“うどん県”ならでは?謎の施設が話題

香川県といえば、やっぱり讃岐うどん。

個性豊かなうどん店がひしめき合い「うどん県おもてなしパスポート」なども発行している“うどん県”だが、今、そんな香川に何やら怪しげな“うどん施設”があると話題になっている。

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それがこちらの「高濃度うどん排水処理施設」。

「高濃度」「処理施設」というワードに、一瞬発電所の関連施設かとも見間違うが…その間には「うどん」の文字が。

この施設の写真がTwitterに投稿されると、その物々しい雰囲気に「うどんこわい」「マジで食品のうどんのことなの?薬品名とかじゃなくて?」「めんつゆが入っているのでは」とざわつくコメントが多数寄せられていた。

一方で、香川に住んでいたという人からは「高松のうどん屋さんに設置されてたな」「お世話になっております」と懐かしむ声も挙がり、珍しいもの、ましてや危険なものではないという情報も。

他県民からするとインパクト大のネーミングがついつい気になってしまうが、…この施設では“うどん専用”にどのような特別な処理が行われているのだろうか? そしてこの「高濃度うどん排水」が香川に与えている影響とは…

この施設の製造・販売を行っている、香川県さぬき市の株式会社CNTにお話を聞いた。

うどん排水は「条例規制が出来るほど」の問題

――「高濃度うどん排水処理施設」とは一体どんな施設なの?

薬剤等は一切使用せず、内水護博士の理論である「自然界土壌の中に生息する微生物を活用する」という「自然浄化法」で処理しています。また、微生物の動きを活発にする腐食と棲み処である軽石で「リアクター」を作り、自然浄化法とセットでの処理方法であるため「自然浄化法リアクターシステム」となっています。


――「うどん排水」は環境にどんな影響を与える?

他の業種に比べてCOD(化学的酸素要求量)が高濃度であるため、排水路にアオコが発生するなど、悪臭や水利用への悪影響が懸念されます。

「高濃度うどん排水処理施設」の構造
「高濃度うどん排水処理施設」の構造

――うどん排水のための特別な処理工程はあるの?

飲食店であっても汚濁濃度が高い排水の店舗もありますし、食品加工排水も、うどん排水と同じく汚濁濃度が高いので、うどん店以外でも弊社の処理施設を設置している飲食店工場等はあります。

それらと比べて特別な工程はありませんが、汚濁濃度によって、槽内を移動させる排水の滞留時間を変更します。

(左)処理前の排水 (右)処理後
(左)処理前の排水 (右)処理後

話題の「高濃度うどん排水処理施設」は、株式会社CNTが扱う「自然浄化法リアクターシステム」を使った排水処理施設のことだった。

このシステムは食品加工業や飲食店の排水処理にも使われているということで、“うどんに特化”した特別な施設というわけではないそうだが、このような処理施設を導入する必要があるほど、「うどん排水」は香川で深刻な問題になっているという。


――「うどん排水」は香川県にどんな影響がある?

平成16年当時、香川県ではうどん店巡りブームとなり県内外から多くの観光客が殺到しました。それに伴い、合併浄化槽では処理が困難な湯煮排水が水路等を汚染し、悪臭が発生して、うどん店の近隣から住民からの苦情も多くなりました。

これを県も問題視して解決に取り組み、「うどん店排水処理事業」で開発業者を募り、弊社と他1社が採択されました。1年間の実験の結果、開発に成功し、香川県では、うどん店の排水は合併浄化槽とは別で処理する条例規制が出来るほど大きな問題で、現在も同様です。

うどん店の隣に設置された施設
うどん店の隣に設置された施設

香川県の公式サイトを見てみると、「打ち粉を十分にはたいてからゆでるようにすると、排水の汚れが2割減る」「ゆで汁がより濁らないよう、麺を過度にかき混ぜすぎない」などの実験結果のほか、排水処理施設の自主設置を呼びかける「うどん店排水処理対策マニュアル」が掲載されている。

現在もうどん排水の問題は残っているものの、地元のこういった努力により、おいしいうどん文化が保たれているのだ。


――「高濃度うどん排水処理施設」はどのくらい導入されている?

現在、県内に50件ほど設置しています。うどん店だけに限らず、菓子製造工場や食肉加工工場、総菜加工工場等にも設置しています。県外からの問い合わせも多く、関西や関東地方にも設置されています。


――SNSで注目されていることについてどう感じている?

このような反響にとても驚いています。皆様が水環境に興味を持っていただけるよう、これからも精進致します。


そのネーミングから、何かコミカルな印象も受けてしまう「高濃度うどん排水処理施設」。その正体は、“うどん県”ならではの環境を守る、テクノロジーが詰め込まれた施設だった。
 

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プライムオンライン編集部
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