土砂災害や洪水など危機が迫っているとき、いつどこへ避難すればいいのか、状況によって違ってくるだろう。
そのような中で、チャットアプリのLINEで一人ひとりの状況にあわせた避難支援をするAIが開発された。例えば大雨であれば今の雨量だけでなく、近隣のハザードマップや予定している避難所の混み具合など多岐にわたる情報ソースを参照して、避難支援をしてくれるのだ。
個々にカスタマイズされる「AI防災避難支援システム」
開発したのはIT企業・自治体・防災の研究機関などでつくるAI防災協議会で、18日、SOCDA(ソクダ)という防災チャットボットに、避難支援機能を追加したLINE公式アカウント「AI防災支援システム」を開設した。(現在は実証実験の段階で、自治体職員などだけが利用できる)
このLINE公式アカウントと友だちになり、生活場所、災害時の予定避難先、避難予定の警戒レベルなどを設定しておくと、AIが現在地や避難行動の危険度などを総合的に評価し、ユーザー毎にカスタマイズされた、より適切な避難を提案してくれるという。
またチャットボットは、災害が迫ると避難を勧めるだけではなく、「案内」を希望すると現在地と周辺の避難場所をまとめたハザードマップや、避難に適した服装・持ち物など様々な情報を提示。
万が一、予定していた避難所への到着が困難な場合は、別の避難所を選択するように促し、混み具合や開設状況も伝えてくれるという。
ユーザーが被害状況を投稿することも可能
また、ユーザーが見つけた被害状況を位置情報や写真・文字で投稿することも可能で、AIがどこでどのような種類の災害が発生しているかを整理し、LINE上で地図として確認できるようになるとのことだ。
自分の住む地域や現在地に合わせ、個々に適切な避難方法を案内してくれるのであれば、すぐに使いたいと思う人も多いかもしれない。しかし「AI防災支援システム」は現在、神奈川県で実証実験中で、住民に公開するのは今年中の予定だという。
では全国展開はいつになるのか? どんな災害に対応しているのか?担当者に聞いた。
GPSが届かなくても場所を指定すればOK
――どんな災害に対応している?
避難支援機能は現時点では風水害、特に河川の氾濫と土砂災害からの避難に対応しています。対応可能な災害種別は今後も増やしていきます。
情報投稿機能については、災害種別に限定はありません。災害対策基本法に定めのある自然災害であれば、どのような事象・被害の投稿でも解析し、カテゴリーを付与することができます。
――そもそも災害が迫っていることをどうやって判断している?
気象庁や自治体等、公的機関の発する情報をもとに判断しています。
――では、GPSを切っていたら機能しないの?
GPSを切っていても地図画面から任意の場所を指定し、情報の投稿や避難の支援を受けることができます。
――AIは、例えばマンションの「高さ」も考慮して避難を勧める?
現時点では、マンションの高さ等の建物個別の高度情報に基づく判定はしていませんが、将来的な対応を予定しています。
――実用化の目途は?
最終目標である社会実装の時期は、2022年度末としています。
実証実験では、特に「避難支援機能」において、基礎自治体をまたいで構築した避難所・避難場所・ハザードマップのデータベースが、自治体が連携する広域避難体制に活用できるかなどの稼働検証を行うとのことだ。
昨今のコロナ禍では密を避ける分散避難や在宅避難も重要視され、いつ避難所に移動したらいいのかの判断は一層難しくなってきた。このような「避難支援」の技術が早く実装されることを期待したい。
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