mw/img_69cd1c15194a187418b073abeca04c5b3154478.jpg)
「外出禁止」から1週間が経ったが、これまでとほぼ変わらない生活が送れている。
当初抱いていた日常生活への漠然とした不安は解消された。逆に、これでは感染が収まらないのではと心配になる。そうした中、ワクチン接種を加速させる動きが出てきた。サッカースタジアムやディズニーランドのホテルを接種会場として使用する計画が浮上しているという。
感染抑止とワクチン接種をいかに効果的に進めるのか、難しい舵取りを迫られるフランス政府の対応を今後も注視していく。
【執筆:FNNパリ支局長 山岸直人】