日本有数の観光名所として知られる「鳥取砂丘」。この広大な砂礫地で見つかった、一つの空き缶がネットで注目を集めている。

本日、鳥取砂丘から出土したものです。
「ファンタグレープ」の初代デザイン(1970年代)だと思います。…ネット調べですので、誰か教えてください詳しい方~!

2月16日、Twitterでこのように投稿したのは、鳥取砂丘の観光拠点施設「鳥取砂丘ビジターセンター」の公式アカウント(@Sakyu_visitor)。風で砂が舞ったことで、砂中から年代物と思われるファンタの空き缶が見つかったというのだ。

発見当時の様子(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)
発見当時の様子(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)
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添付画像を見ると、パッケージには確かに「ファンタグレープ」と描かれている。外観のレトロ感やところどころさびているところを見ると、かなり古い商品のようだ。

レトロ感を感じさせる(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)
レトロ感を感じさせる(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)

ファンタ公式も反応…だが胸中は複雑

この投稿が拡散されると、翌日の17日にはファンタの公式アカウントが反応。

これは1968~1974年に発売されたファンタグレープ…!
なかなかお目にかかれない、とても貴重なものです!
投稿してくださってありがとうございます

約50年前に流通していたというが、販売元はどう受け止めているのだろうか。

国内のファンタを取り扱う「日本コカ・コーラ」に聞いたところ、この商品が発売された1970年前後は“空き缶のポイ捨てが、社会問題になり始めていた時期だという。

1970年前後はポイ捨てが社会問題に(画像はイメージ)
1970年前後はポイ捨てが社会問題に(画像はイメージ)

担当者は「今回の発見を懐かしいと思いつつ、その一方で飲料メーカーとして、飲み終わったあとの容器の回収とリサイクルの啓発の重要性をあらためて感じております」とした上で、「このことをきっかけに、飲み終わったあとの容器のリサイクルについて、多くの方に考えていただける機会につながると嬉しいです」とコメントした。

古いデザインの缶が年代を超えて見つかるのは珍しいかもしれないが、ポイ捨てされた可能性もあることから、責任を感じているようだった。

古銭や砲弾…鳥取砂丘に埋もれた物品は他にも

鳥取砂丘ビジターセンターも、Twitterでは「未来の話題になるからというゴミの投棄はいけませんよ。この缶を見て、自分もやろうと思うか、そんなに経っても自然に還らないのかと思うかはご覧になった皆様のお心次第でございます」と注意喚起している。

砂丘では他にも、ごみなどは見つかるのだろうか。鳥取砂丘ビジターセンターにも聞いてみた。

ーー今回のファンタはどんな状態で見つかった?

2月16日の午後、鳥取砂丘の「馬の背」(丘状になった観光スポット)のふもと付近で、職員が砂の中から少し缶の底が出た状態で見つけました。缶の周りは少しさびていて、製造ロット番号などは完全にわからない状況です。FANTAのロゴや大きな文字は識別できます。

馬の背(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)
馬の背(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)

ーー発見したときの気持ちは?

最初は缶詰の缶の底かなと思ったようです。鳥取砂丘には、観光客であるお客さまの持ち物や海岸漂着物が多く飛来してきているので、職員が拾って帰ってきたような状況でした。見たことがない缶なので、製造年代を知っている人がいないかと呼びかけました。

最近はリップクリームが見つかったという(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)
最近はリップクリームが見つかったという(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)

ーー砂丘では他にどんなものが見つかっている?

鳥取砂丘は冬から春先の北西風が強い時季は、地中の遺物が強い風に吹かれて、表面に露出する場合があります。縄文時代から人の動きがあるので、縄文時代や弥生時代の土器や石製品も見つかりますし、江戸時代は鳥取と兵庫県北部を結ぶ街道(但馬往来:たじまおうらい)が砂丘にあったため、古い古銭(寛永通宝)も見つかったりします。戦前は陸軍の演習場として使用されていたため、砲弾なども見つかっています。

2015年に見つかった寛永通宝(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)
2015年に見つかった寛永通宝(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)

50年前の遺物でも自然には還らない

ーー注目を集めたことをどう受け止めている?

ファンタの遺物がクローズアップされていますが、考えてみれば、観光客の方が飲んで捨てた空き缶が地上に出てきたといった状況です。観光客の皆さまには、50年前の遺物が今でも自然に還らないことを肝に命じておいていただきたいです。

今回の空き缶は当センターで保管することになりますが、海岸漂着物と同じような取り扱いで、砂丘の保全と環境のあり方を考えるイベントでの展示物とするようなことを検討しております。

砂丘の保全を考えるイベント(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)
砂丘の保全を考えるイベント(提供:鳥取砂丘ビジターセンター)

ーー人々に伝えたいことはある?

海岸に打ち上げられたプラスチック製品、観光客の皆さまが捨てたものは砂の中に埋もれます。今回は約50年前の空き缶でも、自然に還っていない状況でした。ごみは無造作に捨てずに必ず持ち帰っていただき、分別して処分していただきますようお願いします。


今回の件について、Twitterでは「貴重だけど飲み終わったらゴミは持って帰らないとね 喜ぶべきか悲しむべきか」という意見も見られた。軽い気持ちで捨てたものでも、ごみとして残ることを学ぶ機会とするべきなのかもしれない。
 

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プライムオンライン編集部
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