受刑者の4人に1人が高齢者…出所は「90歳過ぎ」

受刑者が更生を誓う塀の中で、今、深刻な問題が起きている。
初犯で刑期10年以上の受刑者を収容する岡山刑務所。

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受刑者は、最も多かった2006年には774人いたが、現在は約430人。半数が殺人などの罪を犯した無期懲役の受刑者。

受刑者:
本日の安全目標。自分だけでなく、他人の安全にも気を付けること

強盗殺人の罪で服役し、刑務所での生活は20年近くになる受刑者。

年齢は80代前半。しかし、日々の刑務作業は若い受刑者と変わらない。

強盗殺人罪・無期懲役の受刑者(80代前半):
事件を起こしてから後悔しているんですが、もう遅いですけどね。自分が出た時には、兄弟はもう他界していると思いますので、(出所時は)90歳過ぎると思うんですよ

今、塀の中で起きている深刻な問題。
それは受刑者の高齢化。

65歳以上の高齢者の割合は統計を取り始めた2012年は17.9%だったが、2020年は27.6%だった。4人に1人が高齢者という現状に、刑務所では対策が進められている。

高齢受刑者を介助するのも受刑者 設備面の心配も

2020年11月に運用が始まった「養護工場」。

岡山放送・岸下恵介アナウンサー:
こちらでは、椅子に座って作業している受刑者もいるんですが、椅子に座ることが難しい受刑者は、座椅子に座って作業を行っています。そして、今後の高齢化を見越して、余分に席も設けられています

受刑者が行うのは、緩衝材づくりなどの簡単な作業。老化が著しい高齢者を中心に19人の受刑者が作業にあたる中、時にはこんな光景もみられる。

介助する受刑者:
そのまま、そのまま、もう少し。まだよ、まだよ。もうちょっと行こうか、前向いて、はい、いいよ

介助しているのもまた受刑者。
身寄りのない高齢受刑者が、仮に出所しても生活できるのか、出所後の彼らの生活をどう考えるかということが課題の1つ。

受刑者には1日30分間、運動の時間が与えられている。養護工場の受刑者は、運動場までの移動に時間がかかる。そのため、工場のすぐ横で運動できるように、そして、転倒によるけがを防ぐため人工芝を整備した。

高齢化に対応するコストの増加も課題となっている。

岡山刑務所 処遇部・山本哲也統括矯正処遇官:
介助していくのが大変になってくることも出てくると思うんです、多々。そうなった時に難しい問題が出てくるのではないかと。設備面がこれで足りるのか不安なところはあります

“当時のことを全く覚えていない”認知症の受刑者

刑務官:
7室、番号

受刑者:
番号は覚えていないんです。わからんのです

認知症の診断を受けた80代前半の受刑者。殺人などの罪で無期懲役になったが、当時のことは全く覚えていない。
こうした受刑者がどう罪を償っていけばよいのか、贖罪や更生のあり方も問われ始めている。

刑務作業は工場ではなく、部屋の中で行う。刑務官が毎回、一から作業を指導している。

刑務官:
できあがった時に隙間が空かない。三角形の角が全部そろっている。それを確認してできあがり。わかった?じゃあ、続きやって

「社会の力も借りなければならない」

入浴の時に介助が必要な受刑者もいる。
このため2017年7月から週に5日、介護福祉士による介助が行われている。

介護福祉士・小野正樹さん:
工場など一般の受刑者は自分で全部できるんですけど、この人たちはできないから、われわれが手伝って15分以内に終わらせる

受刑者の体の機能が衰えて、寝たきりにならないように、足腰を使った運動の指導も行われている。

岡山刑務所処遇部・山本哲也統括矯正処遇官:
社会の力も借りなければならない。刑務所の中の既存のものでは対応しきれない部分が出てくると思うので。福祉施設的なところは、多々あるかもしれないが、やはり改善更生・社会復帰というところを目指してやっていきたい

長期の受刑者を抱えるからこそ、押し寄せる高齢化の波。
今、岡山刑務所が向き合っている最も深刻な問題。

(岡山放送)

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