コロナ禍で社会問題となっているDV(ドメスティックバイオレンス)。
被害者を保護する岡山県内のシェルターに、ある親子が駆け込んだ。母親が一歩を踏み出す勇気を与えたのは、子どものSOSだった。

約10年に渡る夫のDV

小学4年生の女の子。帰って来たこの場所は、彼女の自宅ではなく、DV被害者を支援する津山市の「オリーブの家」が運営する民間のシェルター。
2020年の暮れから、母親と一緒に保護されている。

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DV被害者の女性(50歳):
我慢していた私のコップがあふれたのがきかっけ。今まで夫に言われて自分の行動を直さなきゃと思って直す努力もしてきたが、それももう能力がないのかなと自分で自分をあきらめたのもある

母親は、約10年に渡り、夫の暴言に苦しみ、人格を否定され続けてきた。

DV被害者の女性(50歳):
私が専業主婦で働いていなかったので、収入がないこととか、楽な生活をしやがってと(言われた)。寄生虫だとか、パラサイトだとか、一番ひどかったのは、うじ虫、下等動物と言われた

竹下美保記者:
その言葉が発せられた時、子どもさんはどこに?

DV被害者の女性(50歳):
大抵そばにいて、「まただ」と聞いていましたね。全部子どもは見ていた

新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で、夫は自宅でリモートワークになり、一緒にいる時間が増え、その暴言は一層激しくなった。そして、娘は学校に行けなくなった。

子どもが”母”を心配してSOS

DV被害者の女性(50歳):
叫びだったと思います。SOSを子どもなりに、私に発信していたと思う。子どもが買い物に行くとウソをついて(家を)出ようと考えて、本当に買い物行くエコバックに詰められるだけ詰めて、着替えも持たずに出た

DV被害者の娘(10歳):
前と比べればこっちの方が、お母さんとか私の笑顔も増えた。前はお母さんがいつ出て行くかという不安もあったから、こっちは安心。お母さんが出ていく不安がないから

ーーお母さんが出て行くと思ったのはどうして?

DV被害者の娘10歳:
お父さんとよくケンカしていたから、その時に出て行けと毎回言っていたから、心配で怖かった

子どもの前でのDVは虐待と同じ

「オリーブの家」には、2020年度 多い月で前年の4倍もの相談が寄せられている。1回目の緊急事態宣言のころが最も多く、2020年の暮れからは、第3波の影響で再び増え始めた。

認定NPO法人オリーブの家・山本康世理事長:
DVの環境で育ったお子さんのその後を考えても、皆さん 子どもの時から大人にならざるを得なかったとか、子どもさんの心はむしばまれている。常に人の顔色を見るお子さんになることが多々ある

心理カウンセラーでもある山本さんは、子どもの前で暴力や暴言、DVを見せることは虐待だと訴えている。

シェルターで暮らして1カ月余り。親子の穏やかな時間が流れていた。
母親は、弁護士を立て、離婚調停を申し立てた。
「子どもが子どもらしく」「自分が自分らしく」生きられるように、新しい生活を始める準備を進めている。

DV被害者の女性(50歳):
アパートを2人でネットで見て探して、どんな家にしたいかを寝る前にしゃべるのがすごく楽しい。2人で家庭を築いていきたい

ーー将来の夢は?

DV被害者の娘(10歳):
強い女の人で、モデルになりたい。モデルになって、みんなを幸せにしたいです

女の子は、きょうも避難先の小学校に通っている。
誰の未来も決して諦めないために。「助けて」と言える場所は必ずある。
DV被害者の相談や保護の依頼は、「オリーブの家(0868-28-4772)」で受け付けています。

(岡山放送)

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