災害への備えや東日本大震災の教訓を後世に伝える取り組みをシリーズでお伝えする「いのちを守る」。
今回は津波伝承アプリ。
震災からの復興が進むとともに、被害の痕跡を探すことは難しくなっている。拡張現実=ARを活用し、津波の教訓を後世に伝える取り組みが石巻で始まっている。

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ARアプリで津波の被害を学ぶ

津波の被害を受けた宮城・石巻市南浜地区。この日は、街を散策しながら防災について考える、「防災まち歩き」が行われていた。

3.11みらいサポート 高橋正子さん:
避難行動ですね。海から川から津波が来た、少しでも早く高い所に逃げてほしい。こちらで伝えている、これが今回のアプリの特色になっています

参加者が見ているのは「石巻津波伝承ARアプリ」。
このアプリをダウンロードしたタブレット端末を指定の場所でかざすと、がれきが残る震災直後の様子と現在の街並みを同じ画角で見比べることができる。さらに、その場所を襲った津波の高さも表示される。

参加者:
ARでこの場所に津波が来たというのを確認できるのは、すごくいい機能だと思います。普及すれば、震災を風化させないことにつながっていくのかなと思いました

このアプリを開発したのは、石巻市で東日本大震災の伝承活動に取り組む「3.11みらいサポート」。7年前のアプリ公開以来、これまでのダウンロード数は1万回を超え、ARアプリを活用した「防災まち歩き」には9700人以上が参加している。

3.11みらいサポート 福田貴史さん アプリ開発担当:
宮城県の伝承という意味では、石巻は非常に重要な場所になる。伝承の大切な場所に有効活用できるアプリがあればという思いで作った

約100人の津波からの避難行動が地図上に表示

2020年9月にはバージョンアップが行われ、南浜・門脇地区の被災者約100人の避難行動が地図上に表示される機能も追加された。

高橋政樹さん:
ここから、100メートルから200メートルくらいの所に、私の家がありました

南浜町出身で語り部の高橋政樹さん(66)。これは、震災当日の高橋さんの避難経路を表したもの。地震の直後、ラジオで高さ6メートルの津波が来ると聞いた高橋さん。急いで職場から自宅のあった南浜町に車で向かった。歩くのが困難だった父親を車に乗せ、避難を呼びかけながら門脇小学校へ避難した直後…

高橋政樹さん:
両親が足が悪いので階段を1段2段上がった時に、水がサーッと校舎の中に入ってきました

地震発生から約55分後、海や川から次々と津波が押し寄せた。

高橋政樹さん:
ここが屋上の手すりです。こういう状態で門脇小学校は燃えたと思います。この炎が2階の教室から見たとき非常に怖かった

がれきから上がった炎が校舎に迫る中、高橋さんは門脇小学校に避難した約30人の住民と協力し、校舎2階の窓から裏山へ、教壇を橋のように渡して逃げた。校舎は全焼したが、全員が避難でき無事だった。

津波や火災などで542人が犠牲となった南浜地区では、現在 震災の教訓を後世に伝える「石巻南浜津波復興祈念公園」の整備が、2021年3月の開園を目指して進められている。
一方で、津波を経験した高橋さん自身も復興が進むにつれ、当時の記憶が薄れていっていると言う。この町で何があったのか伝えていくために、アプリはその助けになると感じている。

高橋政樹さん:
一生に一回あるかないかの大きな地震でいっぱい犠牲者もいますし、同級生も亡くなった。その人たちの思いもありますので、伝えていきたいと思う

技術を活用して震災を伝えていく。アプリの開発を担当した福田さんも被災者の体験を自分に置き換え、いのちを守る行動につなげてほしいと考えている。

3.11みらいサポート 福田貴史さん アプリ開発担当:
この町で何があったか知ってもらい、自分の身として置き換えて考えてもらって、自分の身を守るために、将来の命を守るために、考えるきっかけになればいいなと考えています

(仙台放送)