新型コロナウイルスの感染が拡大する中、遠隔手話通訳などデジタル技術の利用が増えている。
今、求められる医療現場でのデジタル化を取材した。

手話通訳を遠隔にして感染対策

この日、岡山市の病院を受診した60代の女性。
取り出したのはタブレット端末。画面に映し出されたのは、離れた場所にいる手話通訳者。

岡山済生会総合病院・原田亮一医師:
内視鏡の画像を見た感じではピロリ菌はいそうにないです

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手話通訳者:
はい、わかりました。安心しました

女性は聴覚に障害があり、通常なら市から派遣された手話通訳者が同行し、医師とのやり取りを通訳するが、岡山市では1月から新型コロナウイルスの感染防止対策の一環として、この遠隔手話通訳を選択できるようにした。

篠田吉央キャスター:
遠隔での手話通訳はどうでしたか?

受診した女性:
初めてなので緊張した。案外スムーズにやり取りでき、ありがたかった

岡山済生会総合病院・原田亮一医師:
人が増えれば感染のリスクも高くなるので、(手話通訳の)選択肢が増えるのはいい

支えはネットで社会とつながれること

今、新型コロナの影響で、医療現場でのデジタル技術の活用に期待が集まっている。

2020年4月・笠井信輔さん:
6回目の最後の抗がん剤は一番しんどいですね。全然だめです。体が重くて、きつくて、しんどくて

元フジテレビアナウンサーの笠井信輔さん(57)。
血液のがん、悪性リンパ腫の治療のため、2019年12月から2020年4月まで入院した。
現在は仕事にも復帰しているが、長い闘病生活の支えになったのは、インターネットによる社会とのつながりだった。

長期入院の経験がある笠井信輔さん:
入院中に新型コロナ感染拡大の前と後を同じ病室の中で体験しているんですね。2月の自粛要請が出たあたりから、誰も見舞いに来なくなった。これがコロナの時代の闘病。心の支えが多く得られない。何が支えになったかというと、オンラインによって友達との会話ができたり、インターネットで世の中の様子を知ることが、本当に心の支えになりました

しかし、笠井さんが入院した病棟は、利用時間が限られる有線によるネット環境しかなく、寂しさが増す夜は、自費で通信料を負担した。

長期入院の経験がある笠井信輔さん:
本当にたくさんの方がパケット通信代がかかるので、(ネット使用を)我慢しました。ただでさえ医療費がかかっているので、通信料金を個人で負担してくださいというのは酷な話で、がまんせざるを得ない

コロナ禍で入院患者への面会が制限される中、聴覚障害者の遠隔手話通訳が行われた岡山市北区の岡山済生会総合病院では、院内設備の活用が進んでいる。

篠田吉央キャスター:
こちらの病院では、入院患者のためにWi-Fiを導入しています

病室で1月に誕生した次女を抱きかかえるのは、岡山市に住むベトナム人の女性。
毎日の日課は、ベトナムに住む母親とのネットを使ったビデオ通話。

出産のため入院したベトナム人女性:
私の赤ちゃんかわいいでしょ。

ベトナムにいる母親:
そうね。かわいくて、おとなしいね

病院がWi-Fiを入院患者用に無料で開放しているため、通信料金を気にせず故郷のベトナムや、市内に住む家族とつながることができる。

出産のため入院したベトナム人女性:
新型コロナのため、(ベトナムの)実家から誰も来られないので不安。無料Wi-Fiがあるので、毎日いつでもビデオ通話できうれしい

Wi-Fi環境の整備は5年前。
もともとは病院側が使用する目的だったが、入院患者の心のケアにもつながると、ネットワークの一部を同時に解放した。

既存のシステムを活用したため、新たな費用負担はほぼなく、新型コロナの影響で面会制限を設けて以降、利用は増えている。

岡山済生会総合病院・千田茂樹事務部長:
患者それぞれがWi-Fi端末を持つと院内の医療機器にどのような影響出るかわからない。病院が準備するWi-Fiをしっかり活用することで、安全性は向上する

総務省や厚生労働省などが参加する任意団体(電波環境協議会)の全国調査によると、2020年2月時点で、81.1%の病院でWi-Fiが導入されているが、岡山済生会総合病院のように患者にアクセスを許可しているのは27.3%にとどまっている。

病室のネット環境の必要性を感じた笠井さんは、大学教授やがん患者の支援団体などと連携し、協議会(#病室wifi協議会)を発足し、既にあるWi-Fiを病室にも無料で開放するよう呼びかけているほか、聴覚障害者団体(全日本ろうあ連盟)も通信環境の整備が遠隔手話通訳の充実につながると期待を寄せている。

長期入院の経験がある笠井信輔さん:
新型コロナ対策に予算を使わなければいけないのは本当によくわかっています。ただ、病室でのWi-Fi使用は、そんなにたくさんの予算が必要ないことに気づき、この負担を病院ではなく、国や省庁が負担する仕組みを作って欲しい

Wi-Fiなどのデジタル技術の活用は、コロナ禍の聴覚障害者だけでなく、病気と闘う入院患者にも大きな支えになるはず。

篠田吉央キャスター:
誰一人取り残されないこと願っています

(岡山放送)