「マスク」が日常必需品に
日本で未知のウイルスの感染が発覚してから、まもなく1年が経つ。この1年間で、これまで当たり前に出来ていた人々の生活・日常は、大きく変化した。
マスクの着用が徹底されたことから春には店頭からマスクが消え、マスク不足が生じた。薬局には行列ができたこともあったが、今では、お手製の様々な色とりどりのマスクも見られ、いろいろな意味で日本人らしさ感じた。
一方、一般家庭に配られたいわゆる”アベノマスク”に政府はおよそ260億円の予算を投じ、1億2000万枚のマスクを配布したが、いま、市中で見ることは少なくなった。

マスクの着用とともに、外出の自粛や大勢での会食を控えることなど、私たちが「新しい日常」を心がけることが感染拡大の防止策とわかっているものの、感染拡大は止まらない…
期待高まるワクチン・治療薬
新型コロナウイルスは、高齢者や基礎疾患がある一定程度の人が重篤化することに加えて、軽症や無症状者も、他人に感染させるケースもある。これまでの感染症に比べてもやっかいな点であり、この1年で学び、広く知られるところになった。
医療機関では、患者の重症化を防ぎ、少しでも死者を出さないよう、レムデシビルやデキサメタゾンなどの薬が、新型コロナの治療薬として一定程度の効果がみられ、日々、これらの薬を使った治療が続けられている。
一方で、未だに、感染予防の「救世主」とされるものは見いだされていない。その中で期待が寄せられるワクチン。
ワクチンは通常、開発から接種まで数年はかかるが、新型コロナウイルスのワクチンは、この1年の間に開発が進められ、アメリカ・イギリスなどで接種が始まった。

日本政府は、2021年前半までに全国民分の確保をはかるため、各メーカーとこれまでに合計2億9000万回分、1億4500万人分の供給で合意している。
すでに海外では接種が始められている
米ファイザー社:21年6月末までに6000万人分(1億2000万回分)
このほか、
英アストラゼネカ社:21年初頭から6000万人分(1億2000万回分)
米モデルナ社:21年上半期に4000万回分、2021年第3四半期に1000万回分、あわせて5000万回分、2500万人分
このうち、モデルナ社とアストラゼネカ社とは、正式契約を締結し、ファイザー社とは基本合意をしていて、最終契約に向けて協議が進められる。

早ければ2月から医療従事者らに
これを受けて国は、早ければ2月下旬から、まずは医療従事者を対象に接種が開始できるよう自治体に体制整備を求めている。
国は接種順位の検討をする中で、まずは感染者や新型コロナウイルスが疑われる患者と頻繁に接する医療従事者を早期の接種対象としている。
次に高齢者、その次に高齢者以外の基礎疾患がある人、高齢者施設の職員などが優先的に接種される見通しだ。田村大臣も「一般の方々にはまだ若干時間がかかる」と強調している。
接種順位とともに注目される冷凍保管
ファイザー社のワクチンはマイナス75度、モデルナ社のワクチンはマイナス20度での保管が求められ、超低温冷凍庫・ディープフリーザーでの保管が必要になる。
保管体制の徹底、ワクチン配分などの広報体制、接種・流通を円滑化する新たなシステムの構築など、これから乗り越えなければならないハードルは多い。
目に見えない新たな脅威に

2009年に発生した新型インフルエンザからおよそ10年。ただ、あの時とは比べられないような巨大な衝撃を、私たちは、この1年間で受けた。
目に見えないウイルスが、ここまで人の生活に入り込み影響をもたらすとは…。そんな意識は、持ち得ていなかった。
しかし、この1年で多くのことも学んだ。
マスク不足から自らできる工夫を怠らず、状況に振り回されない冷静さも必要と感じた。私たちの日々の生活次第で、感染者数は増減し、その後の社会や生活のあり方も変えること。感染拡大させないことと社会経済活動を両立させることの難しさも学んだ。
イギリスでの変異種など新たな脅威が、また日本に入り込んできている。
新型インフルエンザ等特措法の改正も視野に検討が進められる中、国には、いつ来るかわからない目に見えないウイルスという脅威に常に対応できる、より強い体制整備の構築が求められる。
そして、私たちは、自分の身近でできることを徹底することが、結果として感染者の減少、そして医療現場の逼迫も防ぎ、重症化そして人の命も救うことができる。
1年かけて学んだことを、ぜひ、次の1年、そして未来に生かしてきたい。
執筆:厚生労働省担当 滝澤教子