被災地に住む人との「意識差」浮き彫りに

東日本大震災からまもなく10年となるが、日本赤十字社が「災害の記憶と災害意識の変化に関する実態調査」の結果を発表した。

調査は、東日本大震災の被災地(岩手、宮城、福島)に居住歴のある、または現在居住している20歳以上の男女100人と、その他主要都市(東京、愛知、大阪、福岡)に現在居住している20歳以上の男女400人を対象として、2020年12月18日~20日にインターネット調査で行われた。

日本赤十字社は3月1日から、防災意識を高める啓発プロジェクト「ACTION!防災・減災 ―命のために今うごく―」を開始しているが、この一環として調査したという。

日本赤十字社 調べ
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調査では、「東日本大震災をきっかけに始めたこと」についての質問で、被災地に住む人が多く回答したのは「居住地の避難場所を確認した(32.0%)」「何も取り組んでいない(31.0%)」「家族や親戚と連絡方法を決めた(29.0%)」

その他都市に住む人は「居住地のハザードマップを確認した(35.8%)」「居住地の避難場所を確認した(31.0%)」「何も取り組んでいない(30.3%)」が多い回答となった。

そんな中、被災地に住む人の11.0%が「地域住民との交流を始めた」のに対し、その他都市ではわずか1.8%。「家族や親戚と連絡方法を決める」ことを被災地に住む人の29.0%が行っていたのに対し、その他都市では15.5%と大きな差がでていた。

一方で、被災地・その他都市に住む人ともに30%を超える人が「何も取り組んでいない」と回答している現状も明らかになった。

日本赤十字社 調べ

また、「災害に対して、家庭でどの程度の備えを行っているか」については、被災地では「必要となる備えを十分に行っている/十分とは言えないが一応の備えをしている」人が67.0%。

一方、その他都市では備えができている人は49.3%と半数以下、「いつかやらなければと思っているが、まだ備えはできていない/備えは必要ないのでしない」人が50.8%となった。

また、「自分が今日、災害に遭うかもしれない」と考える頻度については、「月に1度以上の頻度で考えることがある」と回答した人の割合は被災地居住者では55%、その他主要都市居住者では38%と、災害への当事者意識に差があることも判明したという。

いつ起きてもおかしくない災害への意識に、被災地とその他都市に住む人とでは差があり、さらに実際に準備ができている人の割合にも隔たりがあるという調査結果。

この調査結果の受け止めや、今必要な災害への備えについて、日本赤十字社にお話を聞いた。

災害を「自分ゴト」にするということ

――今回、調査を行ったきっかけは?

140年以上の救護活動の歴史を持つ我々日本赤十字社にとっても、東日本大震災は、比類のない経験でした。発災直後から全社をあげて過去最大規模となる医療救護活動を行い、また、世界の赤十字社から寄せられた救援金を元に復興支援活動を展開。全力で被災地のニーズに応え、対応してまいりました。

一方、多くの反省点も残されました。その一つが、救護活動だけでは救える命に限りがあるということです。この経験から我々は、“一人ひとりの防災への意識がもっと高まり、地域の防災力がもっと向上すれば、災害で失われる命を減らすことができる”と考え、防災教育や防災セミナーを通じて、防災・減災力の向上にも力を注いでまいりました。

今回、アンケート調査を実施したのは、被災地とそれ以外の地域を比較することによって、災害経験の有無が、どれだけ防災・減災の意識に差を生むのか、その違いを知り、今後、継続して防災・減災活動を普及するために、課題がどこにあるのかを明らかにしたいと考えたからです。

今後、自分や家族など、大切な人の命を守るためにできることを、今一度、皆さんと一緒に考え、一歩行動を起こすきっかけを作ることを目指しています。 


――被災地と主要都市で「災害への当事者意識」に差があるという結果が出たが?

今回のプロジェクトは災害を自分ゴト化することで、一人ひとりが具体的行動 (ACTION)を始めることを目指しています。 今回の調査で、主要都市と被災地において「災害への当事者意識」に差があったことは、人は災害を実際に経験しないとなかなか防災や減災について自分ゴトとして考えることができないということだと思います。 今回の調査結果によって浮き彫りとなったこのような課題も含め日ごろからの備えの大切さを訴えていきたいと考えています。 


――被災地で「備えができている」人は約7割…この数字についてはどう考える?

被災地居住者の方が、備えができているとはいえ、“まだ7割”ともいえます。ましてやその他主要都市の方の半数以上は備えができていないと回答しています。「いつかやらなければ」と思いながら行動を起こせていない被災地居住者の残り約3割の方にも、そして、その他主要都市の備えができていないという方にも、今、行動 (ACTION)を起こしていただけるよう、呼びかけていきたいと思います。 

コロナ禍では「感染症対策グッズ」の備えも大切

「ACTION!防災・減災 ―命のために今うごく―」では、Twitterを使ったキャンペーンも実施。

それぞれが家庭や職場で行っている防災への備えを「#あなたの備えがみんなの備えに」のハッシュタグをつけて写真や文章で投稿、または投稿に対してリツイートで反応し、ハッシュタグをたどることで自分が知らない備えの方法やアイデアを学ぶことができるというキャンペーンだ。

また、1投稿/1リツイートあたり100円が賛同企業から日本赤十字社に寄付され、防災・減災をはじめとする活動に使われる。

さらに、公式サイトでは「家庭で必要な備えが足りているか」を確かめるチェックリストも公開。

「防災グッズを備える」「自宅の安全なスペースを確保する」などの項目にチェックを入れると、確認しておくべき必要な備えが表示されるようになっている。

――「ACTION!防災・減災 ―命のために今うごく―」プロジェクトについて教えて。

日本赤十字社は、東日本大震災で多くの命が失われたという苦い教訓に基づき、 これまでも防災セミナーなどを通じた、国民の防災・減災力の向上に力を注いできました。

しかし、今回の調査からもわかるように、災害への何らかの備えを行っている人の割合は約5割しかなく、未だに2人に1人は何の備えもないまま災害を迎えてしまうというのが実態です。

さらに、新型コロナウイルス禍では、感染を防ぐ知識や備えも必要となってきます。このプロジェクトでは未来に目を向け「防災・減災への備え」の大切さについて、みなさんと一緒に考えることで、一人ひとりが自分ゴト化して、自身や家族、大切な人たちの命を救う具体的な行動(ACTION)を起こすきっかけとすることを目指します。 


――コロナ禍での防災…これまでの備えに加えてどんなことが必要?

意識したいポイントは、日常行っている感染症対策を、災害時にも心がけるようにということです。 備えとしては、災害用の備蓄、携行品の中に、感染症対策グッズ(マスクや消毒薬など)や体温計を加えておくこと。 災害時には、避難所や避難先での密を避けるよう注意し、ご自身の体調にも注意を払い、少しでも疑いがある場合は保健所に相談することも大切です。 

感染症への備えも必要(イメージ)

2月13日には宮城・福島を中心に最大震度6強の地震が起きるなど、改めて災害の怖さを感じた人も多いだろう。東日本大震災から10年という節目の年を迎え、今一度見直したい災害への備え。

新型コロナの脅威が続き、いつやってくるかわからない災害に加え、感染症との戦いも求められる中で、まずは災害を遠いものと考えず「自分ゴト」として捉え、先送りせずしっかりと行動を起こすことが、多くの命を守る大切な一歩となってくるだろう。
 

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