東日本大震災から10年、南海トラフ巨大地震で岡山・香川でも大きな被害が想定される津波を検証する。75年前の昭和南海地震の写真から分かった避難での盲点、そして、導き出された新たなシナリオとは。

津波が来る前に液状化・地殻変動で堤防が沈下…そして浸水

瀬戸内海の沿岸
瀬戸内海の沿岸
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浜辺を利用した塩づくりが盛んだった瀬戸内海の沿岸。香川県の坂出市教育委員会に、75年前に起きた昭和南海地震の貴重な写真が人知れず保管されていた。

その数181枚。

75年前に起きた昭和南海地震の写真
75年前に起きた昭和南海地震の写真

坂出や宇多津、高松など、各地の塩田の被害を克明に捉えていた。

建物は崩れ、堤防は壊され、塩田が浸水した様子が見て取れる。

1946年の昭和南海地震は、和歌山県沖を震源とするマグニチュード8の地震で、岡山・香川でそれぞれ52人が死亡した。

香川大学 創造工学部・長谷川修一教授:
ここら辺は、堤防の護岸の方が液状化で海側へ流れている

専門家は、護岸で起きたある変化に着目した。

香川大学 創造工学部・長谷川修一教授:
津波が来る前に、液状化で堤防が沈下し、地殻変動でも沈下し、そして浸水が起きる地域が出てくる。それを如実に物語っていますね

当時の被害調査では、沿岸部で地殻変動が起き、広い範囲で40cm近く地盤が沈下したと報告されている。
その地殻変動が意味するものとは…

30cmでも避難困難…津波の威力を再現

10年前に起きた東日本大震災では、津波で多くの命が奪われた。

2011.3.11 東日本大震災
2011.3.11 東日本大震災

命を守るためには、津波が到達するまでに確実に避難すること。それが教訓。

東日本大震災の教訓は…
東日本大震災の教訓は…

南海トラフ巨大地震では、岡山・香川でも津波の被害が想定されている。

高さ3メートル級の津波が押し寄せ、最悪の条件が重なれば、香川県で6200人が死亡、そのうち4600人が津波で犠牲になるという。

その津波の威力を人工的に再現した映像。

港湾空港技術研究所 “津波”再現映像
港湾空港技術研究所 “津波”再現映像

津波の高さは50cm。しかし男性は立っていられない。

港湾空港技術研究所 “津波”再現映像
港湾空港技術研究所 “津波”再現映像

それより低い30cmの浸水でも、避難が困難になると言われている。

では、時間の猶予はどれくらいあるのか。

香川県のシミュレーションでは、津波は発生後、すぐに高知県沿岸に到達。

津波シミュレーション
津波シミュレーション

岡山・香川で最初に到達するのは東かがわ市で約1時間半後、その後、半日かけて岡山・香川のほとんどの沿岸に到達する。

75年前の写真が示す想定外

小林宏典記者:
高松市の春日川の河口です。津波が到達するのは発生から3時間後で、この辺りは最大2メートル浸水する想定です。津波が来るまでの3時間が避難に与えられた時間ですが、その猶予を覆す想定があります

地震発生から30cm浸水するまでの時間を色分けした地図を見ると、赤は30分以内、紫はさらに早い10分未満で浸水する。

浸水深30cm到達予測 赤は30分以内 紫は10分未満
浸水深30cm到達予測 赤は30分以内 紫は10分未満

先ほどの春日川河口より南西のエリアは、赤や紫、早ければ10分以内に避難が難しくなる。

こうしたエリアは、香川県東部から西部まで沿岸部を中心に点在している。
元々、低い土地や地盤が弱い場所で、住宅地や幹線道路とも重なっている。

香川大学 創造工学部・長谷川修一教授:
津波ばかり注目されていて、局所的に浸水は地震の直後から始まるところもある。昭和の南海トラフ地震で起きている。同じことは必ず次の南海トラフ地震でも起きます

75年前の写真が示す地震発生後のシナリオはこうだ。

最大震度6弱の揺れで、沿岸部では液状化や地盤沈下が発生。早い所は10分経たずに30cm浸水し、避難が困難な状況下で3メートル級の津波が押し寄せる…

 
 

香川大学 創造工学部・長谷川修一教授:
昭和南海地震は規模が小さかった。今度は必ずそれよりも大きな規模の地震、津波になると。そう考えて覚悟した方がいいと思いますね

南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率は、70~80%。
避難に残された時間は、実はあまりない。

それに対する備えが課題になるが、いつどこに避難するのか見直す必要がある。

まずは、身の回りにどんなリスクがあるのか、避難所までの道のりは大丈夫なのか、ハザードマップでの確認が求められる。

(岡山放送)

岡山放送
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