一律賃上げは困難

新型コロナウイルスの影響で初のオンライン開催となった経団連と連合の幹部が参加する労使フォーラム。
業績悪化の逆風の中、賃金や労働条件をめぐる交渉「春闘」が26日に事実上スタートしたが、経営側は一律賃上げの難しさを示した。

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経団連は、事業の継続と雇用の維持が最優先との考えを示し、これまでの各社横並びではない賃金決定を呼びかけた。

経団連・中西会長の代読をする久保田政一事務総長:
コロナ禍で業績がまだら模様の中、業種横並びや各社一律ではなく、自社の実情に合った賃金決定の重要性を呼びかけています。

収益が大幅に悪化している企業については、基本給を底上げするベースアップは困難とする一方、安定的に高い水準で推移している企業は、賃上げすることも選択肢とする方針を示している。

一方、連合の神津里季生会長は、2%程度の賃上げの実現を要求した。

連合・神津里季生会長:
日本の危機をどうやって乗り越えていくかという時に、マクロ経済に及ぼす賃金、あるいは賃上げの影響はものすごく大きい。
2014年以来の賃上げの流れをきちんと維持するのかということが、このコロナの危機のもとにあっても、どうやってモメンタム(勢い)を維持するかが最大のテーマ。

トヨタ、ホンダは・・・

こうした中、トヨタ自動車労働組合は、賃上げの総額として、1人あたり月額9,200円を要求する方針を固めた。2020年の要求額より900円低いものの、妥結額を600円上回る水準。

一方、ホンダの労働組合は、2020年度の業績が前年を下回る見通しのため、賃上げの要求を見送る方針。

春闘は、大手企業が回答を示す3月中旬に山場を迎えるが、2014年から続いてきた賃上げの流れは、コロナにより転換点を迎えている。

春闘・労組自体の変革へ

三田友梨佳キャスター:
社員全員がリモートワークで働く会社(株)キャスター取締役COOの石倉秀明さんに聞きます。
今年の春闘をどうご覧になりますか?

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
今年は感染拡大の影響も非常に大きいので業績が苦しい企業が多いです。しばらく大手で続いていたベースアップが一律行われることは厳しくなると思います。

その中で、春闘だったり労働組合自体今後どういう姿であるべきかというのは、変革を迫られてくると思います。

例えば、「副業の解禁」だとか「週休3日制の導入」、「ジョブ型雇用」で成果によって給与を払うといった多様な働き方を柔軟に取り入れていく動きは企業側で活発になっていますし、今後この流れはさらに強まってくると思います。

その中で、旧来の日本型雇用の特徴である全員の給与を一律に上げるベアだとか、定期昇給自体がピンとこない方も増えてくると思います。

三田キャスター:
春闘が社会に与える影響力が、かつてほどではなくなったという指摘もありますよね?

石倉秀明氏:
そうですね。そもそも働く人の約半数弱は非正規で働いているわけですが、今も労働組合は正規社員が中心です。そういう組合が本当に正規と非正規の待遇格差の是正をどこまで要求できるのかというのは疑問が残ります。

労働組合に参加するメンバーをどう多様化するのかをやっていかないと、働く人を守る組織として形骸化しないようにしないといけないと思います。

(イメージ)
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三田キャスター:
これからの労働組合は働く環境の整備や向上など視野の広い活動が求められそうですね。

石倉秀明氏:
もちろんサービス残業を無くすだとか、未払い賃金を解消すといったことは大事だと思いますし、法律で認められながらなかなか進まない男性育休の取得推進などに積極的に取り組むことは必要だと思います。

一方、企業側も自ら働き方の柔軟性を上げていくことで、両者がより良い労働環境を作っていくパートナーシップの関係性にアップデートしていくと良いと思います。

三田キャスター:
企業の業績が厳しさを増す中、今年の労使交渉は例年にも増して厳しい交渉になることが予想されますが、特に社会や暮らしを支えるために働くエッセンシャルワーカーの待遇改善にはしっかりと応えて欲しいと思います。

(「Live News α」1月26日放送分)