愛媛県西予市の「かまぼこ板の絵」展覧会には毎年全国から多くの作品が届く。
東日本大震災が起きた2011年、発災の数時間前に岩手県から投函され、大混乱の中、奇跡的に愛媛に届いた「絵」があった。
“小さなかまぼこ板”がつないだ絆は震災から10年経った今も続いている。

西予市立美術館ギャラリーしろかわ。現在、東日本大震災から10年を節目とした企画展が開かれている。

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「あれから10年、前へ ~かまぼこ板の絵展~」会場には岩手・陸前高田市の松原に残った「奇跡の一本松」や復興のシンボルとされた「三陸鉄道」など、全国から寄せられた約400点の作品が展示され被災地の歩みを伝える。

震災の3時間前に投函…奇跡的に届いた作品

企画展を開くきっかけになったのは、震災直後に届いた岩手の小学生からの作品だった。

ギャラリーしろかわ・金丸博文館長:
東日本大震災発生前に、宮古市の田老第三小学校の生徒さんと先生の作品が発生3時間前に投函されてまして、それが奇跡的にこちらのほうに届いたということで

大きな津波被害を受けた岩手・宮古市から小学生たちのかまぼこ板の絵が届いたのは震災から8日後。
震災の大混乱の中をくぐり抜け、1,000km以上も離れた岩手・宮古市から愛媛・西予市の山の中にある小さな美術館に届いた。

震災から4カ月後の2011年7月、西予市は宮古市の児童11人を表彰式に招待し「奇跡のかまぼこ板」に「感動賞」を贈った。
また、西予の小学生とかまぼこ板を使って1つの作品を作り上げるなど絆を深めてきた。

しかし、2018年、今度は愛媛を大災害・西日本豪雨が襲った。
ギャラリーがある西予市も大きな被害を受けた。この時、いち早く届けられたのが、宮古市の小学生たちからの激励の手紙。

ギャラリーしろかわ・金丸博文館長:
東日本大震災発生当時の田老第三小学校とのつながりといいますか、生徒さんは当然卒業されたりとか学校の先生も入れ替わったりとかしている中で、こちらの西日本豪雨の際にはまたお手紙や寄付金をいただいたりしましたし、ありがたいことだなと、絆といいますか、大切にしたいものだなと思っております

震災を経験した宮古市と豪雨を経験した西予市。
小さなかまぼこ板がもたらした不思議な縁から互いに励まし合い支え合って歩んできた10年だった。

忘れない「描いた」かまぼこ板

この奇跡のかまぼこ板の絵にまつわる話には続きがあった。
岩手の鉄道会社・三陸鉄道が運転士を目指して研修中の新入社員の仕事を紹介した映像、映っているのは2020年入社した佐々木翔太さん。

小学生当時の佐々木翔太さん:
遠い所で飾ってあって、いろんな人の絵もあっていいなと思った

実は佐々木さん、あの奇跡のかまぼこ板の送り主の1人だった。
愛媛を訪れた10年前、小学3年生だった佐々木さんも19歳になり、今や立派な社会人。

三陸鉄道・佐々木翔太さん:
その時、好きだった新幹線を描いたの覚えてますね

当時から運転士にあこがれ、かまぼこ板にも鉄道を描いていた佐々木さん。
就職先に選んだのは震災の大津波によって壊滅的な被害を受けた三陸鉄道だった。

佐々木翔太さんの作品「乗ってみたいな東京メトロ」

三陸鉄道・佐々木翔太さん:
三陸鉄道って「さんてつ」って地元の人から呼ばれているんですけど、さんてつは学校に通うのにも必要な大事な足として利用させていただいて、震災の後に大きな被害を受けて線路も駅も流されたのをテレビで見ていて、そんな中でも走れる所は走らせる、お客さまのことを第一に考えてる会社ということが当時から心に残っていて、私もこの会社に入って色んな人の役に立ちたいがあって選びました

この知らせはギャラリーしろかわにも届いていました。

ギャラリーしろかわ・金丸博文館長:
震災をきっかけに佐々木君本人も強くなったといいますか、夢に向かってがんばったんだなと思います。まさに震災を乗り越えてということじゃないでしょうか

三陸鉄道・佐々木翔太さん:
10年経てば、震災前と道路がちょっと変わったり、全然風景も違うし、徐々に空き地が減っているような気もするので、徐々に徐々に復興しているのかなというのは感じます。10年前にはなるんですけども、愛媛に行っていろんな方が温かく迎えてくれたのをすごく覚えているので、今はちょっと厳しいかもしれないけど、これから先、私が運転する列車で三陸鉄道に乗っていただいて、三陸のいい景色だったり、おいしいものを食べて少しでも恩返しができたらなと思います

佐々木翔太さんの作品「はじめて乗るはやぶさ」

三陸鉄道・佐々木翔太さん:
震災の時にいろんな方に支援していただいて、それがすごくうれしかったなという思いがありますので、色んな人に感謝の気持ちを持ちながらこれから運転士に向けてがんばっていきたいなと思います

小さなかまぼこ板がつないだ愛媛と岩手の絆。
遠く離れた人たちが互いに支えあい、被災を乗り越えようと歩みを進める。

(テレビ愛媛)